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episode3
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俺の自室での一件からおよそ一日後。
フラーニャが昨日の事は忘れたかのような態度で接してきた。
「レイン様、お願いされていた情報全て揃いました」
そう言ってフラーニャは丁寧にまとめられた書類を俺に渡してきた。
一通り目を通すと俺はしばらく考え込んだ。
内容はだいたいまとめるとこんな感じ。
-------------------------
ハルト子爵の今後の予定
三日後、皇帝陛下へ臨時の領地経営の報告書を提出する為、帝都に向けて領地を出る。
四日後、南都到着
-------------------------
恐らくだが、四日後に南都に到着した後、南都を火の海にする計画が考えられる最も単純なパターンだ。
単純だが、この機を逃す手はないと思われる。書類に書いてあるが、臨時の報告書提出というのは皇帝陛下が手を回しているに違いない。
どうやら相当陛下もこの件には容赦はしないらしい。
しかしこんな情報を一日で集める事ができるのだろうか?
いや、実際にこの手の中に証拠はあるんだが、なかなか信じられないよな。
「なあ、フラーニャ。なんでこんな短時間でこんな情報を知る事ができたんだ?」
俺はフラーニャに素朴な疑問を投げかけた。
「乙女の秘密ですっ!」
どうやら詮索はして欲しくないらしい。俺の専属メイドとはいえ、プライベートなものもあるのだろうし、仕方のない事なのだろう。
「そうか」
と俺はあまり気に留めることもなく返事をしておいた。
しかし、貴族の暗殺となるとあまり公にならない方がいい。三日後までに決着をつけるか、南都までに移動する道中で決着をつけるか。この二つのチャンスから選ぶ事ができる。ハルト子爵も警戒しているかもしれないが、圧倒的に仕掛ける方であるこちらが有利なのだ。
しかし不確定要素が一つだけある。謎の魔法士の存在だ。これだけはフラーニャに聞いてもあまり為になる情報は得られなかった。
相当な手練れなのだろう。万全な対策で挑むしかない。この世に絶対などありはしないのだから。
「フラーニャ、この任務に一緒についてきてくれるだろうか?」
「もちろんです。レイン様とならどこへでも」
こう言ったのには理由がある。
フラーニャは魔法の技術が優れており、アシストに向いているのだ。
逆に俺は攻撃特化だからフラーニャとのコンビがちょうどいいのだ。
「なら早速、準備に取り掛かれ。出発は明日、ハルト子爵が領地を出る前に仕留める」
「かしこまりました」
お互いに確認しあった後、準備に取り掛かった。
◇
南方帝国貴族、ハルト子爵の屋敷にて二人の男が向かい合って座っていた。
一人は煌びやかな装飾が至るところに施されている服を羽織っているが、豊かに育ったお腹が収まりきらないのかかなり大きめのサイズだ。上品な匂いを漂わせる紅茶をゆっくりと飲んでいるのがこの屋敷の主人であるハルト子爵である。
「計画は順調に進んでおりますかな?」
ハルト子爵の問いに対面の男は仮面を被っておりコクリとうなづくだけで言葉を発さなかった。対面の男は全身が黒一色で黒のローブを身に纏っている。で、少し近寄りがたいオーラを放っている。表情が画面に隠れて分からないのが余計に近寄りがたい。
「そうですか。これで皇帝陛下も私を認めてくださる!
