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第二夜 (7)
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「本当はどんな気持ちでいらっしゃるんですか」
「相手を目の前にして言うことではない」
「私の訴えではなく、貴方の訴えでアルフィー様を解放してあげたら良かったと思います」
「そうもいかないよ。国の護り女である君を初めて傷つけた罪を問われているんだ。張本人が訴えなければ、覆すことはできないだろう」
「そうでしょうか。貴方が本当に私と寝るのが嫌であれば、色々と頭が回ったはずです。例えば……昨夜アルフィー様は神聖魔法力が十分に発揮されたと仰られました。事を成し遂げられたはずです。それならば、安定して護りを固くしていく方が無難です。そうならないのは、周囲がフランシス様に、同等かそれ以上の期待を抱いているからではありませんか。最終的な決定権は、貴方にあったのでは……」
「はぁ……私としたことが気づかなかった」
私の頭を乗せている方とは違う方の腕で、目元を覆い隠す。
「親友の想い人と寝ることが……私の本意だとでも? 」
「そうなんじゃ……ないんですか」
体を横向きに寄せて、無防備になっている耳にそっと悪魔の言葉を囁く。大事な人、そして、大事な人の大事な人を傷つけたくないと、葛藤する人を堕とそうとしている。
私はいつから、こんな風になっちゃったんだろう。
ゆっくりと顔がこちらに向けられる。鼻と鼻がぶつかりそうになる。潤んだ瞳はゆらゆらと揺れている。迷っているのだ。
「久々に会うはずのクロエが、急に幻惑的になっていて驚いたのかも知れない」
「言い訳を探しても、もう遅いですよ。今からアルフィー様を連れて戻ろうとしても、明け方になってしまいます。私を愉しませるには、貴方の協力が必要です。そんなに少年のように駄々を捏ねていては、大人の情事になんて発展させられるのかしら」
実際に後先無いのは間違いなかった。両手で彼の顔を輪郭をこめかみから下になぞるようにしながら、唇同士を触れ合わせる。
やはりどこか、情愛というより、スキンシップの一貫のような。これがフランシス様の良さなのかも知れない。
「言っておくが、私の中には、アルフィーが想っている貴女を寝取ろうなんていう浅ましい気持ちは存在していない。ただ……」
「ただ……? ここには私しかいません。打ち明けてくれますか」
「……ただ、潔癖なまでに形式や順序を重んじてきた己の性格に嫌気が差していたんだ。どこかで打破できれば、と思っていた」
「そこに私との閨の話が飛び込んできたのですね」
「ああ、理性より先に体が動く感覚というものに憧れがある。もしかしたら、それが手に入るかもと思った。そうやって気分が高揚している時に、かねてより聞き及んでいた、アルフィーの想い人のことなんだと知ったんだ」
「抑圧しているその気持ちが、まだここにあるんですね」
喉元から胸元に向けて、人差し指を滑らせれば、止めてくれと饒舌なフランシス様の手指に包まれた。
「据え膳ですよ」
「先人は面白い事を言ったものだ。こういう私のような煮え切らない男を男にさせるつもりなのだな」
「相手を目の前にして言うことではない」
「私の訴えではなく、貴方の訴えでアルフィー様を解放してあげたら良かったと思います」
「そうもいかないよ。国の護り女である君を初めて傷つけた罪を問われているんだ。張本人が訴えなければ、覆すことはできないだろう」
「そうでしょうか。貴方が本当に私と寝るのが嫌であれば、色々と頭が回ったはずです。例えば……昨夜アルフィー様は神聖魔法力が十分に発揮されたと仰られました。事を成し遂げられたはずです。それならば、安定して護りを固くしていく方が無難です。そうならないのは、周囲がフランシス様に、同等かそれ以上の期待を抱いているからではありませんか。最終的な決定権は、貴方にあったのでは……」
「はぁ……私としたことが気づかなかった」
私の頭を乗せている方とは違う方の腕で、目元を覆い隠す。
「親友の想い人と寝ることが……私の本意だとでも? 」
「そうなんじゃ……ないんですか」
体を横向きに寄せて、無防備になっている耳にそっと悪魔の言葉を囁く。大事な人、そして、大事な人の大事な人を傷つけたくないと、葛藤する人を堕とそうとしている。
私はいつから、こんな風になっちゃったんだろう。
ゆっくりと顔がこちらに向けられる。鼻と鼻がぶつかりそうになる。潤んだ瞳はゆらゆらと揺れている。迷っているのだ。
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「言い訳を探しても、もう遅いですよ。今からアルフィー様を連れて戻ろうとしても、明け方になってしまいます。私を愉しませるには、貴方の協力が必要です。そんなに少年のように駄々を捏ねていては、大人の情事になんて発展させられるのかしら」
実際に後先無いのは間違いなかった。両手で彼の顔を輪郭をこめかみから下になぞるようにしながら、唇同士を触れ合わせる。
やはりどこか、情愛というより、スキンシップの一貫のような。これがフランシス様の良さなのかも知れない。
「言っておくが、私の中には、アルフィーが想っている貴女を寝取ろうなんていう浅ましい気持ちは存在していない。ただ……」
「ただ……? ここには私しかいません。打ち明けてくれますか」
「……ただ、潔癖なまでに形式や順序を重んじてきた己の性格に嫌気が差していたんだ。どこかで打破できれば、と思っていた」
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「抑圧しているその気持ちが、まだここにあるんですね」
喉元から胸元に向けて、人差し指を滑らせれば、止めてくれと饒舌なフランシス様の手指に包まれた。
「据え膳ですよ」
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