Overflow~とある高校生たちの恋愛事情~

魚思十蘭南

文字の大きさ
5 / 28

言って。【弓坂×小山】

しおりを挟む
 先日、小山に告白されて付き合うことになった。
 それ以来俺たちは、部活の時間が合えば一緒に帰ることにしている。

 しかし、こう隣を歩いていると小山の小ささに驚く。
 背は女子の中でも低いほうだろう。
 俺と話す時かなり上を向いているが、首は疲れないのだろうか。
 あと歩幅も小さい。
 少し遅めに歩く程度では小山を置いて行ってしまう。
 女子と付き合うとは難しいものだ。

 今日はお互い部活が早めに終わり、一緒に帰っている。
 美術部に所属している小山は今、新入生にデッサンを教えているそうだ。
 自分で描くのは簡単だけど、人に教えるのはとても難しいらしい。
 絵のことはよくわからないが、確かに人にものを教えるのというのは、とても難しいことだ。

 俺もバスケ部で新入生にいろいろ教えているが、なかなかうまくいかない。
 結局最後は3年生でエースの角田先輩に助けてもらっている。

 そんな近況報告をしていると、小山が急に立ち止まった。

「弓坂くん、ちょっとわがまま言ってもいいかな?」

「何だ?」

 振り向くと小山は顔を赤くして、顔を少し俯かせていた。
 先日の告白の時もそうだったのだが、緊張している時の癖なのだろうか。

「あのね、弓坂くんにちゃんと好きって言ってもらったの、告白の日以来ないから、言って欲しいなって...」

 なんだ、そういうことか。

「確かにそうだな、今後気をつける。」

「え、そうじゃなくて」

「なんだ?俺は何か勘違いしているか?」

「いや、なんていうか、その...今、好きって言って欲しいの。」

「それは俺の愛情表現が足りないということだな。」

「うーん、そういうことなのかな?」

「だが俺は良い愛情表現がいまいちわからない。小山、何かして欲しいことはあるか」

「やっぱりそうじゃなくて!」

「何が違うんだ!?」

「私はただ、今この場で、弓坂くんに好きって言って欲しいだけなの!」

「それだけなのか?」

「うん、でももういいや。このまま言ってもらっても、言わせたかんじになっちゃうし。」

 そう言うと小山は歩き始めた。
 自分の鈍さには本当に呆れる。
 また小山を傷つけてしまったようだ。

「好きだ。小山。」

 小山が足を止める。

「俺は小山が本当に好きだ。大好きだ。言わされたように聞こえるかもしれないが、本当に本心から好きだ。」

 振り向いた小山は、涙を流していた。

「小山?やっぱり遅かったか?」

「ううん、ありがとう。私も大好き。」

 小山は涙を流しながら、くしゃりと笑った。
 その顔は夕日の橙に染まって、とても綺麗だった。

「もう一個わがまま言ってもいい?」

「何だ?」

「名字じゃなくて、名前で呼んでほしいな。」

「それも今か?」

「うん、今。」

「わかった。」

 深呼吸をして、まっすぐ小山の目を見る。
 小山の名前は確か...

「葵。」

「剛くん。」

 なんだか嬉しいが恥ずかしく、むず痒い。
 2人とも顔を真っ赤にして俯いてしまった。

「なんか、変なかんじだね。」

「そうだな。」

「何度も呼べばなれるかな?」

「そうかもしれないな。葵。」

 葵はより一層顔を真っ赤にして後ろを向いてしまった。
 やばい、可愛い。
 ボキャ貧過ぎて形容し難い可愛さだ。

「ズルいよ、弓坂くん。」

「名前で呼ぶんじゃないのか?葵。」

「だから、不意討ちしないでぇー!」

「葵が呼んでくれたらいい話じゃないか。」

「うん...」

 恥ずかしがる姿が可愛すぎて虐めてしまう。
 少しの間を置いて葵が口を開く。

「剛くん、大好き」

 やばい、可愛いとか言うレベルじゃない。
 虐めすぎたのか、あまりに強烈なカウンターで急に照れ臭くなってきた。
 葵も恥ずかしいのか、また顔を真っ赤にしている。

「...帰ろっか。剛くん」

「...そうだな。葵」

 少しだが、関係は進んだ...かもしれない。
 そんな帰り道だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

俺にだけツンツンする学園一の美少女が、最近ちょっとデレてきた件。

甘酢ニノ
恋愛
彼女いない歴=年齢の高校生・相沢蓮。 平凡な日々を送る彼の前に立ちはだかるのは── 学園一の美少女・黒瀬葵。 なぜか彼女は、俺にだけやたらとツンツンしてくる。 冷たくて、意地っ張りで、でも時々見せるその“素”が、どうしようもなく気になる。 最初はただの勘違いだったはずの関係。 けれど、小さな出来事の積み重ねが、少しずつ2人の距離を変えていく。 ツンデレな彼女と、不器用な俺がすれ違いながら少しずつ近づく、 焦れったくて甘酸っぱい、青春ラブコメディ。

友達の妹が、入浴してる。

つきのはい
恋愛
 「交換してみない?」  冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。  それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。  鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。  冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。  そんなラブコメディです。

女子ばっかりの中で孤軍奮闘のユウトくん

菊宮える
恋愛
高校生ユウトが始めたバイト、そこは女子ばかりの一見ハーレム?な店だったが、その中身は男子の思い描くモノとはぜ~んぜん違っていた?? その違いは読んで頂ければ、だんだん判ってきちゃうかもですよ~(*^-^*)

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

俺をフッた女子に拉致されて、逃げ場のない同棲生活が始まりました

ちくわ食べます
恋愛
大学のサークル飲み会。 意を決して想いを告げた相手は、学内でも有名な人気女子・一ノ瀬さくら。 しかし返ってきたのは―― 「今はちょっと……」という、曖昧な言葉だった。 完全にフラれたと思い込んで落ち込む俺。 その3日後――なぜか自分のアパートに入れなくなっていた。

処理中です...