104 / 120
第8章
104.女神見習い、冒険者ギルドから呼び出される(1)
「おはよー」
「ん、おはよ」
毎日の日課をすませるとリディがご飯の用意をしてくれていた。
最近、料理はリディかユリスさんの担当だ。朝はだいたいリディが用意してくれる。
「おっ、このジャムリディが作ったの?」
「ん、エナにもらった果物で作った」
リディお手製のジャムをパンに塗って食べる……
「おいしー」
「ん、よかった」
あれ、ひょっとして宿のことリディに任せすぎかな?私、薬草畑ぐらいしか世話してない……いやいや、掃除はしてる……リディに負担かけすぎかなー?でも、料理も畑仕事も楽しそうなんだよねー……もぐもぐ。
「リディ、宿のこととかしてほしいことがあったら何でも言ってね?」
「ん、大丈夫」
「ブランは?」
「……ん、エナが料理を作らなければ問題ないって」
「あ、そう……」
ガチャ……ん?
「あれ?ユリスさんどうしたんですか」
ユリスさんが訪ねてくるなんて珍しい。
「あの、家に冒険者ギルドからの使いの方が来まして出来るだけ早くマルガスさんかサブマスを訪ねてほしいとのことです」
「んー……なんだろ」
とりあえず出来上がっている分だけでも持っていくか……
「わかりました。わざわざすいません」
「いえ……それと例の株があればそれも頼むとことで……例の株といえば伝わるはずだと言っていましたが」
「あー、わかりました」
ファルシュ草の株のことだよね?薬草畑にあるから大丈夫。
「それと、店舗に置いてあるポーションや羽が売れましたのでできれば追加を……」
時々ポロリと売れるらしいんだけど、ユリスさんも作り出したら工房にこもるらしく不定期にしか開店してないんだって。一応テリトリーに設定してるとはいえキュリエルひとりに店番させるわけにもいかないしね……ユリスさんは申し訳なさそうだけど、私もリディも特段気にしてはいない。それがなくても生活できてるのが大きいんだけどね。
「はい、どうぞー」
「ん、これも……」
「ありがとうございます。ではこれで」
「はーい」
「ん」
ユリスさんはポーションとブランの羽を手に帰っていった。
私も準備して行かなくちゃ……薬草畑からファルシュ草を株ごと掘り出し濡らした布で根を包んでストレージへ
「じゃ、行ってくるねー」
「ん、行ってらっしゃい」
あ、そうだ。ついでにドーラに鱗いるか聞いてみよー。防具に使うかな?いらなきゃギルドで売ればいーし。
「こんにちはー」
冒険者ギルド尋ねると奥の部屋に案内された……最初から裏口から訪ねればよかった。
お茶を入れ待つこと数分……
バーンッ!
「お待たせー。来てくれて助かったよ!」
「はい……出来るだけ早く訪ねてほしいって聞いたので」
「うん、そうなんだ。今日来てもらったわけはオークションに出品するものがないかと思ってね」
「オークションですか?」
「オークションっていうのはギルド持ち回りの主催して各国のギルドから貴重なものなどが持ち寄られ、ふた月に1度開催されているんだ。開催場所は様々でそれぞれのギルドで出品されたものを本部を通してオークションし、買い手の元に届けられるんだ」
「へぇ……」
「まぁ、主催のギルドは目玉商品を出品するのが通例っていうか……変なものを出すと後々まで響くんだよね。今回はうちが主催だから目玉になるような物が欲しくてねー」
「あー、それでファルシュ草の株ですか?」
「うん、めぼしいものがない時には公認ポーションをオークションにかけるんだよ?倍近くの価格で売れたりしてねー」
へぇ……これも伝説の魔道具師が作り出した特殊な魔道具を使うことで遠方からも参加できオークションが成り立っているらしい。そういえばミーナちゃんのお母さんがちらっとオークションのこと言ってたっけ?
「オークションの売り上げはギルドと売主の3:7だから、エナくんにも損はないと思うよ」
損がないなら別に構わないけど……
「オークションのことを知っている人なんかはとりあえず高そうなものはオークションに申し込んでたりもするよ?受付で即却下の場合も多いけどね」
「へー」
結構厳しい審査があるらしい。やっぱ、一定のラインがあるみたい。
「ファルシュ草の株は持って来ましたけど……ポーションもいるんですか?」
「うーん、流石にブラッドベアの素材はないよね?」
「ないですねー。素材は手に入ったらすぐ売っちゃうし……」
「そっかー……なんか出せそうなのない?」
相当困っているみたい……うーん
「宝珠の花を使ったポーションなら1本ありますけど……」
「本当にっ?」
サブマスの目がギラッと光った気がするけど、言ってしまったから撤回するわけにもいかない。
「……はい」
「それも出品してもらっていいかな?」
「わかりました」
ストレージからファルシュ草の株と宝珠のポーションを出し、サブマスに渡す。
「じゃあ、これがオークションのために預かりましたっていう預かり証ね。なくすと落札のお金がもらえなくなることもあるから気をつけてね」
「はい……そうだ。ポーションもできた分だけ持って来たんですけど……」
「あ、ついでに公認ポーションも出品していい?目玉は宝珠のポーションとファルシュ草の株になるけど、エナくんのポーションは美味しいから絶対話題になると思うんだ」
「え、あんまり目立ちたくないんですけど……」
「うーん、それはもう手遅れじゃないかな?エナくん影で公認さんって呼ばれてるんだよ」
公認さん……まじか。
「大丈夫!変な輩は私とマルガスでどうにかしてあげるから!なんならギルマスも巻き込んでもいいし……」
「……ちなみに拒否権は?」
「うーん……宝珠のポーション出した時点で同じだと思うんだけど……だって公認職人の宝珠のポーションって出品されるんだから誰が作ったかなんて調べればすぐにわかっちゃうでしょ」
「え、返して……」
