103 / 120
第8章
103.鍛治職人の1日 〜side ユリス〜
「おはよー、ユリス」
「おはよう」
「今日ご飯なーに?」
「今日はトマトスープにサラダとパンですよ」
「ふーん」
この家に世話になってから食事は自分の仕事となったがキュリエルは自分がここにくるまでの期間食べていなかったはず……今では3食しっかり食べているが、問題ないのだろうか……よくわからない。
ここに来た当初キュリエルのことをさん付けで呼んでいたが、キュリエルからさん付け気持ち悪いとのことで呼び捨てになった。多分、そこそこ仲良くなれていると思う。
エナさんの改築のおかげで住みやすさが増し、冷蔵庫?のおかげで作りおきができるようになった。
「「いただきます」」
朝食を食べ終え、後片付けをしていると……
「ん?ユリス!だれか来たっ」
「え?」
「なんか家の外ウロウロしてる」
「ちょっと見て来ますね」
「わかった。僕、姿消すけど攻撃体制は整えとくから!」
「は、はい」
何者か知らないが穏便にお引き取り願おう……用なら店舗で聞けばいい。あまり開けられてないけど……
確かに門の外には人がいた……キュリエルの言う通りだ。
「あのー……何かご用ですか?」
「私、冒険者ギルドからの使いの者ですが……エナさんはいらっしゃいますか?」
どう答えよう……とりあえず用件を聞いてから考えるか。キュリエルも様子見のようだし……
「いえ、今はちょっと……」
「そうですか。伝言を頼んでも?」
「は、はい」
「では……来るだけ早くマルガスさんかサブマスを訪ねてほしいとのことです」
「わかりました。伝えておきます」
「ありがとうございます。それと例の株があればそれも頼むとことです……例の株といえば伝わるはずだと言っていましたが……」
「あー……そのまま伝えますね」
「よろしくお願いします。では失礼します」
使いの方は小走りで去っていった。ふぅ……キュリエルが騒ぎを起こさなくてよかった。
「エナさんはもう起きているでしょうか……」
「んー、どーだろ?もう少ししてから行ってみれば?」
「ええ、そうします」
後片付けを再開し、作りおきでも用意しますか……
「ねー、ユリス。もういいんじゃない?」
「あ、そうでした」
思ったより時間が経っていたので急いである部屋へ向かう。
初めて見た時も大変驚いたこの部屋……何がどうなっているか皆目見当がつかないけど、エナさんのやることだから……
部屋に入り、扉を閉め……深呼吸。
「よし」
もう1度扉を開けると……不思議なことに違う場所へ繋がっているのです。
「あれ?ユリスさんどうしたんですか」
「あの、家に冒険者ギルドからの使いの方が来まして出来るだけ早くマルガスさんかサブマスを訪ねてほしいとのことです」
「んー……なんだろ?わかりました。わざわざすいません」
「いえ……それと例の株があればそれも頼むとことで……例の株といえば伝わるはずだと言っていましたが」
「あー、わかりました」
例の株で本当に伝わったみたいだ。
「それと、店舗に置いてあるポーションや羽が売れましたのでできれば追加を……」
「はい、どうぞー」
「ん、これも……」
「ありがとうございます。ではこれで」
「はーい」
「ん」
ポーションとブランの羽を手に家に戻り、早速店舗へ並べる。
「近々開けないとなぁ……」
店舗は5日に1度くらいしか開けていない……店舗は冒険者が来ることはほとんどなく、庶民が時々来てはポーションや羽、自身作の鍋などの生活用品が主に売れていく……武器はほとんど売れないので最近は主に生活用品を作っている。
本来ならもっと店を開かなければならないが1度作り出すと集中しすぎていつのまにか夕方なんてこともある。
ポーションや羽の代金はそのままエナさんとリディに渡し、残りの売り上げ代金は自分のものになるが……そのほとんどはエナさんへの返却と素材集め、食料品に消える。このままではまだまだエナさんに借りたお金を返しきれない。もっと店舗を開けるようにしなくては……
エナさんは食欲に忠実なのでそのことが関わるとこの間の釣り竿のように無茶ぶりをしてくるが、それもいい経験だと思う。
魚が食べたいからと言って魔物の切り身を持ってきた時もあんなに美味しく食べられるとは思わなかったが、料理したら美味しかった。
そのおかげで鱗や骨などの素材も分けてもらえたしありがたいことも多いんだけどね。
昼から夕方にかけては工房にこもることが多い。お昼は準備してあるのでキュリエルは問題ない。
炉に火を入れひたすら素材を叩いて形を作っていく……満足のいく出来になるまで何度も作り直していたらあっという間に夕方だ。でもこれはリディから頼まれたものだ。もっと作り込まないと……
「ユリスー、リディが来てるよー」
「はい」
リディは料理を教えるようになってから少し心を開いてくれている。それまではブランの殺気に内心びびっていたけど最近はブランも認めてくれているっぽい……
「あれ、エナさんは?」
「ん、まだ」
「そっか。ご飯一緒に作る?」
「ん……あとこれ作ってきた。おすそ分け」
リディから渡されたのはたくさんのジャムの瓶だ。
「ありがとう……美味しそうだね」
「ん、自信作」
「今日は時間ないけど、明日一緒にジャムパイ作ってみようか?」
こうやってやりたいことがどんどん増えていくから店舗を開く日がまちまちになっていくんだよなぁー。
「ん!」
「そうだ。リディから頼まれたアレだけど……もう少しこだわりたいんだけど、いいかな?」
「ん、わかった……頑張って」
「うん」
リディと夕飯を作っているとキュリエルが味見と称して盗み食いをしてはブランにたしなめられている。ここ最近よくある光景だ。
ここに暮らしてから驚くことも多いけど、とても充実した日々を過ごせている。
「ただいまー……あれ、リディ来てたんだね」
「ん、ご飯作った」
「今日はこっちで食べていきますか?」
「そうですねー」
少し早いけど夕飯にすることに……
「「「「いただきますっ」」」」
おいしいと頬を緩めるエナさんやキュリエル、リディにブラン……家族以外味方がいなかった集落。いつの間にかこの家は居心地のいい場所になっていた。
彼らは少し変わっているかもしれないけど、その分他ではできない経験がたくさんある。精霊と暮らすことだって、別の場所に繋がっている部屋だって……
これからもたくさんの経験を積んで腕をあげよう。いつか、家族に胸を張って会えるように……リーナに笑顔で腕輪が返せるように。
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
スラム街の幼女、魔導書を拾う。
海夏世もみじ
ファンタジー
スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。
それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。
これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。