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episode5
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翌日の昼、俺は泊まっていた宿の部屋に作戦会議をするため部下を集めた。
「作戦内容を発表する」
俺がそう言った途端、部下たちの目つきが変わった。
それを見て俺はゆっくりと話し始めた。
「作戦日時は今夜、ハルト子爵の屋敷に侵入し、庭園内で待機。対象が庭園内の池に再接近したところで池に落として溺れさせ溺死させる。対象の死亡確認が取れ次第、速やかに帰還する。俺とフラーで対象を溺死させる。残りの者は庭園に近づく者がいないか見張りを頼む。もし近づく者がいれば速やかに殺せ。魔法で外見を変えてるとはいえ、顔を見られてはバレる恐れがあるからな。異論はあるか?」
俺は一通り説明を終えた後、意見を聞いた。
「あの、よろしいでしょうか?」
声を上げたのは近接の魔法戦闘を得意とするラーナだった。
俺は首を縦に振り、話の続きを促した。
「先日の報告書では、謎の魔法士の存在が確認されています。南都を火の海にするほどの魔法士だと推測すると相当な手練れのようですが、遭遇した場合、そう易々と殺せる相手ではないように思います」
「確かにそうだな…。ならもし魔法士に遭遇した場合、足止めする事はできないだろうか」
「この命に変えましても貴方様の所へは一歩たりとも近づけさせません」
「そ、そうか」
なんだか急にそんなことを言われるとむず痒くなってしまう。
気を引き締めなおして改めて俺は話し始めた。
「父上の命令はハルト子爵の暗殺だ。これは絶対に成し遂げなければならない。魔法士は後回しだ。俺の言いたい事は以上だ」
そう言った後、部下たちは部屋を出ていき、今日の作戦の準備を始めた。
「どうしたんだ? フラー」
フラーニャは俺の部屋から出て行かず、ずっと部下たちが出ていく姿を見ていた。
「あの、少しよろしいでしょうか?」
少し下を向きながら俺にそう言ってきた。
「ああ、構わないぞ」
俺は優しくそう言った。
「……二年前の事、覚えていらっしゃいますか?」
俺はその言葉を瞬間、あの時のことを思い出す。
「……ああ、忘れるはずないだろう」
二年前、それは俺が初めて任務で人を殺した時だ。そして今俺の目の前にいるフラーニャと初めて出会ったときでもある。今は名を変えて公爵家の俺の専属メイドとして働かせているフラーニャだが昔はそうでは無かった。
「何か、嫌な予感がするんです」
「……予感、か」
フラーニャの予感はよく当たる。
「……この一件には大きな陰謀が隠されている気がします」
「そうか、心に留めておくよ」
俺の言葉を聞くやいなやフラーニャは出ていった。
二年前、帝国帝都で帝国の宝具の一つ『精霊剣オルディア』の盗難未遂事件が起こった。公にはならなかったのは裏で帝国暗部が色々とやっていたからだ。その事件は帝国の周辺国家の一つであるハルサット王国が関与していた。今回も何者かが裏で手を引いているかもしれない。
俺は今一度気を引き締めなおして、任務の準備を始めた。
◇
時刻は夜。
街は街灯がついておりまだ人が多い。
そんな明かりが届かない裏路地で全身黒色のローブを着た集団が集まっていた。
「皆、準備はいいか」
俺は小声で部下に問いかける。
「「「問題ありません」」」
「ならよし。子爵の屋敷に侵入するのだが、そこまで行くのに目立つのは避けたい。フラー、皆の姿を見えなくする事はできるか?」
「もちろんです。ゼロス様」
そう、今俺は行商人アイテームではなく暗部組織シーカーの一員であるゼロスなのだ。
俺の頼みでフラーに『姿形隠蔽魔法インビジブル』を使ってもらった。空気中の魔力と体の周りの魔力を同化することにより周りから見られる事はない。逆にこの魔法を使っている人同士は見えるというなんとも優れた魔法なのだ。
難しいことを言うが、見える人は見える人が見える。見えない人は見えない人が見えるということ。
「ゼロス様、この魔法はもって一時間です。それまでに決着をつけたいです」
「ああ、分かっている。行くぞ」