くれるわけないですよねー……
「うん、だから諦めて出品してね」
「わかりましたよ……ポーションは初級でいいですか」
「できれば中級もほしいなー」
半ばヤケになりながらサブマスにポーションを引き渡した。
「とりあえず、それぞれ5本ずつ出品させてもらうね。あとはいつも通り買い取らせてもらうから安心してね」
「はぁ……」
さっきの預かり証をサブマスに渡すとポーションについてを書き足して返してくれた。
「いやー、エナくんのおかげで助かったよー!目玉がなかったらギルマスをどこかの魔物討伐に送り込んで素材ゲットしなきゃいけなかったからさぁー」
「オヤクニタテタヨウデ……」
満面の笑みのサブマスを前に苦笑いしかできない。あれ?ギルマスってサブマスより偉いんじゃなかったっけ?ここのサブマスが特別なんだと信じたい。
「オークションが終わったら声かけさせてもらうね……手続きとか諸々あるからお金は結構先になっちゃうけど……」
「わかりました」
サブマス曰く、売り上げ金はひと月からふた月ほどかかるらしいので結果は気長に待つとしよう。はぁ……疲れた。
あなたにおすすめの小説
ダンジョンでオーブを拾って『』を手に入れた。代償は体で払います
とみっしぇる
ファンタジー
スキルなし、魔力なし、1000人に1人の劣等人。
食っていくのがギリギリの冒険者ユリナは同じ境遇の友達3人と、先輩冒険者ジュリアから率のいい仕事に誘われる。それが罠と気づいたときには、絶対絶命のピンチに陥っていた。
もうあとがない。そのとき起死回生のスキルオーブを手に入れたはずなのにオーブは無反応。『』の中には何が入るのだ。
ギリギリの状況でユリアは瀕死の仲間のために叫ぶ。
ユリナはスキルを手に入れ、ささやかな幸せを手に入れられるのだろうか。
1000年ぶりに目覚めた「永久の魔女」が最強すぎるので、現代魔術じゃ話にもならない件について
水定ゆう
ファンタジー
【火曜、木曜、土曜、に投稿中!】
千年前に起こった大戦を鎮めたのは、最強と恐れられ畏怖された「魔女」を冠する魔法使いだった。
月日は流れ千年後。「永久の魔女」の二つ名を持つ最強の魔法使いトキワ・ルカはふとしたことで眠ってしまいようやく目が覚める。
気がつくとそこは魔力の濃度が下がり魔法がおとぎ話と呼ばれるまでに落ちた世界だった。
代わりに魔術が存在している中、ルカは魔術師になるためアルカード魔術学校に転入する。
けれど最強の魔女は、有り余る力を隠しながらも周囲に存在をアピールしてしまい……
最強の魔法使い「魔女」の名を冠するトキワ・ルカは、現代の魔術師たちを軽く凌駕し、さまざまな問題に現代の魔術師たちと巻き込まれていくのだった。
※こちらの作品は小説家になろうやカクヨムでも投稿しています。
スナイパー令嬢戦記〜お母様からもらった"ボルトアクションライフル"が普通のマスケットの倍以上の射程があるんですけど〜
シャチ
ファンタジー
タリム復興期を読んでいただくと、なんでミリアのお母さんがぶっ飛んでいるのかがわかります。
アルミナ王国とディクトシス帝国の間では、たびたび戦争が起こる。
前回の戦争ではオリーブオイルの栽培地を欲した帝国がアルミナ王国へと戦争を仕掛けた。
一時はアルミナ王国の一部地域を掌握した帝国であったが、王国側のなりふり構わぬ反撃により戦線は膠着し、一部国境線未確定地域を残して停戦した。
そして20年あまりの時が過ぎた今、皇帝マーダ・マトモアの崩御による帝国の皇位継承権争いから、手柄を欲した時の第二皇子イビリ・ターオス・ディクトシスは軍勢を率いてアルミナ王国への宣戦布告を行った。
砂糖戦争と後に呼ばれるこの戦争において、両国に恐怖を植え付けた一人の令嬢がいる。
彼女の名はミリア・タリム
子爵令嬢である彼女に戦後ついた異名は「狙撃令嬢」
542人の帝国将兵を死傷させた狙撃の天才
そして戦中は、帝国からは死神と恐れられた存在。
このお話は、ミリア・タリムとそのお付きのメイド、ルーナの戦いの記録である。
他サイトに掲載したものと同じ内容となります。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく
タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。
最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。
スラム街の幼女、魔導書を拾う。
海夏世もみじ
ファンタジー
スラム街でたくましく生きている六歳の幼女エシラはある日、貴族のゴミ捨て場で一冊の本を拾う。その本は一人たりとも契約できた者はいない伝説の魔導書だったが、彼女はなぜか契約できてしまう。
それからというもの、様々なトラブルに巻き込まれいくうちにみるみる強くなり、スラム街から世界へと羽ばたいて行く。
これは、その魔導書で人々の忘れ物を取り戻してゆき、決して忘れない、忘れられない〝忘れじの魔女〟として生きるための物語。
ダンジョンをある日見つけた結果→世界最強になってしまった
仮実谷 望
ファンタジー
いつも遊び場にしていた山である日ダンジョンを見つけた。とりあえず入ってみるがそこは未知の場所で……モンスターや宝箱などお宝やワクワクが溢れている場所だった。
そんなところで過ごしているといつの間にかステータスが伸びて伸びていつの間にか世界最強になっていた!?
【完結】番としか子供が産まれない世界で
さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。
何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。
そんなニーナが番に出会うまで
4話完結
出会えたところで話は終わってます。