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月が綺麗。【二宮×米田】
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同じクラスの弓坂君と小山さんが付き合い始めたらしい。
友達がいない私でも聞いたくらいだから、よっぽど有名なのだろう。
正直どうでもいいけど、心の中で軽く祝福しておく。
私は恋がわからない。
生まれてこの方、恋をしたことが無い。
恋愛小説なら腐るほど読んできたから想像はできるけど、赤の他人の男性に胸が痛むほどの感情を抱けない。
だから恋をしている人は素直にすごいと思うし、だからといって妬むようなことはない。
帰りのホームルームが終わり、私はそそくさと教室を出る。
教室は居心地が悪いから、放課後はいつも図書室に籠っている。
もちろん今日も図書室に一直線だ。
「こんにちは、米田先輩。」
図書室に入ると、あいつがいた。
1年の二宮仁。
彼は図書委員で、暇なのかしょっちゅう図書室で受付をしている。
そして私に執拗に構う。
正直苦手だ。
「今日は何の本を読むんですか?」
「有川浩さん。」
「あー、いいっすねー。俺も何か読もうかなー。おすすめありますか?」
「有川浩さんだったらレインツリーの国なんかは短いし話もわかりやすいからおすすめかも。でも図書館戦争シリーズと合わせて読んだらより面白いかも。」
「へー、そうなんですね。ありがとうございます!」
「じゃあ、私本読むから。」
「ごゆっくりー。」
彼がいるとついつい話してしまう。
貴重な読書の時間が削られる。
でも正直おすすめの本を聞かれるのは少し嬉しい。
好きな本や作家さんについて話せるのはこの上なく楽しいことだ。
さらに嬉しいのは彼はおすすめした本を必ず読んで、感想も聞かせてくれる。
本当に楽しそうに話してくれるから悪い気はしない。
ただ人とあまり話さない私は、うまく懐に潜り込んでくる彼がいると調子が狂う。
現にさっきもあんなに話してしまった。
今日はさっき二宮君に言ったように、有川浩さんの恋愛小説を読むことにした。
弓坂君と小山さんの話を聞いたせいだろうか。
恋愛小説を読みたい気分になったのだ。
目的の本を手に取って椅子に座る。
図書室は今日も静かだ。
人はほとんどいないし、その他の雑音もない。
本を読むのにまさに最適な空間だ。
本を読み終わり、気づいたら下校時間になっていた。
外はもう真っ暗だ。
本を元の場所に戻し入口の方に行くと、帰り支度を済ませた二宮君が立っていた。
「先輩が最後ですよ。」
ニカッと絵に書いたような爽やかな笑みを浮かべる。
女子達はこういうのでキャーキャー言うんだろうな。
私は言わないけど。
「ごめんね。」
「いいっすよ。先輩、本読み出すと止まりませんし。」
二宮君はそう言いながら図書室の鍵を閉める。
「じゃ、帰りましょうか。」
「うん。」
二宮君の家は私の家と同じ方向だから、よく一緒に帰っている。
何度か「先に帰っていいよ」と言うのだが、二宮君は「女の子が夜道を1人で歩くのは危ないので」といつも私を待っている。
心遣いはありがたいのだが、1人の方が気が楽だ。
とはいえ危ないのは事実だし、突っぱねるわけにもいかないので、結局こうして帰るのだ。
少し歩いていると二宮君が空を見上げて話しかけてきた。
「先輩、今日は月が綺麗ですよ。」
「...二宮君、それ意味わかって言ってる?」
「何がですか?ほら、綺麗な満月ですよ。」
「...そうだね。」
わざとなのか天然なのか区別がつかない。
夏目漱石のあの有名な逸話を知らないとは思えないが、確かに月は綺麗だし、天然なのかもしれない。
「先輩。」
二宮君が立ち止まった。
いつになく真剣な顔をしている。
「何?」
「俺、意味なくこんなこと言いませんよ。」
つまり、二宮君は私のことが...。
いや、でもなんで...。
人生で初めての告白紛いの出来事に思考回路がパンクしそうになっている。
「帰りましょう。遅くなっちゃいます。」
二宮君は沈黙に耐えきれなかったのか、再び歩き始めた。
結局私は何も言えなかった。
何も言わないまま家に着いた。
「先輩、また明日。」
「うん、また明日。」
