異世界トリップしたら女神(見習い)でしたが一般人として自由に生きていこうと思います

瑞多美音

文字の大きさ
81 / 120
第7章

81.女神見習いと受付嬢のお願い ~side カーラ~

 
 「ふぅ……」

 大丈夫、きっと大丈夫……

 その人は透けるような白い肌、グレーの瞳、柔らかそうな金髪でスタイル抜群の美人。
 そんな彼女に声をかけるのは実は結構緊張する……別に怖いとかそういうことじゃないし、話しかければ気さくに答えてくれる。きっと妹のミーナの方が親しいと思うけれど。
 ただ、今回は事情が事情だし断られたらどうしようと思うと余計に胸がドキドキして緊張で手には汗をかいている。断られると困ってしまうのだけど……

 噂の公認ポーション職人で実力は上級冒険者と同等。彼女は8か月くらい前かな?この街を訪れ、身分証が作りたいとギルドへやってきた。
 その時にギルドの説明や身分証を作ったのは他でもない私、冒険者兼ギルド受付のカーラである。

 その後、次々と採取の依頼をこなしマルガスさんやサブマスまで興味を持つようになった。
 魔物を討伐したり、珍しい薬草を持ち込んではランクを異様な早さで駆け上がり……エナさんはたまたま練習がてら魔法を放った方向にいたようでして。などと言っていましたが、仕方なくやたまたまで狩れるほどエナさんの持ち込んだ魔物は生易しいものじゃない。

 あっという間にギルド公認のポーション職人になり、今では私たちパーティメンバーのひとつ下のランクだ。
 それさえもマルガスさんにこれ以上目立ちたくないのでランクはこのままがいいと言い放ったらしい。

 私たちだって何年もかけてようやくこのランクになったのに……了承すればすぐにでも上のランクに行ける人と比べても仕方ないか。

 そして少し前かな……人々が恐れ近寄らず、冒険者ですら見て見ぬ振りをしていた住宅に住み始めたというのだ……
 エナさんはしばらく前に『黄金の羊亭』に泊まらなくなっていたので、どこに住んでるのか不思議だったんだけど……まさかあの家を買うだなんて。
 というのも、あの家はある有名(悪い意味で)な冒険者が酔っ払って家に入り込んだところ翌日憔悴して発見されたり……どうやらトラウマを刺激されたとか、なぜか内見するだけで不吉なことが次々起こるとか。
 その不気味さから長い間放置されていたと いうのに、それを物ともせず住みだしてしまった。

 週に1度程度しか顔を合わせることは無いが、その度に大量のポーションや魔物の部位、珍しい薬草などをギルドに持ってくる。時々、リディさんと一緒に歩く姿を見つけるが美少女と美女が並ぶと私なんかあっという間に霞んでしまいそう。ふたりとも少し変わった防具をだったけど……

 エナさんは謎は多いけど、冒険者やポーション職人には粗暴で酒好きが多いなか、怒っている所は見たことがないし、ギルド公認になったからといって手を抜くわけでもない。
 そんな彼女は実はギルド職員からは一目おかれる存在。
 だから、冒険者をしつつもエナさんがギルドに来るとわかっている日はなるべく受付の仕事をするようにしている。
 まぁ、マルガスさんがいるときはマルガスさんが担当するんだけど、それ以外の時やリディさんの付き添いの時は密かに私の担当だ。
 少しでも仲良くなりたいそんな気持ちがいつからか生まれていた……


 エナさんが持ち込む魔物の素材は私たちパーティのメンバーでようやく狩れる魔物なのに彼女はロクに防具をつけずソロで討伐しては持ってくる。
 あり得ない……そもそもあの魔物はあの森の奥にしかいないはず。
 私たちパーティでさえ国からの討伐依頼を受け、装備などを入念に準備してから入る森なのに……でもそれを指摘してこの街から去られては困る事情があるから何も言わない。

 その訳とは……エナさんの公認ポーションはギルドの抜き打ち検査を易々とクリアする唯一無二のポーション。並みのポーション職人でも1度や2度は検査に引っかかることはあるのにだ。
 検査であまりにも悪質だと判断した場合は即刻取引中止。他の街のギルドにも通達し、ポーション販売取引中止。冒険者の場合ランクも2つ降格になるし、そうなれば街や市場で細々と売っていくしかない。
 エナさんは今まで1度も検査に引っかからず、興味を持ったサブマスがポーションをマルガスさんに細かく鑑定させた所、他のポーションより良質で効果が高いことがわかった。

 例えていうなら彼女の初級ポーションはギルドで扱っている中級ポーションに勝るとも劣らない効果を発揮することがわかった。
 つまり、彼女の中級ポーションは冒険者や市民にはなかなか手が出ない上級ポーションに匹敵する。
 密かに中級ポーションの価格で上級ポーションを手に入れられると噂になり、エナさんのポーションは入荷とともにすぐに完売してしまう人気商品で納品の日は冒険者が今か今かと待っているのだ。エナさん本人は気づいていないみたいだけど……
 近々もう少し数を増やして納品してほしいと依頼する予定だとか。
 ギルドとしても私たち冒険者としても、彼女がこのまま定住してくれることを望んでいる。
 その為に彼女の持ち込む物の買い取りにはマルガスさんが出張り、サブマスやギルマスは彼女が望まない上級冒険者への昇級をとりやめを手配したりと影ながら努力中。その仲間に私も入れてもらえていることは密かな自慢だ。

 そんな彼女にお願いごとをするとなると、やはりそれなりに覚悟がいる。
 しかし……これは1人の人生がかかってい
る。ギルドにも事情は話してあるから、あとは彼女の返答次第だ……

 「エナさん、少し時間よろしいですか? ちょっとお話があるんですが……」
 「えっ、ポーションに何か問題でも?」
 「いえっ、ポーションはいつもの通り良い品でした。それとは別のご相談があるんです……」

 どうか断らないで……お願い。

 「相談……ですか。大丈夫ですよ、あとは買い物して帰るだけなので」
 「あのお家にですよね。どうやってあれを解決したか知りたい所ですが……エナさんのことですもの……もう少しで仕事が終わるのでギルドの斜め前にある『黒猫亭』で待ってていただけませんか」
 「いいですよー。あまり急がなくても大丈夫ですよ」
 「すみません。ありがとうございます」

 よかった。エナさんを見送りすぐに仕事を終わらせ、ギルドの食堂で待機していたパーティメンバーと共に『黒猫亭』へ向かう。
 『黄金の羊亭』を相談場所に選ばなかった。さすがに相談事を実家でするのは……

 「とりあえず、話は聞いてもらえそう」
 「そうか……」
 「よし、行こう」

 そばにいた彼らとアイコンタクトで頷き合い、席に座って微笑んでいる彼女の元へ向かう……どうかエナさんが協力してくれることを願いながら。

感想 3

あなたにおすすめの小説

ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います

とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。 食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。 もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。 ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。 ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。

1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について

水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】 千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。 月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。 気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。 代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。 けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい…… 最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。 ※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。

スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜

シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。 アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。 前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。 一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。 そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。 砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。 彼女の名はミリア・タリム 子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」 542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才 そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。 このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。 他サイトに掲載したものと同じ内容となります。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

スラム街の幼女、魔導書を拾う。

海夏世もみじ
ファンタジー
 スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。  それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。  これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。

ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった

仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。 そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。