ああ、なんと感謝すれば良いのでしょうか!」
これでというのは紛れもなく南都を火の海にするという計画のことだろう。
「……感謝など必要ない。私はお前を利用している」
「私の願いが叶うのです。利用されても構いませんよ。生まれてからずっと子爵のまま。出世も出来ずに私は何をやりがいにすれば良いのか分からなかったのです。つい最近までは。でもこれで陛下は私を無視できなくなる。全ては私の思い通りなのですよ!」
と先程まで紅茶を飲んでいた時の落ち着きようとは別人のように感じられた。
ハルト子爵は一通り言いたいことを言い終わったのか、また元の落ち着きを取り戻した。
「それでは三日後、またお会いしましょう。仮面の魔法士殿」
「……ああ。その時を楽しみに待っている」
そうして黒のローブを翻した瞬間、仮面の魔法士の姿はどこにもなかった。
フラーニャが昨日の事は忘れたかのような態度で接してきた。
「レイン様、お願いされていた情報全て揃いました」
そう言ってフラーニャは丁寧にまとめられた書類を俺に渡してきた。
一通り目を通すと俺はしばらく考え込んだ。
内容はだいたいまとめるとこんな感じ。
-------------------------
ハルト子爵の今後の予定
三日後、皇帝陛下へ臨時の領地経営の報告書を提出する為、帝都に向けて領地を出る。
四日後、南都到着
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恐らくだが、四日後に南都に到着した後、南都を火の海にする計画が考えられる最も単純なパターンだ。
単純だが、この機を逃す手はないと思われる。書類に書いてあるが、臨時の報告書提出というのは皇帝陛下が手を回しているに違いない。
どうやら相当陛下もこの件には容赦はしないらしい。
しかしこんな情報を一日で集める事ができるのだろうか?
いや、実際にこの手の中に証拠はあるんだが、なかなか信じられないよな。
「なあ、フラーニャ。なんでこんな短時間でこんな情報を知る事ができたんだ?」
俺はフラーニャに素朴な疑問を投げかけた。
「乙女の秘密ですっ!」
どうやら詮索はして欲しくないらしい。俺の専属メイドとはいえ、プライベートなものもあるのだろうし、仕方のない事なのだろう。
「そうか」
と俺はあまり気に留めることもなく返事をしておいた。
しかし、貴族の暗殺となるとあまり公にならない方がいい。三日後までに決着をつけるか、南都までに移動する道中で決着をつけるか。この二つのチャンスから選ぶ事ができる。ハルト子爵も警戒しているかもしれないが、圧倒的に仕掛ける方であるこちらが有利なのだ。
しかし不確定要素が一つだけある。謎の魔法士の存在だ。これだけはフラーニャに聞いてもあまり為になる情報は得られなかった。
相当な手練れなのだろう。万全な対策で挑むしかない。この世に絶対などありはしないのだから。
「フラーニャ、この任務に一緒についてきてくれるだろうか?」
「もちろんです。レイン様とならどこへでも」
こう言ったのには理由がある。
フラーニャは魔法の技術が優れており、アシストに向いているのだ。
逆に俺は攻撃特化だからフラーニャとのコンビがちょうどいいのだ。
「なら早速、準備に取り掛かれ。出発は明日、ハルト子爵が領地を出る前に仕留める」
「かしこまりました」
お互いに確認しあった後、準備に取り掛かった。
◇
南方帝国貴族、ハルト子爵の屋敷にて二人の男が向かい合って座っていた。
一人は煌びやかな装飾が至るところに施されている服を羽織っているが、豊かに育ったお腹が収まりきらないのかかなり大きめのサイズだ。上品な匂いを漂わせる紅茶をゆっくりと飲んでいるのがこの屋敷の主人であるハルト子爵である。
「計画は順調に進んでおりますかな?」
ハルト子爵の問いに対面の男は仮面を被っておりコクリとうなづくだけで言葉を発さなかった。対面の男は全身が黒一色で黒のローブを身に纏っている。で、少し近寄りがたいオーラを放っている。表情が画面に隠れて分からないのが余計に近寄りがたい。
「そうですか。これで皇帝陛下も私を認めてくださる!
ああ、なんと感謝すれば良いのでしょうか!」
これでというのは紛れもなく南都を火の海にするという計画のことだろう。
「……感謝など必要ない。私はお前を利用している」
「私の願いが叶うのです。利用されても構いませんよ。生まれてからずっと子爵のまま。出世も出来ずに私は何をやりがいにすれば良いのか分からなかったのです。つい最近までは。でもこれで陛下は私を無視できなくなる。全ては私の思い通りなのですよ!」
と先程まで紅茶を飲んでいた時の落ち着きようとは別人のように感じられた。
ハルト子爵は一通り言いたいことを言い終わったのか、また元の落ち着きを取り戻した。
「それでは三日後、またお会いしましょう。仮面の魔法士殿」
「……ああ。その時を楽しみに待っている」
そうして黒のローブを翻した瞬間、仮面の魔法士の姿はどこにもなかった。
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