神嫌いの神様と一つ屋根の下

朔々

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信仰心の厚い相談者

13話

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のり状になるまで、よくってみて」

「の、のりじょう……」

「ペースト状ってことだよ、媛ちゃん」

「あら、私はペースト状が分からないわ。こういう時、逆に? って言うのかしら」

「ははは、合ってますよ」

 ペースト状か、まだまだすり潰す必要がありそう。

 璃三郎さんが手元だけでなく、私の姿を撮影している。

「私まで入っちゃったら、サイトに上げられませんよ」

「何言ってるの! 我が家に来てからの初のお料理記念として、記録するためだよ」

「あら、媛さんもお料理しないのね」

「いやいや、苑子さん。媛ちゃんがこの家に来たのは、昨日なんですよ」

「あらそうなの? すっかり二人は馴染んで見えるわ」

「私が料理をしないのは合ってますけどね」

 璃三郎さんも料理をしないとなれば、居候いそうろうの私がやるのがすじだろう。

「媛ちゃん、眉間に皺が寄ってるよ。あんまり深く考えなくて良いからね。媛ちゃんもデリバリーしようよ」

「でも、なかなか良い手つきだわ。きっとコツさえ覚えれば、媛さんもお料理できるようになるわ。私が教えてあげたいところだけど……ここに来た意味が無くなっちゃうわね」

 苑子さんは、苦虫を噛み潰したような表情を必死で笑顔に作り変えようとしていた。

「固まりを潰す時は、横に八の字を書くのよ。そうそう。きめ細かくしたくなったら、三つの輪を描いていくの。右上、左上、手前って。そう、上手だわ」

 二人に見守られる形でよもぎをすり潰す工程が進んでいく。ただだけにも関わらず、こんなにも気をつけなければいけないことがあるなんて。

「あらやだわ。見入っちゃって、お餅が粉のままだわ」

「時間が経てばお餅になるのかなぁと考え始めてました」

「いやぁねぇ、面白いわ」

 二人はふざけてきゃっきゃと騒いでいるが、なかなか疲れてきた。そこまで力のる作業ではないだろうけど、力の入れ方が悪いのか、肘下が強張こわばってきている。

「やっぱり、思った通り。媛ちゃんは真面目な頑張り屋さんなんだなぁ」

「そうねぇ。見てて気持ちがいいわ」

 二人が褒めてくれているのが聞こえてくるけれど、熱中していて聞こえていないふりをしてしまう。

 苑子さんまで! 璃三郎さんもずっと動画で撮ってるし! 

「一生懸命に作った分だけ、美味しいものが出来上がるわ。でもね、一生懸命は間違えちゃだめなの。その場その場で合った一生懸命をするのよ」

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