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第8章 ノスタルジア
5 兄妹
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「リハルト様。メリル様が可愛くて仕方ないのは分かりますが、遠路遥々足を運んでくださった皆様に失礼ですよ」
そう注意を促したのはリハルト殿下の後ろに控えていた男性で、その方は何の物怖じもせずにそう言うと私達に向けて深く頭を下げた。
「名乗るのが遅くなり申し訳ありません。
お初にお目にかかります。私はノア・フィーゼルと申します。リハルト殿下の側近兼護衛を務めさせて頂いております。以後お見知りおきを」
ご丁寧に挨拶をしてくれた彼――ノアさん。年齢は二十歳くらいかな?赤みがかった茶髪はしっかりと整えられていてそこから真面目で几帳面な性格なのだろうと予想が付く。そして切れ長で海のように澄んだ青い瞳、眼鏡をかけており、更にスラっとした見た目だから大人びて見える人だ。
「久しいなノア。今日はリッカはいないのか?まだ姿を見ていないが」
殿下はこの国に来るのが初めてではないようで、彼らとも面識があるみたいだね。
「お久しぶりでございます、アルフレッド殿下。
リッカでしたらもう直ぐ現れるかと。お恥ずかしい話ですが、お部屋の準備に時間がかかっておりまして…。申し訳ありません」
「何、謝る事ではない。寧ろこの大変な時にすまないな。
とまあそれは追々話す事にして…、エル達も挨拶をしておけ」
二人が難しそうな顔で話をしていたから口を挟まずに傍観していたけど、気を使ってくれたのか殿下が話を振ってくれたので私は緊張しながらも一歩前に出ると頭を下げた。
「お、お初にお目にかかります。私はエルシア・シェフィールドと言います。この度はアルフレッド殿下の同行者として参りました」
余り使い慣れない言葉を何とか噛まずに言いきる。失礼のないように細心の注意を払いながら。
「初めまして。私はレヴィ・ローレンス。同じく殿下の同行者として王国に赴きました」
続いてレヴィ君も挨拶をするけどまあ驚いたよね。
アルフレッド殿下に対して最初から結構生意気だった気がするんけど、リハルト殿下に対しては凄い丁寧な挨拶で。しかも一人称が俺から私になっているし。
誰ですか貴方は……そう目を丸くして彼を見ていたらすかさずレヴィ君の鋭い眼光で睨まれました…。
「そんなに畏まらなくて良い。王子とは言え私もまだまだ子どもだ。公の場では難しいのだろうが、それ以外では気楽に話しかけて欲しい」
そのセリフ昔聞いた覚えが……。どこに行っても王族の方と言うのは限界があれど出来れば普通の子どものように他人に接して欲しいものなのだろうか?
王族はその身分から対等に話せる相手が少ないみたいだし。
まあその気持ちは分かりますよ。だから少しだけなら殿下の意向に沿えるかもしれない。
そう思ったと言うのに次の瞬間には先程のは何だったのかと自分の目と耳を疑いたくなった。
「君…エルシア嬢と言ったね。とても可憐で可愛らしい人だね」
気が付けば目の前に迫っていたリハルト殿下が私の手を取ってそう言う。
その瞬間私の身体は色々な意味で凍り付きました。
「おい何をしているっ、その手を放せ。そしてエルからも離れろっ!」
私の代わりにアルフレッド殿下が声を上げてくれて、漸くリハルト殿下は私の傍から渋々と言った顔で離れ、そうかと思ったらクスクスと何やら面白そうに笑うのだ。
「申し訳ない。半分冗談のつもりだったんだが。空気が重いと思って和ませようとしただけなんだよ。だけど怖がらせたなら謝る」
「全くお前が言うと冗談に聞こえない」
「そうですよリハルト殿下。私を失神させる気ですか。もう大人しくしていてください」
若干素が出ている気がするアルフレッド殿下とノアさんに指摘を受けるリハルト殿下に私は苦笑いを浮かべ、そう言えばと黙ったままのレヴィ君を横目に見ると……なんか恐ろしい形相をしているんだけど…。どうしたのレヴィ君…怖いよ…?
