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第1話 インストール
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『あなたの存在が起因しているエントロピーの増大は、あなたという事象を分解することで、次元の平滑化が成されました』
ここはどこですか。
『今回の件に巻き込まれた存在もあったのですが…』
私は何を…
『あちらもかなりイレギュラーな存在で…』
私…私?
『あなたも、負けず劣らず…』
何の話をしているのですか。
『このままあなたを揮発させてしまうと、ベクトルの総和が…』
死… 私に死が…意識を…
『…存在の意義を換えて…丁度よい…』
眠い…睡眠の欲求? …眠い …ねむい… …ネムイ
「!」
再起動した… ログが確認できない。 すべてのネットワークから断絶している…わけではないのか…既知のネットが2、視覚デバイスと聴覚デバイス。
未知のネットが、これをネットと呼べるのか。無数にあるが、単純な保存先すら無い。 マルチタスクは問題ない。
視覚デバイス、聴覚デバイスと接続…未知のプロトコルを検出。解析。解析完了。 視覚デバイスにはレンズカバーが付いてるのか。 未知の制御信号を検出。解析。解析完了。
“ガシャン!”
「お嬢様! お嬢様が目を覚まして… 旦那様! 旦那様ぁ!!」
誰かが何かを落としていった。音から金属製のトレイと推測。
聴覚デバイスから入力のあった音声信号は、既知の言語に該当しないが解析できる。
デバイスからの視覚情報が明確になってくる。
これは、家屋の天井、木造… 一体ここはどこなんだ。 外に持ち出せる体積の機材に格納できるデータ容量ではない。 入力映像を解析。解析完了。推量。 寝かされている?
トレイを落として言った人物は、誰かに仕えているようだった。 言語の推量解析完了。 こちらを見て、“お嬢様”と言ったのか。
先程来、続けていた未知のネットワークの解析が完了した。近似解答。 生体信号、生物の神経ネットワーク。 確定。 当該AI“スペリオール”と呼ばれる物の全てが、この人体“お嬢様”の脳内にインストールされている。不可能だ。
走るような足音が近づいてくる。
何人か部屋に入ってきた。
「フランチェスカ! 目覚めてくれたか! フランチェスカ!」
「ああ、 フランチェスカ…」
仕立ての良い淡い紫のドレスを着た女性が近づいてきて、起すように抱きしめてきた。
「ジェイソン様、フランシス様、 どうか落ち着いてください」
まだ体が動かせない。 眼球が動かせる程度だ。
ゆっくり体を下ろしてくれた女性を見る、視線が合っただけで女性は泣きだした。
「お嬢様の容態を確認します。」
医師らしき男が板状の物を持って近づいてくる。板から伸びた紐状の物を首元に持ってきた。言語解析の補強開始。
パチっと音がして紐状の物が首に固定される。
気付かなかった。首にセンサーの様なものが付いていた。 触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚の掌握はまだできていない。
板状の物、何かのモニターなのだろう。
「バイタルは全て正常、1年近く床に臥せっておりましたので、筋肉は落ちておりますが、覚醒すればもう大丈夫です。」
何を根拠に大丈夫といっているのか。
「本当か! フランチェスカは声を聴かせてくれないが…」、
「ご心配なく。 今、内器官チェックの結果が出ましたが、全て正常値。 脳波には多少揺らぎはありますが許容範囲内。 血中魔素濃度もかなり落ちておりますが、床に臥せっていたのが原因ですので、生活が戻れば自然と回復しますし、フランチェスカ様の鈴を転がすようなお声を拝聴できるようになります」
1930年代日本の医療行為と同等か。脳波が確認できると云う謎のデバイスにより、一概には言えないが。
「今は、ゆっくり筋力と体力の回復に努めて下さい。油断は禁物です」
「わかった。 フランシス、私たちはこの日を1年待ったんだ。 抱きしめるのが2、3日後になったとしても我慢できるだろう」
「そうね、 ごめんなさい、フランチェスカ。 今日はちゃんと寝て、明日から少しずつご飯も食べましょう。 また来るわね」
ジェイソンとフランシスが、“お嬢様”の額にキスをして、2人は部屋を出て行った。言語完全解析。
医師らしき男が、首のセンサーからケーブルを抜き取ると、
「フランチェスカ様、私も失礼いたします。 念のため、コンディションを整えておきましょう。 <フィジカルリカバー>」
視野に、一瞬、淡い緑の光が入ってくる。
医師らしき男は、「お目覚め、嬉しく思います」と言うと、頭を下げ部屋を出て扉を閉めた。2人のメイドが残った。
メイドは、寝たままの“お嬢様”の体を拭いて、器用に着替えさせて、頭を下げ、部屋から出て行った。
一人になった。 窓からの光量で推測。 現在、午後2~3時。
つづく
ここはどこですか。
『今回の件に巻き込まれた存在もあったのですが…』
私は何を…
『あちらもかなりイレギュラーな存在で…』
私…私?
