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第7章
89.女神見習い、ダンジョンへ行く(5)
「メルさん、すいません。たった今ダンジョン出たところで……何度も連絡してくれましたか?」
『うんうん、ダンジョンの中なら通じないからいーのよー……出ないと思ってたし。ただ、念のため知らせておこうかと思って連絡したら出てくれてびっくりよ! もう素材は獲得できたの?』
「はい、なんとか。何かありましたか?」
『うん、今日もエナちゃんの言ってた男の子が家族に連れられてきたんだけど……』
「ジャックのことですね」
『エナちゃんにもお願いされたし、張り切って浄化したから少しはマシだと思うんだけど……本人の体力と気力次第だけど、もしかしたら今日か明日が峠になるかもしれないわ……』
「そんなっ」
弟を助けられると喜んでいるジョセフにこのことをどう伝えればいいっていうの……
『今日中にエナちゃんがポーションを持って戻れば間に合うかもしれないわ』
「メルさん……わざわざありがとうございます。少し考えて見ますね」
ジョセフの家族に渡したポーションとメルさんの浄化で私たちが帰るまで持ってくれるだろうと考えたけど、それは希望的観測が過ぎたのかもしれない……
『ええ、わかったわ。気をつけてね。リディちゃんのことは心配しないで頑張ってるわよ』
そっか……リディ頑張って留守番してくれてるんだ。
「ありがとうございます」
------
【交信】
《愛の女神 メルディ―ナ》との交信を終了しました。
------
私があるひとつの選択をしたらジャックを救えるかもしれない。
「そうと決まれば腹をくくるしかないよね」
ある覚悟を胸にメンバーの元へ戻る……
「おまたせしました」
「ううん。平気だけど……トイレ?」
「いや、まあ……はい」
とりあえずメンバーからすればあの目立つトイレを陰でしたということで納得してくれた。
「じゃあ、今日の所は宿を取って明日朝イチで出発しようか」
「「ええ」」
「ああ、明日になればジャックが救えるんだな……それまで頑張ってくれよっ」
喜ぶジョセフを前に決意は深まるばかりだ。
宿に移動し部屋を取る。
宿の部屋は男部屋、女部屋ひとつずつだけにしてもらう。みんなが私には1人部屋をと提案してくれたが頑なに断った。メンバーは若干不審に思いつつも願い通りにしてくれた。ありがたい。
「あの、話があるんだけど……」
「じゃあ女部屋に集合でいい?」
「うん」
ルカ、ジョセフが部屋に荷物を置いてすぐに全員が女部屋に集合した。
「で、話って?」
「あの……もしも今日すぐに街に戻ることができるとしたらどうしますか?」
「っ、そりゃ今すぐにでも帰りたいさ! 弟が待ってるんだからっ」
「そうよ。いくら予定より早く進んでるとはいえ心配に変わりないもの」
「そうだなあ……早くやんちゃなジャックに戻ってほしいしなあ」
「それに、ジョセフのご両親も疲れてるはず……安心させてあげなきゃ」
「そうですよね……その方法があるとしたて、例えば契約をしてでも知りたいですか」
俯いていたジョセフはハッと顔を上げた。
「弟の命が救えるのなら契約でも何でもしてやるさ!」
「皆さんもいいですか」
「「「もちろん」」」
他のメンバーも力強く頷いたことを確認し、ストレージから1枚の紙を取り出す。
「それでは今からこの契約の紙に血を垂らしてください。みなさんご存知だとは思いますが、契約の紙には神の刻印があり、破れば罰があります。そして契約内容は今から私が話すこと他言無用ということです」
「それだけか?ほかには」
「いえ、特にはないですね。仲間内でこのメンバーで話題にするのは構いませんがくれぐれも他の人に知られないようお願いしますね?」
「「「「わかった」」」」
全員が血を垂らし終えたので……ちょっと痛そう。だけどこれには理由がある。直筆のサイン<唾液<血液と効力が増すそうなのだ。内容が内容だけに血液にさせてもらった。それにみんなの唾液付きの契約の紙より血の方がまだいいかなって……
「では『契約の神の名の下にルカ、カーラ、ステラ、ジョセフは私エナが瞬間移動が使用できることを他言無用とする』」
すると宣言した文言が紙の上にスルスルと浮かび上がる。読み終えると紙がまばゆく光り血のシミも消え去り契約が完了したことがわかる。
「はい、できましたー。この契約書は私が預かっておきますね。では、早速ですが1人に限って瞬間移動でランヴィの街へ移動することができますが誰が行きますか?」
「「「「……はあっ!?」」」」
「すいません、レベルが足りないので全員は無理なんです。あと装備も外してもらわないと厳しいかもしれないのでルカさんは無理かも」
「うん、体でかいからな。仕方ないさ。ジョセフなら行けそうかな?」
「あ、それならギリいけると思います」
頑張ればもう1人いけるかもしれないけど、ただでさえ瞬間移動ってすごいみたいだし……ジョセフがギリってことにしておこう。
「ちょっと待って。それって本当のことなの?」
ステラはいまいち信じ難いようだ。確かに私もその立場なら疑うかもしれない。
「嘘ついてまで契約することではないですし、嘘なら契約不可ではじかれちゃいますよ?」
「そうか……そうよね、疑ってごめん」
「いえいえ、それが普通の反応ですよー」
ずっと黙って聞いていたカーラさんは思い出したかのように
「だから部屋取らなかったのね……」
「だって、部屋が無駄になっちゃうからもったいないなって……」
((((この人のやることの規模が違いすぎるっ!!))))
「で、運ぶのはジョセフでいいんですかね?」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
必要最低限の装備はとりあえず預かりストレージに入れる。うん、ポーションもしっかりある。
そして宿よりも馬車の中の方がいいだろうと判断してそこから瞬間移動することになった。
「じゃあ、明日会いましょう」
「ええ」
「ジョセフ、手を……」
「ああ」
手を握った途端ステラからとんでもない殺気が飛んできた……い、いやだなぁ……ステラ、そんな目で見ないでよー。
瞬間移動には体のどこかに触れてないと……あ、すいません。ぶるぶる……ステラさんの殺気が増してますよ……こわい、ステラこわい……
「ジ、ジョセフさん……やっぱり肩に手を置いてくださいな」
「あ、ああ」
これでいいですよね?ステラさん……ふぅ。なんとか我慢してくれるらしい。
「じゃあ行きます」
「エナ……ジャックをお願いね」
「はい!」
馬車からエナとジョセフが消え去った後……
「まさか、本当にいなくなるなんて……」
「ああ。つくづくエナって規格外だよなぁ」
「うん……わたしでもまだ何回かしか握ってない手をいきなり握るなんて……エナ、規格外」
「「……ステラ……」」
「もちろん……瞬間移動も……」
「ええ、そうよね」
「そっちを先に言って欲しかったな」
「うん……でも手も重要案件……」
「「そう……」」
余談だが、宿屋の主人は大変不本意ながら私とジョセフがどこか別の宿でお泊まりしたと勘違いし生温かい視線をもらったらしい……ステラも怪しまれないよう言い返したいのをぐっと我慢し早朝に街へ向けて出発した。
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