ハルト子爵の屋敷への経路は頭の中に入っている。俺は迷うことなく走り出した。
数分後、俺たちはハルト子爵の屋敷の裏まできた。
「作戦通りに行動しろ」
その言葉を聞くやいなやフラー以外の部下たちは散っていった。
屋敷の裏の塀はそこそこ高いが魔力を身に纏う『身体強化魔法ブースト』を使えばどうとでもなる。しかしフラーには『インビジブル』を使用させているのでこれ以上の負担はかけられない。
「フラー、近くに来い」
「はい、ゼロス様」
俺は『ブースト』を使って近づいてきたフラーの背中と膝裏を持って軽々と飛び越えた。幸い塀には侵入者を防ぐ結界などは無かった。
俺はすぐにフラーを下ろした。
フラーと一緒に庭園まで行こうとし、行こうとするがフラーは動かなかった。
「どうしたんだ、フラー」
「いえ、なんでもありません。先を急ぎましょう」
「そうか、何かあったらすぐに言えよ」
そう言って俺は屋敷内の庭園まで走り出した。
ほんのり頬を紅く染めて走り出すフラーは呟いた。
「レイン様のばか」
と。
数分後、無事庭園に着いた。
見えないとはいえ感のいい奴は気付く恐れがあるので、俺たちは池の近くにあった少し高めの花壇の後ろに隠れた。
それから数分後待った後、事前情報に書いてあった子爵の特徴と同じ人物が庭園内を一人で散策していた。
「恐らくあれがハルト子爵だ」
「ええ、このチャンスを逃してはいけません」
少しタイミングを窺っていると子爵は一人呟く。
「いよいよ明日だ。陛下もちょうど良い時期に報告書を提出せよと命令なさった」
いや、それあんたを誘導させるための罠なんだけどね。
「南都を火の海にすれば陛下も認めてくださるはずだ」
国焼かれて、しかもそれが自分の臣下だったら怒るに決まってるじゃん。認めるなんてもってのほか。
うん、こいつは俗に言うおばかちゃんと言う奴だ。
これ以上見てられないと思い、俺は花壇の裏から出て子爵の背後に瞬時に移動した。
子爵の体を後ろから押し、池に落とす。声が聞こえないように一瞬で頭を池の中に沈める。子爵は水の中で暴れて抵抗を試みるがやがて動かなくなった。どうやら死んだらしい。
「さようなら、ハルト子爵。冷たいお風呂で眠ってな」
そう言い残し、俺はフラーと屋敷を出た。
「作戦内容を発表する」
俺がそう言った途端、部下たちの目つきが変わった。
それを見て俺はゆっくりと話し始めた。
「作戦日時は今夜、ハルト子爵の屋敷に侵入し、庭園内で待機。対象が庭園内の池に再接近したところで池に落として溺れさせ溺死させる。対象の死亡確認が取れ次第、速やかに帰還する。俺とフラーで対象を溺死させる。残りの者は庭園に近づく者がいないか見張りを頼む。もし近づく者がいれば速やかに殺せ。魔法で外見を変えてるとはいえ、顔を見られてはバレる恐れがあるからな。異論はあるか?」
俺は一通り説明を終えた後、意見を聞いた。
「あの、よろしいでしょうか?」
声を上げたのは近接の魔法戦闘を得意とするラーナだった。
俺は首を縦に振り、話の続きを促した。
「先日の報告書では、謎の魔法士の存在が確認されています。南都を火の海にするほどの魔法士だと推測すると相当な手練れのようですが、遭遇した場合、そう易々と殺せる相手ではないように思います」
「確かにそうだな…。ならもし魔法士に遭遇した場合、足止めする事はできないだろうか」
「この命に変えましても貴方様の所へは一歩たりとも近づけさせません」
「そ、そうか」
なんだか急にそんなことを言われるとむず痒くなってしまう。
気を引き締めなおして改めて俺は話し始めた。
「父上の命令はハルト子爵の暗殺だ。これは絶対に成し遂げなければならない。魔法士は後回しだ。俺の言いたい事は以上だ」
そう言った後、部下たちは部屋を出ていき、今日の作戦の準備を始めた。
「どうしたんだ? フラー」
フラーニャは俺の部屋から出て行かず、ずっと部下たちが出ていく姿を見ていた。
「あの、少しよろしいでしょうか?」
少し下を向きながら俺にそう言ってきた。
「ああ、構わないぞ」
俺は優しくそう言った。
「……二年前の事、覚えていらっしゃいますか?」
俺はその言葉を瞬間、あの時のことを思い出す。
「……ああ、忘れるはずないだろう」
