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野良猫聖女、刷り込み。
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♢
刷り込み、かもしれない。
勘違い、だったかもしれない。
でも、レイモンドの手を欲して。
離したくないと思った幼い時の気持ちは、間違いじゃない。
「捨てられたのかと、そうおもってました……」
突然連絡が取れなくなったレイモンド様。アカメディアに入った後も最初のうちは、「休みには教会に行けばレイモンドさまに会える」と、それ楽しみにすごしていたけれど、ある日突然「もうここにはレイモンド様は帰らない」そう聞かされた時の絶望感。
それが悲しくて、耐えられなくて、数日間泣き続けた。
「ああ。本当にすまなかった」
「ううん、でもどうして? どうしてここにいるんですか?」
「ここの空気が他と違った、からかなぁ」
「え?」
「すぐわかったよ。この清浄な空気。気配に。ちょうどこの林だけが浄化された空気に包まれているから」
「ああ……」
「君の加護の権能、清浄は常時顕現しているからね。何もしないでも君の周りは常に浄化され続けているから」
ぱぁっと一瞬破顔し、そしてすぐにまた目を伏せるアンナ。
「でも、ギディオン様には『何もしていない』と言われてしまいました……」
「何もしていない、か。やつは君が居ないアカメディアを知らないからな」
ギディオンとアンナは同い年であったから、たしかに彼はアンナの居ないアカメディアを知るよしもなかった、けれど。
レイモンドは自分が在籍していた頃のアカメディアを思い出して。
「昔はね、あそこは魔溜まりが発生しては魔獣が生成され大騒ぎになる、なんてことがしょっちゅうだったんだけどな。まあそれらを退治することがアカメディアの学生の実践修行にもなっていたんだけれどね」
「はう。じゃぁあたし、修行の邪魔をしていたのですか?」
「はは。君がそんなことを気にする必要はないよ。修行なら何処でもできるからね。それよりも君の能力を高める方が世の中の為になるだろう?」
「だって、あたし、ギディオンさまに怒られてばかりで……」
マギカアカメディア。
この国の魔法研究の最先端であり、個々の能力を開花させるための学習施設でもあるそこ。
そんなアカメディアで過ごした日々を思い出しながら、アンナはシュンと俯いた。
「人と話すのはまだ苦手かい? アンナ」
レイモンドは右手のひらをぽんっとあんなの頭に乗せ。
もう幼い子供じゃないのだから、と思い返して優しく撫でるように髪をすく。
そのまま、彼女の頬に溜まった涙を拭い、顎に手をあて俯いた顔をくいっとこちらにむけた。
「レイモンド、さま……」
こちらを見上げるアンナの瞳。
少し潤んで、それでも驚愕、恥じらいに揺らいで。
可愛らしいその蕾のような唇が、赤く染まる。
「一緒にくるかい? それとも、アカメディアに帰りたい?」
「アカメディアには……もう無理です。それよりも、あたし、レイモンドさまについて行ってもいいんですか?」
「ああ、これからはずっと一緒だ」
アンナの瞳からまた大粒の涙が溢れ出る。
悲しい涙じゃない。これは嬉しい涙だから。
そう言いたくて、でも声を出すこともできなくて。
アンナはそのままレイモンドの胸に縋りついた。
刷り込み、かもしれない。
勘違い、だったかもしれない。
でも、レイモンドの手を欲して。
離したくないと思った幼い時の気持ちは、間違いじゃない。
「捨てられたのかと、そうおもってました……」
突然連絡が取れなくなったレイモンド様。アカメディアに入った後も最初のうちは、「休みには教会に行けばレイモンドさまに会える」と、それ楽しみにすごしていたけれど、ある日突然「もうここにはレイモンド様は帰らない」そう聞かされた時の絶望感。
それが悲しくて、耐えられなくて、数日間泣き続けた。
「ああ。本当にすまなかった」
「ううん、でもどうして? どうしてここにいるんですか?」
「ここの空気が他と違った、からかなぁ」
「え?」
「すぐわかったよ。この清浄な空気。気配に。ちょうどこの林だけが浄化された空気に包まれているから」
「ああ……」
「君の加護の権能、清浄は常時顕現しているからね。何もしないでも君の周りは常に浄化され続けているから」
ぱぁっと一瞬破顔し、そしてすぐにまた目を伏せるアンナ。
「でも、ギディオン様には『何もしていない』と言われてしまいました……」
「何もしていない、か。やつは君が居ないアカメディアを知らないからな」
ギディオンとアンナは同い年であったから、たしかに彼はアンナの居ないアカメディアを知るよしもなかった、けれど。
レイモンドは自分が在籍していた頃のアカメディアを思い出して。
「昔はね、あそこは魔溜まりが発生しては魔獣が生成され大騒ぎになる、なんてことがしょっちゅうだったんだけどな。まあそれらを退治することがアカメディアの学生の実践修行にもなっていたんだけれどね」
「はう。じゃぁあたし、修行の邪魔をしていたのですか?」
「はは。君がそんなことを気にする必要はないよ。修行なら何処でもできるからね。それよりも君の能力を高める方が世の中の為になるだろう?」
「だって、あたし、ギディオンさまに怒られてばかりで……」
マギカアカメディア。
この国の魔法研究の最先端であり、個々の能力を開花させるための学習施設でもあるそこ。
そんなアカメディアで過ごした日々を思い出しながら、アンナはシュンと俯いた。
「人と話すのはまだ苦手かい? アンナ」
レイモンドは右手のひらをぽんっとあんなの頭に乗せ。
もう幼い子供じゃないのだから、と思い返して優しく撫でるように髪をすく。
そのまま、彼女の頬に溜まった涙を拭い、顎に手をあて俯いた顔をくいっとこちらにむけた。
「レイモンド、さま……」
こちらを見上げるアンナの瞳。
少し潤んで、それでも驚愕、恥じらいに揺らいで。
可愛らしいその蕾のような唇が、赤く染まる。
「一緒にくるかい? それとも、アカメディアに帰りたい?」
「アカメディアには……もう無理です。それよりも、あたし、レイモンドさまについて行ってもいいんですか?」
「ああ、これからはずっと一緒だ」
アンナの瞳からまた大粒の涙が溢れ出る。
悲しい涙じゃない。これは嬉しい涙だから。
そう言いたくて、でも声を出すこともできなくて。
アンナはそのままレイモンドの胸に縋りついた。
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