多分明日も二宮君に会うだろうけど、普通に話せるかな。
なんだか複雑な気持ち。
その夜私はほとんど一睡も出来なかった。
友達がいない私でも聞いたくらいだから、よっぽど有名なのだろう。
正直どうでもいいけど、心の中で軽く祝福しておく。
私は恋がわからない。
生まれてこの方、恋をしたことが無い。
恋愛小説なら腐るほど読んできたから想像はできるけど、赤の他人の男性に胸が痛むほどの感情を抱けない。
だから恋をしている人は素直にすごいと思うし、だからといって妬むようなことはない。
帰りのホームルームが終わり、私はそそくさと教室を出る。
教室は居心地が悪いから、放課後はいつも図書室に籠っている。
もちろん今日も図書室に一直線だ。
「こんにちは、米田先輩。」
図書室に入ると、あいつがいた。
1年の二宮仁。
彼は図書委員で、暇なのかしょっちゅう図書室で受付をしている。
そして私に執拗に構う。
正直苦手だ。
「今日は何の本を読むんですか?」
「有川浩さん。」
「あー、いいっすねー。俺も何か読もうかなー。おすすめありますか?」
「有川浩さんだったらレインツリーの国なんかは短いし話もわかりやすいからおすすめかも。でも図書館戦争シリーズと合わせて読んだらより面白いかも。」
「へー、そうなんですね。ありがとうございます!」
「じゃあ、私本読むから。」
「ごゆっくりー。」
彼がいるとついつい話してしまう。
貴重な読書の時間が削られる。
でも正直おすすめの本を聞かれるのは少し嬉しい。
好きな本や作家さんについて話せるのはこの上なく楽しいことだ。
さらに嬉しいのは彼はおすすめした本を必ず読んで、感想も聞かせてくれる。
本当に楽しそうに話してくれるから悪い気はしない。
ただ人とあまり話さない私は、うまく懐に潜り込んでくる彼がいると調子が狂う。
現にさっきもあんなに話してしまった。
今日はさっき二宮君に言ったように、有川浩さんの恋愛小説を読むことにした。
弓坂君と小山さんの話を聞いたせいだろうか。
恋愛小説を読みたい気分になったのだ。
目的の本を手に取って椅子に座る。
図書室は今日も静かだ。
人はほとんどいないし、その他の雑音もない。
本を読むのにまさに最適な空間だ。
本を読み終わり、気づいたら下校時間になっていた。
外はもう真っ暗だ。
本を元の場所に戻し入口の方に行くと、帰り支度を済ませた二宮君が立っていた。
「先輩が最後ですよ。」
ニカッと絵に書いたような爽やかな笑みを浮かべる。
女子達はこういうのでキャーキャー言うんだろうな。
私は言わないけど。
「ごめんね。」
「いいっすよ。先輩、本読み出すと止まりませんし。」
二宮君はそう言いながら図書室の鍵を閉める。
「じゃ、帰りましょうか。」
「うん。」
二宮君の家は私の家と同じ方向だから、よく一緒に帰っている。
何度か「先に帰っていいよ」と言うのだが、二宮君は「女の子が夜道を1人で歩くのは危ないので」といつも私を待っている。
心遣いはありがたいのだが、1人の方が気が楽だ。
とはいえ危ないのは事実だし、突っぱねるわけにもいかないので、結局こうして帰るのだ。
少し歩いていると二宮君が空を見上げて話しかけてきた。
「先輩、今日は月が綺麗ですよ。」
「...二宮君、それ意味わかって言ってる?」
「何がですか?ほら、綺麗な満月ですよ。」
「...そうだね。」
わざとなのか天然なのか区別がつかない。
夏目漱石のあの有名な逸話を知らないとは思えないが、確かに月は綺麗だし、天然なのかもしれない。
「先輩。」
二宮君が立ち止まった。
いつになく真剣な顔をしている。
「何?」
「俺、意味なくこんなこと言いませんよ。」
つまり、二宮君は私のことが...。
いや、でもなんで...。
人生で初めての告白紛いの出来事に思考回路がパンクしそうになっている。
「帰りましょう。遅くなっちゃいます。」
二宮君は沈黙に耐えきれなかったのか、再び歩き始めた。
結局私は何も言えなかった。
何も言わないまま家に着いた。
「先輩、また明日。」
「うん、また明日。」
多分明日も二宮君に会うだろうけど、普通に話せるかな。
なんだか複雑な気持ち。
その夜私はほとんど一睡も出来なかった。
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