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Episode 9:食事会へのご招待
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テーブルには、こんがり焼かれたパンに厚切りのベーコンエッグ、そして湯気の立つ温かいスープが並んでいた。
湊は、おばあちゃんの料理を幸せそうに頬張っている。
「あら、やっぱり何も食べずに来てたのね。たくさんあるから遠慮しちゃダメよ」
おばあちゃんの言葉に、湊が少し照れくさそうに笑う。
彼は、このアームカバーを一日でも早く渡したくて、食事もとらずに駆けつけてくれたのだ。
ふとカレンダーを見ると、明日は月に一度、家族全員が集まる食事会の日だった。
おばあちゃんにそのことを伝えると、名案を思いついたように声を弾ませた
「そうだわ! あなたも明日、食事会に来なさいよ。……いいわよね、美月?」
おばあちゃんはそう決めると、私の返事を待たずに、早速両親へ電話をしに行ってしまった。
「……行っちゃったね。俺、美月の両親に会っても大丈夫かな。……原因を作ったのは、俺なのに」
湊が不安そうに眉を下げる。
「なによ、今さら怒られるのが怖いの? 私が許したんだから大丈夫よ。それに、断ったらおばあちゃん、とっても怖いんだから」
スープに浸したパンを一口食べ、私はわざと意地悪く言ってみた。
「……美月のおばあちゃんって、怒ると怖いの?」
「ええ。とってもね」
私は嘘をついた。
どうしてか分からないけれど、彼にもこの食事会に来てほしかったのだ。
戻ってきたおばあちゃんは上機嫌で、食後のマドレーヌと紅茶まで振る舞ってくれた。
湊はパンパンになったお腹をさすりながら、さっきまでの不安が嘘のような明るい表情で帰っていった。
「良かったじゃない、仲直りできて」
「……ありがとう、おばあちゃん」
おばあちゃんはニッコリ笑った後、イタズラっぽく舌を出した。
「でも私、そんなに怒っても怖くないわよ?」
湊は、おばあちゃんの料理を幸せそうに頬張っている。
「あら、やっぱり何も食べずに来てたのね。たくさんあるから遠慮しちゃダメよ」
おばあちゃんの言葉に、湊が少し照れくさそうに笑う。
彼は、このアームカバーを一日でも早く渡したくて、食事もとらずに駆けつけてくれたのだ。
ふとカレンダーを見ると、明日は月に一度、家族全員が集まる食事会の日だった。
おばあちゃんにそのことを伝えると、名案を思いついたように声を弾ませた
「そうだわ! あなたも明日、食事会に来なさいよ。……いいわよね、美月?」
おばあちゃんはそう決めると、私の返事を待たずに、早速両親へ電話をしに行ってしまった。
「……行っちゃったね。俺、美月の両親に会っても大丈夫かな。……原因を作ったのは、俺なのに」
湊が不安そうに眉を下げる。
「なによ、今さら怒られるのが怖いの? 私が許したんだから大丈夫よ。それに、断ったらおばあちゃん、とっても怖いんだから」
スープに浸したパンを一口食べ、私はわざと意地悪く言ってみた。
「……美月のおばあちゃんって、怒ると怖いの?」
「ええ。とってもね」
私は嘘をついた。
どうしてか分からないけれど、彼にもこの食事会に来てほしかったのだ。
戻ってきたおばあちゃんは上機嫌で、食後のマドレーヌと紅茶まで振る舞ってくれた。
湊はパンパンになったお腹をさすりながら、さっきまでの不安が嘘のような明るい表情で帰っていった。
「良かったじゃない、仲直りできて」
「……ありがとう、おばあちゃん」
おばあちゃんはニッコリ笑った後、イタズラっぽく舌を出した。
「でも私、そんなに怒っても怖くないわよ?」
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