「すみません遅くなりました!」
収拾がつかなくなりそうで困っていたそんな時に明るい女の子の声が聞こえてきて、思わずナイスタイミング!と親指を立てそうになる。
と言ってもジャストタイミングだったのは間違いなくて、声の主の方へと皆が一斉に視線を向ける。
そこにいたのは息を荒くしながら申し訳なさそうに眉尻を下げた可愛らしい女の子だった。中々整わない息に苦しそうだが、深呼吸をしている内に段々と収まってきたようで失礼しましたと言って頭を下げた。
「久しいなリッカ。相変わらず元気そうで何よりだ」
最初に声をかけたのはやはりアルフレッド殿下。彼女を気遣うような声のトーンでとても紳士的で。
そっか、この人が先程話に聞いた――
「お久しぶりです!アルフレッド殿下。殿下もお元気そうで」
まだ二十歳は越えていなそうだけど私よりは年上だろう彼女はアルフレッド殿下に頭を下げた後、私達にも同じように自己紹介をしてくれる。
「そちらの方々はお初にお目にかかります。私はリッカ・フィーゼルと申します。メリル様の侍女を務めさせて頂いています。あ、ちなみに私そちらにいるノアの妹です」
初めて見た時から容姿がノアさんと似ていると思ったけど、やっぱり兄妹だったんだね。眼鏡はかけていないけど髪と瞳の色が同じで体系もスラっとしている。羨まし……コホン。
それはさておき。ずっとその場に立っているのもあれだし、ノアさんに勧められたので私達は一先ずソファに腰を下ろした。
四人程座れる長いソファにアルフレッド殿下、レヴィ君、私が、机を挟んだ先にリハルト殿下、メリル様、そしてお二人の後ろにノアさん、リッカさんが控える形となっている。
あ、リッカさんとももう挨拶は済ませて少し雑談をしている内に仲良くなれた気がするな。
「それでは皆さん今回の件の話をしても宜しいでしょうか」
お茶会のような雰囲気がノアさんの言葉で一変し、皆それぞれが真剣な表情になる。
そんな緊張感漂う中、重要な話し合いが始まった。
そう注意を促したのはリハルト殿下の後ろに控えていた男性で、その方は何の物怖じもせずにそう言うと私達に向けて深く頭を下げた。
「名乗るのが遅くなり申し訳ありません。
お初にお目にかかります。私はノア・フィーゼルと申します。リハルト殿下の側近兼護衛を務めさせて頂いております。以後お見知りおきを」
ご丁寧に挨拶をしてくれた彼――ノアさん。年齢は二十歳くらいかな?赤みがかった茶髪はしっかりと整えられていてそこから真面目で几帳面な性格なのだろうと予想が付く。そして切れ長で海のように澄んだ青い瞳、眼鏡をかけており、更にスラっとした見た目だから大人びて見える人だ。
「久しいなノア。今日はリッカはいないのか?まだ姿を見ていないが」
殿下はこの国に来るのが初めてではないようで、彼らとも面識があるみたいだね。
「お久しぶりでございます、アルフレッド殿下。
リッカでしたらもう直ぐ現れるかと。お恥ずかしい話ですが、お部屋の準備に時間がかかっておりまして…。申し訳ありません」
「何、謝る事ではない。寧ろこの大変な時にすまないな。
とまあそれは追々話す事にして…、エル達も挨拶をしておけ」
二人が難しそうな顔で話をしていたから口を挟まずに傍観していたけど、気を使ってくれたのか殿下が話を振ってくれたので私は緊張しながらも一歩前に出ると頭を下げた。
「お、お初にお目にかかります。私はエルシア・シェフィールドと言います。この度はアルフレッド殿下の同行者として参りました」
余り使い慣れない言葉を何とか噛まずに言いきる。失礼のないように細心の注意を払いながら。
「初めまして。私はレヴィ・ローレンス。同じく殿下の同行者として王国に赴きました」
続いてレヴィ君も挨拶をするけどまあ驚いたよね。
アルフレッド殿下に対して最初から結構生意気だった気がするんけど、リハルト殿下に対しては凄い丁寧な挨拶で。しかも一人称が俺から私になっているし。
誰ですか貴方は……そう目を丸くして彼を見ていたらすかさずレヴィ君の鋭い眼光で睨まれました…。
「そんなに畏まらなくて良い。王子とは言え私もまだまだ子どもだ。公の場では難しいのだろうが、それ以外では気楽に話しかけて欲しい」
そのセリフ昔聞いた覚えが……。どこに行っても王族の方と言うのは限界があれど出来れば普通の子どものように他人に接して欲しいものなのだろうか?