二年前、それは俺が初めて任務で人を殺した時だ。そして今俺の目の前にいるフラーニャと初めて出会ったときでもある。今は名を変えて公爵家の俺の専属メイドとして働かせているフラーニャだが昔はそうでは無かった。
「何か、嫌な予感がするんです」
「……予感、か」
フラーニャの予感はよく当たる。
「……この一件には大きな陰謀が隠されている気がします」
「そうか、心に留めておくよ」
俺の言葉を聞くやいなやフラーニャは出ていった。
二年前、帝国帝都で帝国の宝具の一つ『精霊剣オルディア』の盗難未遂事件が起こった。公にはならなかったのは裏で帝国暗部が色々とやっていたからだ。その事件は帝国の周辺国家の一つであるハルサット王国が関与していた。今回も何者かが裏で手を引いているかもしれない。
俺は今一度気を引き締めなおして、任務の準備を始めた。
◇
時刻は夜。
街は街灯がついておりまだ人が多い。
そんな明かりが届かない裏路地で全身黒色のローブを着た集団が集まっていた。
「皆、準備はいいか」
俺は小声で部下に問いかける。
「「「問題ありません」」」
「ならよし。子爵の屋敷に侵入するのだが、そこまで行くのに目立つのは避けたい。フラー、皆の姿を見えなくする事はできるか?」
「もちろんです。ゼロス様」
そう、今俺は行商人アイテームではなく暗部組織シーカーの一員であるゼロスなのだ。
俺の頼みでフラーに『姿形隠蔽魔法インビジブル』を使ってもらった。空気中の魔力と体の周りの魔力を同化することにより周りから見られる事はない。逆にこの魔法を使っている人同士は見えるというなんとも優れた魔法なのだ。
難しいことを言うが、見える人は見える人が見える。見えない人は見えない人が見えるということ。
「ゼロス様、この魔法はもって一時間です。それまでに決着をつけたいです」
「ああ、分かっている。行くぞ」
ハルト子爵の屋敷への経路は頭の中に入っている。俺は迷うことなく走り出した。
数分後、俺たちはハルト子爵の屋敷の裏まできた。
「作戦通りに行動しろ」
その言葉を聞くやいなやフラー以外の部下たちは散っていった。
屋敷の裏の塀はそこそこ高いが魔力を身に纏う『身体強化魔法ブースト』を使えばどうとでもなる。しかしフラーには『インビジブル』を使用させているのでこれ以上の負担はかけられない。
「フラー、近くに来い」
「はい、ゼロス様」
俺は『ブースト』を使って近づいてきたフラーの背中と膝裏を持って軽々と飛び越えた。幸い塀には侵入者を防ぐ結界などは無かった。
俺はすぐにフラーを下ろした。
フラーと一緒に庭園まで行こうとし、行こうとするがフラーは動かなかった。
「どうしたんだ、フラー」
「いえ、なんでもありません。先を急ぎましょう」
「そうか、何かあったらすぐに言えよ」
そう言って俺は屋敷内の庭園まで走り出した。
ほんのり頬を紅く染めて走り出すフラーは呟いた。
「レイン様のばか」
と。
数分後、無事庭園に着いた。
見えないとはいえ感のいい奴は気付く恐れがあるので、俺たちは池の近くにあった少し高めの花壇の後ろに隠れた。
それから数分後待った後、事前情報に書いてあった子爵の特徴と同じ人物が庭園内を一人で散策していた。
「恐らくあれがハルト子爵だ」
「ええ、このチャンスを逃してはいけません」
少しタイミングを窺っていると子爵は一人呟く。
「いよいよ明日だ。陛下もちょうど良い時期に報告書を提出せよと命令なさった」
いや、それあんたを誘導させるための罠なんだけどね。
「南都を火の海にすれば陛下も認めてくださるはずだ」
国焼かれて、しかもそれが自分の臣下だったら怒るに決まってるじゃん。認めるなんてもってのほか。
うん、こいつは俗に言うおばかちゃんと言う奴だ。
これ以上見てられないと思い、俺は花壇の裏から出て子爵の背後に瞬時に移動した。
子爵の体を後ろから押し、池に落とす。声が聞こえないように一瞬で頭を池の中に沈める。子爵は水の中で暴れて抵抗を試みるがやがて動かなくなった。どうやら死んだらしい。
「さようなら、ハルト子爵。冷たいお風呂で眠ってな」
そう言い残し、俺はフラーと屋敷を出た。
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