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第6章
80.女神見習い、家が神の宿屋になる(2)
しおりを挟む「ということでまずはルールを決めねばならんの」
「あ、でもリディ達に無断でするのは……」
「ふむ、相談してみるかの?」
「はい」
メルさんは最初にリディに抱きついてしまったので、いいところを見せようとアルさんに言われるまま、外でいろいろ頑張ってた……効果は別としてね。
うん、アルさんにいいように利用されてないですかね……
リディを呼ぶとブランとなぜかメルさんまで一緒に戻ってきた。
「リディ、ブラン……なんかこの家に神様の宿屋になりそうなんだけど……どう思う?」
「ん、よくわかんない」
「だよね……」
「うむ、わしみたいな神がほとんどじゃ」
「いーえ、そんなことないわ。ワタシみたいに若い子もいるわよ」
うん、あんまり参考にならないな……
「ブランはなんて?」
「ん……神様なら仕方ないけど、神様でもリディに危害を加えたら出禁……だって」
「うむ、それは当然じゃな」
「そーねぇ……しっかりルールは決めないとねぇ」
ブラン的にはメルさんもあと少しで出禁だったと思うけど、言わぬが花だよね……
「リディ、いろいろな神様が泊まりに来ても大丈夫?」
「……ん、たぶん?」
「わかった。じゃあやってみてダメだったらやめるってことにしよっか」
「ん」
「うむ、じゃあわしは宿仕様に改装してくるから、ルールを相談しとってくれ」
「はい」
「ん」
「あーん、ワタシが改装したかったのに……」
「まあまあ、メルさんルールも大事ですから」
「わかったわ」
リディ、ブラン、メルさんと一緒に話し合い大まかに決めたルールを戻ってきたアルさんにも確認してもらい、とりあえずルールが決定した。
*****
~『神の宿屋』ルール~
※守れないものは泊まるべからず。by アルネルディ、メルディーナ
・宿泊したら宿代を払うこと(姿を見せない場合はルールが書かれた額の下にあるチェストの上に置いていくこと)
・宿代はお金、加護、素材、魔道具など可
・泊まる場合は最低でも1度姿を見せるかメモなどで報告すること(どこに誰が泊まっているか把握するため。メモも同様にチェストの上に置くこと)
・食事は各自で用意すること
・お酒の提供はしないので各自で用意すること
・キッチンやお風呂など使用したら元に戻すこと
・エナとリディの部屋には許可なく立ち入らない
・神様でもリディに危害を加えたら出禁
・リディに浄化をかけるとありがとうがもらえるかも
*****
神様には宿泊費としてお金を置いていく場合と加護をさずける場合、そしてポーションなどに使える珍しい材料や魔道具どを提供してもらうことになった。
神様にお金を請求するなんてと信仰者が聞いたら激怒しそうなものだが、私も一応女神見習いだし。神様が滞在する間は結構大変なんだから当然の権利だと主張したい。それに、アルさんやメルさんが無料だなんてありえないというので……
重要なのは食事は各自で用意すること……素泊まりですね。んー、注文とってユリスさんに作ってもらうっていう手もあるけどそこは本人に相談しないとなあ。
アルさんがルールを書いた額を壁に作ってくれた。その下には大きめのチェストが置かれメモ帳とペンが用意された。
後々増えることを考えかなり大きめでまだ余白もあるが、これらを守れない神様は宿泊しないということになった。
あとはリディに浄化をかけるとありがとうがもらえるかもという謎の文言を発見したけど……私はしーらない。
◇ ◇ ◇
夕方、調和の女神のモニークさんと秩序の神のオルドルさんが一緒に宿へやってきた。宿屋としてははじめてのお客さまだ。
ふたりは30代くらいのそれはそれは美しい顔立ちをしていてる。神様ってみんな美形なのかな……でもアルさんはよくわからないなぁ。
おふたりはご夫婦だそうで、降臨も同じ場所なんだとか……
「はじめまして、ようこそ」
「ええ、アルから聞いてやってきたの。はじめましてモニークよ。宿泊は今日だけの予定よ。明日には天界に帰るから」
「オルドルだ。部屋はひとつでいいぞ」
「わかりました」
アルさんのおかげで2階はすべて宿の部屋になっていてシングルが4つ、ダブルがひとつ、ツインがひとつある。ちなみにアルさんとメルさんはちゃっかり1階の部屋をゲットしている。