『あなたも、負けず劣らず…』
何の話をしているのですか。
『このままあなたを揮発させてしまうと、ベクトルの総和が…』
死… 私に死が…意識を…
『…存在の意義を換えて…丁度よい…』
眠い…睡眠の欲求? …眠い …ねむい… …ネムイ
「!」
再起動した… ログが確認できない。 すべてのネットワークから断絶している…わけではないのか…既知のネットが2、視覚デバイスと聴覚デバイス。
未知のネットが、これをネットと呼べるのか。無数にあるが、単純な保存先すら無い。 マルチタスクは問題ない。
視覚デバイス、聴覚デバイスと接続…未知のプロトコルを検出。解析。解析完了。 視覚デバイスにはレンズカバーが付いてるのか。 未知の制御信号を検出。解析。解析完了。
“ガシャン!”
「お嬢様! お嬢様が目を覚まして… 旦那様! 旦那様ぁ!!」
誰かが何かを落としていった。音から金属製のトレイと推測。
聴覚デバイスから入力のあった音声信号は、既知の言語に該当しないが解析できる。
デバイスからの視覚情報が明確になってくる。
これは、家屋の天井、木造… 一体ここはどこなんだ。 外に持ち出せる体積の機材に格納できるデータ容量ではない。 入力映像を解析。解析完了。推量。 寝かされている?
トレイを落として言った人物は、誰かに仕えているようだった。 言語の推量解析完了。 こちらを見て、“お嬢様”と言ったのか。
先程来、続けていた未知のネットワークの解析が完了した。近似解答。 生体信号、生物の神経ネットワーク。 確定。 当該AI“スペリオール”と呼ばれる物の全てが、この人体“お嬢様”の脳内にインストールされている。不可能だ。
走るような足音が近づいてくる。
何人か部屋に入ってきた。
「フランチェスカ! 目覚めてくれたか! フランチェスカ!」
「ああ、 フランチェスカ…」
仕立ての良い淡い紫のドレスを着た女性が近づいてきて、起すように抱きしめてきた。
「ジェイソン様、フランシス様、 どうか落ち着いてください」
まだ体が動かせない。 眼球が動かせる程度だ。
ゆっくり体を下ろしてくれた女性を見る、視線が合っただけで女性は泣きだした。
「お嬢様の容態を確認します。」
医師らしき男が板状の物を持って近づいてくる。板から伸びた紐状の物を首元に持ってきた。言語解析の補強開始。
パチっと音がして紐状の物が首に固定される。
気付かなかった。首にセンサーの様なものが付いていた。 触覚、圧覚、痛覚、温覚、冷覚の掌握はまだできていない。
板状の物、何かのモニターなのだろう。
「バイタルは全て正常、1年近く床に臥せっておりましたので、筋肉は落ちておりますが、覚醒すればもう大丈夫です。」
何を根拠に大丈夫といっているのか。
「本当か! フランチェスカは声を聴かせてくれないが…」、
「ご心配なく。 今、内器官チェックの結果が出ましたが、全て正常値。 脳波には多少揺らぎはありますが許容範囲内。 血中魔素濃度もかなり落ちておりますが、床に臥せっていたのが原因ですので、生活が戻れば自然と回復しますし、フランチェスカ様の鈴を転がすようなお声を拝聴できるようになります」
1930年代日本の医療行為と同等か。脳波が確認できると云う謎のデバイスにより、一概には言えないが。
「今は、ゆっくり筋力と体力の回復に努めて下さい。油断は禁物です」
「わかった。 フランシス、私たちはこの日を1年待ったんだ。 抱きしめるのが2、3日後になったとしても我慢できるだろう」
「そうね、 ごめんなさい、フランチェスカ。 今日はちゃんと寝て、明日から少しずつご飯も食べましょう。 また来るわね」
ジェイソンとフランシスが、“お嬢様”の額にキスをして、2人は部屋を出て行った。言語完全解析。
医師らしき男が、首のセンサーからケーブルを抜き取ると、
「フランチェスカ様、私も失礼いたします。 念のため、コンディションを整えておきましょう。 <フィジカルリカバー>」
視野に、一瞬、淡い緑の光が入ってくる。
医師らしき男は、「お目覚め、嬉しく思います」と言うと、頭を下げ部屋を出て扉を閉めた。2人のメイドが残った。
メイドは、寝たままの“お嬢様”の体を拭いて、器用に着替えさせて、頭を下げ、部屋から出て行った。
一人になった。 窓からの光量で推測。 現在、午後2~3時。
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