暗躍貴族〜表は学生、裏は帝国暗部の期待のルーキーの俺が色々する話〜

ピョンきち

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prologue

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 夜。

 この言葉を聞いてどんな情景を思い浮かべるだろうか。

 雲ひとつない透き通った満天の星空?

 街灯に照らされ賑わう繁華街?

 酒を飲んで程よく酔いながら世間話で盛り上がっている酒場?

 ハッと思いつくだけでもこれだけある。

 でも今宵はそれとは少し、いや、かなり違った。









 雨漏りしている天井、外が見えなくなるまで汚れている窓、何処から入ってきたのか分からないが壁に張り付いて成長している蔦。

 そんな見る限り古そうな建物の中で普通とは思えない光景があった。

「誰の差し金だ?」

 そう声に出したのは全身を夜の闇に溶け込む黒色のローブで身を包んだ一人の男だった。フードをかぶっており顔の奥があまり見えない。

「君は何処から情報を掴んだのかねえ?」

 質問に質問で返したのはピエロのような仮面を被った男だった。
 汗をかき、息を切らしていることから、恐らく黒色のローブに追いかけられて逃げてきたのだろう。

「何処でもいい。お前が口を割らなくても俺は知っているぞ」

「ハッタリは良くないねえ。ここまで追いかけっこをしたのは初めてだよ」

 どうやら仮面の男は何も話す気はないらしい。

「ハルサッド王国宰相、マーリン=フォントの差し金だな。指令は確か、帝国内部に潜入して帝国の宝具の一つである『精霊剣オルディア』を盗め。何を考えてそんな事をさせたのかは知らんが、ろくな事ではないと使われたお前も分かっているだろう?」

 その言葉を聞いた瞬間、仮面の上からでも動揺しているのが分かった。

「なぜそれを知っているのかは追求しないでおくよ。仕方なかったのだよ。脅されてしまってねえ。まあ結局は盗む事が出来ずにこの有様さ」

「だから見逃せと?」

「そうしてくれると助かるのだがねえ」

 その言葉を皮切りに二人の距離は一気に近づく。

 黒色のローブの男はいつ取り出したのか分からないが右手に長剣を持ち仮面の男に切迫する。
 仮面の男は左手の前腕に仕込んであった魔力を帯びたプレートで攻撃を防いで見せた。それに構わず剣をグイグイと押し込んでいく。

「君の剣は凄いねえ。魔力を帯びておらず刃こぼれしないこの硬さ。一体何者なんだい?」

 それを気に黒いローブの男は大きく一歩退いた。

「ただの帝国の影だ。お前こそ何者だ。俺の剣を防ぐとは大したものだ」

 そう言った後、息を吸って気を窺う。

 刹那、仮面の男は胸を剣で貫かれていた。

「ガハッ……。ぐぐっ、何なんだ今の攻撃は……」

「お前に教える事はない」

「っ! さっ、最後に一つだけ頼みがある」

 仮面の男は自分が負った傷は手当てしても治らないと悟っているのだろう。
 ローブの男はしばし考えた後うなづいた。それを見て仮面の男は最後の力を振り絞り声を出す。

「娘を、娘を頼むっ! 私がしくじればあの子が殺されてしまう! あの子はこの件に何も関係ない!」

「……その子の名は何という」

「……フラナ=ローゼン。帝国近隣のトルド村に幽閉されている……」

 そう言い残し、仮面の男は息絶えた。

「全く、これだから俺はダメなんだよな」

 黒いローブの男はそう言い残し、建物を出て行った。
 
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