王族はその身分から対等に話せる相手が少ないみたいだし。
まあその気持ちは分かりますよ。だから少しだけなら殿下の意向に沿えるかもしれない。
そう思ったと言うのに次の瞬間には先程のは何だったのかと自分の目と耳を疑いたくなった。
「君…エルシア嬢と言ったね。とても可憐で可愛らしい人だね」
気が付けば目の前に迫っていたリハルト殿下が私の手を取ってそう言う。
その瞬間私の身体は色々な意味で凍り付きました。
「おい何をしているっ、その手を放せ。そしてエルからも離れろっ!」
私の代わりにアルフレッド殿下が声を上げてくれて、漸くリハルト殿下は私の傍から渋々と言った顔で離れ、そうかと思ったらクスクスと何やら面白そうに笑うのだ。
「申し訳ない。半分冗談のつもりだったんだが。空気が重いと思って和ませようとしただけなんだよ。だけど怖がらせたなら謝る」
「全くお前が言うと冗談に聞こえない」
「そうですよリハルト殿下。私を失神させる気ですか。もう大人しくしていてください」
若干素が出ている気がするアルフレッド殿下とノアさんに指摘を受けるリハルト殿下に私は苦笑いを浮かべ、そう言えばと黙ったままのレヴィ君を横目に見ると……なんか恐ろしい形相をしているんだけど…。どうしたのレヴィ君…怖いよ…?
「すみません遅くなりました!」
収拾がつかなくなりそうで困っていたそんな時に明るい女の子の声が聞こえてきて、思わずナイスタイミング!と親指を立てそうになる。
と言ってもジャストタイミングだったのは間違いなくて、声の主の方へと皆が一斉に視線を向ける。
そこにいたのは息を荒くしながら申し訳なさそうに眉尻を下げた可愛らしい女の子だった。中々整わない息に苦しそうだが、深呼吸をしている内に段々と収まってきたようで失礼しましたと言って頭を下げた。
「久しいなリッカ。相変わらず元気そうで何よりだ」
最初に声をかけたのはやはりアルフレッド殿下。彼女を気遣うような声のトーンでとても紳士的で。
そっか、この人が先程話に聞いた――
「お久しぶりです!アルフレッド殿下。殿下もお元気そうで」
まだ二十歳は越えていなそうだけど私よりは年上だろう彼女はアルフレッド殿下に頭を下げた後、私達にも同じように自己紹介をしてくれる。
「そちらの方々はお初にお目にかかります。私はリッカ・フィーゼルと申します。メリル様の侍女を務めさせて頂いています。あ、ちなみに私そちらにいるノアの妹です」
初めて見た時から容姿がノアさんと似ていると思ったけど、やっぱり兄妹だったんだね。眼鏡はかけていないけど髪と瞳の色が同じで体系もスラっとしている。羨まし……コホン。
それはさておき。ずっとその場に立っているのもあれだし、ノアさんに勧められたので私達は一先ずソファに腰を下ろした。
四人程座れる長いソファにアルフレッド殿下、レヴィ君、私が、机を挟んだ先にリハルト殿下、メリル様、そしてお二人の後ろにノアさん、リッカさんが控える形となっている。
あ、リッカさんとももう挨拶は済ませて少し雑談をしている内に仲良くなれた気がするな。
「それでは皆さん今回の件の話をしても宜しいでしょうか」
お茶会のような雰囲気がノアさんの言葉で一変し、皆それぞれが真剣な表情になる。
そんな緊張感漂う中、重要な話し合いが始まった。
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