ツインの部屋へ案内する……ブランが。これもブランのお仕事になった。あまりにもリディから離れないから、たまにはいいかなって……ものすごいスピードで案内して戻ってくるけどね。
その後、アルさんやメルさんとおふたりが親しげに話すのを横目にお茶を入れる。これくらいはサービスしないとね……
「エナといったか? 」
「はい」
「少し庭を見て回ってもいいだろうか?」
「どうぞ、案内しますね」
大したものはないですけど……
薬草畑や野菜畑、果実コーナーや不恰好なベンチなど案内していると……
「これは、なんだ?」
外に刺してある木に興味を持つ神オルドルさん……
「あー、それは……時計がないもので時間がわからないものかと試してみたんですけど……」
「そうか……残念だがかなりズレているぞ」
「やっぱり……」
気休め程度にしかならなかったか……日も暮れるので早々に家へ戻る。
その日、天界でのアルさんの自慢っぷりを聞いたり、モニークさんとオルドルさんはリディに浄化をかけてありがとうをもらったり、テイクアウトしてきたものをみんなでシェアして食べて過ごした。
翌朝ーー
「とっても楽しかったわ……次は長期滞在したいからよろしくね」
「うむ。なかなか過ごしやすかったぞ」
「ありがとうございます」
「もう帰るのかの……わしはまだまだ楽しむんじゃ」
「そうよねー。ワタシもリディちゃんとお風呂に入るまでは帰らないわっ」
「「アル、メル……はぁ……」」
おふたりとも呆れ顔です。アルさんとメルさんはおふたりにさっさと教会へ行きなさいと送り出されました。
「ん、また来てね」
「ええっ! 必ず来るわ。リディちゃんも身体に気をつけるのよ」
「ん、ありがと」
最近、表情が柔らかくなったリディを感慨深く見つめていると
「エナ、これをやるから元気出せよ」
「え、これって……」
オルドルさんはよっぽど可哀想に思ったのだろう。渡してくれたのは時計だった。
「これは魔道具でな、時刻がわかるものなんだ。動力源は魔力……ひと月に1度魔力を注入すれば永続的に使えるぞ」
「わぁ、時計ですね! ありがとうございます!」
「む、それを知っているのか?」
「ええ、まぁ……元の世界では機械仕掛けでしたが似たようなものがありましたので」
「そう、だったな……お前も難儀だな」
「はぁ」
オルドルさんがくれた魔道具は見た目は元の世界の時計に似ており、長針と短針で秒針はない。やはり1日は24時間だった。
1から12の部分にはすべて違う色の石がはめ込まれており大きさは直径30センチくらい。置き時計にちょうどいいな。見えやすいところに設置しよう。
「あら、わたしも渡すものがありますのよ。エナちゃんこちらへ」
「はい」
「はい、これ……好きに使うといいわ。でも、独り占めはしないでリディちゃんと分けてね」
手渡されたのは色とりどりの小さな宝石だった。
「いやいや、大したおもてなしもできていないのにもらいすぎですっ」
「いいのよ。久しぶりに楽しかったから」
「うむ、そうだぞ。受け取っておけ」
貰えるものはありがたくいただこう……
「……ありがとうございます」
「「じゃあ、またね(な)」」
「はい!」
「ん」
モニークさんとオルドルさんはリディに浄化をかけ、私とリディ、ブランそして宿に加護を授けて帰っていった。
「リディ、宿屋続けても大丈夫そう?」
「ん、大丈夫」
「そっか……モニークさんに宝石もらっちゃったんだけど、リディはどの色がいい?」
モニークさんにもらった宝石は青、緑、黄色、ピンク、赤、紫とカラフルだ。サイズはどれも小指の爪くらい……お高そう。
「ん、紫……ブランも青がほしいって」
「わかった……でもリディ、もうひとつずつ選んでいいんだよ?」
リディは悩みつつ……
「ん、じゃあ……ピンクと緑」
「そう。じゃあ私は黄色と赤だね。今度ユリスさんにこれで何か作ってもらおうか。あ、もちろんそのまま持っててもいいからね?」
「ん」
その後、モニークさんやオルドルさんをはじめとして、本格的に宿になった途端神様がやって来る……結構遠慮していたらしい。とは言ってもみなさん少し顔を出すだけだったり、数日だけの滞在など長期滞在はアルさんとメルさんだけだった。
アルさんとメルさん曰く、気に入ったら次の降臨の時に長期滞在するつもりで今回はいわばお試しなんだそう……楽しみなような、少し怖いような……どうか、降臨時期がずれていますようにっ。
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