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野良猫聖女、はじめての。。
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♢ ♢ ♢
騎士に腕を掴まれ部屋を出されたアンナマリナ。
目には涙をいっぱいに溜め、言葉に詰まってもう何も言えなくて。
バタンと閉まる扉に、彼女の心はあきらめで占められた。
まだ、ちゃんと話をしていない。
まだ、ちゃんと話していない。
そんな気持ちも、上から落ちるように心を占めていく諦念に押し潰されていく。
生まれた時から一人だった。
気がつけば、野良猫と一緒に街で餌を求めて徘徊する日々。
馬小屋の隅っこに潜り込んで寝て。
起きたら仲間の猫と一緒に餌を探す。
時には人間の餌場を荒らし、捕まって殴られた。
仲間の猫が狩った鳥に一緒にかぶりついた記憶もある。
人間は怖い。近づくと水をかけられたりもする。
そんな感情だけが五歳までのアンナの記憶。
ある日。
罠にかかって人間に捕まった。
美味しそうな餌だと思って食い付いたら、バタンと閉まる檻。
ぎゃーっと吠えたけど、なんか変な匂いを嗅がされて、そのまま人間の場所に運ばれたらしい。
「お前、言葉はわかるかい?」
それが大司教レイモンドとの出会いだった。
裸で徘徊していた獣とも人ともつかぬ子供を保護したと、そんな報告を受けやってきたレイモンド。
どうやら女の子らしいと寝ている間に麻のキトンを着せ、ベッドに寝かせてあったその子の顔に自分の顔を近づけ、そう言葉をかけた彼。
パッと目を開けたアンナ。
初めて間近でみる人間。
今まで自分を害する怖い存在。
そう認識していたはずだったのに。
そのかけられた声があまりにも優しい響きに満ちて。
その近くに寄せられた顔が、あまりにも眩しい笑顔だったから。
怖いって思うよりも「これは何?」って好奇心の方が優った。
「オマエ?」
彼の言葉を、音をすこし真似てそう声に出して。
「私はレイモンド、だよ。君は?」
「レイ、モン……」
「レイモンド、だよ」
「レイ、モンド?」
「はは。よくできました」
そう笑って、頭をガシガシっと撫でてくれた大きな手が。なんだかとっても心地よく。
気がつくと、アンナは自らその手に頭を擦り付けていた。
嬉しかった。
初めて触れた他の人。
それが思いの外、温かくて。
心地よくて。涙が出た。
この時の幼いアンナ。五歳くらいの年齢だろうと想定された彼女。
まだ、人の言葉も知らない野生の子だった彼女が、初めて知った人の温もりだった。
それがあまりにも心に沁みて。
アンナはその差し出された手を離したくない。そう渇望した。
ああこれは自分のものだ。そう思ってしまったのだった。
アンナマリナ。
その名前をつけてくれたのもレイモンドだった。
なんとか少し人の言葉がわかるようになった頃、レイモンドは彼女に聖女という称号を与えマギカアカメディアに放り込んだ。
大勢の人との触れ合いが彼女の情緒を育てるとそう信じたのもあった。
しかしそれよりも、レイモンドはアンナの才能を認めていた。
彼女の加護は、神に与えられた本物の聖女の加護であると、
それを伸ばす機会を与えることがアンナにとって一番大切なことだから、と。
そう確信していたから。
騎士に腕を掴まれ部屋を出されたアンナマリナ。
目には涙をいっぱいに溜め、言葉に詰まってもう何も言えなくて。
バタンと閉まる扉に、彼女の心はあきらめで占められた。
まだ、ちゃんと話をしていない。
まだ、ちゃんと話していない。
そんな気持ちも、上から落ちるように心を占めていく諦念に押し潰されていく。
生まれた時から一人だった。
気がつけば、野良猫と一緒に街で餌を求めて徘徊する日々。
馬小屋の隅っこに潜り込んで寝て。
起きたら仲間の猫と一緒に餌を探す。
時には人間の餌場を荒らし、捕まって殴られた。
仲間の猫が狩った鳥に一緒にかぶりついた記憶もある。
人間は怖い。近づくと水をかけられたりもする。
そんな感情だけが五歳までのアンナの記憶。
ある日。
罠にかかって人間に捕まった。
美味しそうな餌だと思って食い付いたら、バタンと閉まる檻。
ぎゃーっと吠えたけど、なんか変な匂いを嗅がされて、そのまま人間の場所に運ばれたらしい。
「お前、言葉はわかるかい?」
それが大司教レイモンドとの出会いだった。
裸で徘徊していた獣とも人ともつかぬ子供を保護したと、そんな報告を受けやってきたレイモンド。
どうやら女の子らしいと寝ている間に麻のキトンを着せ、ベッドに寝かせてあったその子の顔に自分の顔を近づけ、そう言葉をかけた彼。
パッと目を開けたアンナ。
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今まで自分を害する怖い存在。
そう認識していたはずだったのに。
そのかけられた声があまりにも優しい響きに満ちて。
その近くに寄せられた顔が、あまりにも眩しい笑顔だったから。
怖いって思うよりも「これは何?」って好奇心の方が優った。
「オマエ?」
彼の言葉を、音をすこし真似てそう声に出して。
「私はレイモンド、だよ。君は?」
「レイ、モン……」
「レイモンド、だよ」
「レイ、モンド?」
「はは。よくできました」
そう笑って、頭をガシガシっと撫でてくれた大きな手が。なんだかとっても心地よく。
気がつくと、アンナは自らその手に頭を擦り付けていた。
嬉しかった。
初めて触れた他の人。
それが思いの外、温かくて。
心地よくて。涙が出た。
この時の幼いアンナ。五歳くらいの年齢だろうと想定された彼女。
まだ、人の言葉も知らない野生の子だった彼女が、初めて知った人の温もりだった。
それがあまりにも心に沁みて。
アンナはその差し出された手を離したくない。そう渇望した。
ああこれは自分のものだ。そう思ってしまったのだった。
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しかしそれよりも、レイモンドはアンナの才能を認めていた。
彼女の加護は、神に与えられた本物の聖女の加護であると、
それを伸ばす機会を与えることがアンナにとって一番大切なことだから、と。
そう確信していたから。
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