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聖女追放。
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「わたくしはここに宣言いたします。神の名の下に、このマリアンヌ・フェルミナスに与えられていた聖女の称号を剥奪することを」
世界の人口の半数が帰依するというパプキマス正教会。その本山であるここセントパブリック大聖堂の中央ホールにて。
煌びやかなステンドグラスの光が煌々と降り注ぐそんな聖なる場所の中央祭壇において、白銀の聖衣に包まれた今代の大教皇、シルビアン・マクレーはそう高らかに声を張り上げた。
右手には帝国政府の高官、お歴々が並び、左手には正教会幹部らが居並ぶ中。
壇上から見下ろすシルビアン大教皇の視線の先には一人の少女が蹲っていた。
両手を後ろ手に、七色の数珠で縛り上げられ。
目をも隠されまるで罪人のように蹲るその少女に、大教皇はなおも続けた。
「先代の教皇は大変な過ちを犯しました」
神に祈るよう両手を天に掲げ、そう懺悔の姿勢をとる教皇。
「彼女を聖女などと、どのような根拠があったのかは未だ明らかにはされておりませぬが、一度でもそう認定してしまったことはこのパプキマス正教会史上最大の過ちと言えましょう」
荘厳なパイプオルガンの音色があたりを包む。
「何か申し開きすることはあるか、マリアンヌ・フェルミナス」
彼女を一瞥しそう声をかけたシルビアン大教皇は、再びその顔をあげ周囲を見回した。
「何もない、か。恐れ多くも聖女の名を騙り人民を謀った罪は重い。しかし、そなたもまた先代の教皇による犠牲者であるのであれば、神も恩情をお与えになるであろう」
何も答えず蹲る少女に、大教皇はそうゆっくりと声をかける。
「貴族位の剥奪、そしてこの聖都よりの追放を」
帝国政府の重鎮よりそう声が上がった。
☆☆☆☆
茶番だわ。
マリアンヌはそう心の中でため息をついた。
わけもわからないうちに拉致されたと思ったら喉を潰す薬液を飲まされ、魔力封じの数珠で手首を縛られた彼女。
確かに。
自分を聖女だなどと祭り上げる正教会にもうんざりしていたけれど、都合が悪くなったらこうして剥奪、とか。
馬鹿じゃないの?
そう思う。
こうして皆の前に引き摺り出され辱めを受け。
そのことには腹を立てているけれどまあ。
お父様もお母様もそしてクラウディアお姉様もわたくしを庇っては下さらなかった。
それが悲しかった。
というか、もしかしなくてもわたくしを邪魔に思ったのはクラウディアお姉様も、だろうか?
そう考えると納得がいった。
フェルミナス公爵家の次女として生まれたマリアンヌ。
幼い頃よりその魔力量の多さゆえ、これは今代の聖女の誕生か、などと囃し立てられ。
7歳の時には正教会より正式に聖女の称号を賜ったのだったが。
魔王不在の今世、世界は平和に包まれていた。
いや、ぬるま湯に浸っていた、といった方が正解か。
人々は色恋欲望に明け暮れ只々変わらぬ日常を快楽のままに過ごし。
民草は酒や娯楽に溺れ、貴族は権力抗争に酔いしれた。
「お前は聖女失格だ! 魔力量は多いが聖女として何もしていないではないか! そんなお飾りの名ばかりの聖女はこの国には必要ない!!」
拉致されたあの夜、聞こえたあの声は間違いなく婚約者であったはずの皇太子、ジークのものであった。
その非凡な才能と魔力量に、明らかに嫉妬と敵意を向けていた皇太子ジーク。
聖女であるから?
それがなんだっていうのだろう。
羨望と嫉妬、そんなものしか自分には向けられなかった。
聖女位の剥奪、上等だ。
もともとそんな位、名称、欲しかったわけじゃない。
真実がどうこう、ではなく、そんな聖女だなんて呼ばれ方をされたかったわけじゃないのだもの。
☆☆☆
世界の人口の半数が帰依するというパプキマス正教会。その本山であるここセントパブリック大聖堂の中央ホールにて。
煌びやかなステンドグラスの光が煌々と降り注ぐそんな聖なる場所の中央祭壇において、白銀の聖衣に包まれた今代の大教皇、シルビアン・マクレーはそう高らかに声を張り上げた。
右手には帝国政府の高官、お歴々が並び、左手には正教会幹部らが居並ぶ中。
壇上から見下ろすシルビアン大教皇の視線の先には一人の少女が蹲っていた。
両手を後ろ手に、七色の数珠で縛り上げられ。
目をも隠されまるで罪人のように蹲るその少女に、大教皇はなおも続けた。
「先代の教皇は大変な過ちを犯しました」
神に祈るよう両手を天に掲げ、そう懺悔の姿勢をとる教皇。
「彼女を聖女などと、どのような根拠があったのかは未だ明らかにはされておりませぬが、一度でもそう認定してしまったことはこのパプキマス正教会史上最大の過ちと言えましょう」
荘厳なパイプオルガンの音色があたりを包む。
「何か申し開きすることはあるか、マリアンヌ・フェルミナス」
彼女を一瞥しそう声をかけたシルビアン大教皇は、再びその顔をあげ周囲を見回した。
「何もない、か。恐れ多くも聖女の名を騙り人民を謀った罪は重い。しかし、そなたもまた先代の教皇による犠牲者であるのであれば、神も恩情をお与えになるであろう」
何も答えず蹲る少女に、大教皇はそうゆっくりと声をかける。
「貴族位の剥奪、そしてこの聖都よりの追放を」
帝国政府の重鎮よりそう声が上がった。
☆☆☆☆
茶番だわ。
マリアンヌはそう心の中でため息をついた。
わけもわからないうちに拉致されたと思ったら喉を潰す薬液を飲まされ、魔力封じの数珠で手首を縛られた彼女。
確かに。
自分を聖女だなどと祭り上げる正教会にもうんざりしていたけれど、都合が悪くなったらこうして剥奪、とか。
馬鹿じゃないの?
そう思う。
こうして皆の前に引き摺り出され辱めを受け。
そのことには腹を立てているけれどまあ。
お父様もお母様もそしてクラウディアお姉様もわたくしを庇っては下さらなかった。
それが悲しかった。
というか、もしかしなくてもわたくしを邪魔に思ったのはクラウディアお姉様も、だろうか?
そう考えると納得がいった。
フェルミナス公爵家の次女として生まれたマリアンヌ。
幼い頃よりその魔力量の多さゆえ、これは今代の聖女の誕生か、などと囃し立てられ。
7歳の時には正教会より正式に聖女の称号を賜ったのだったが。
魔王不在の今世、世界は平和に包まれていた。
いや、ぬるま湯に浸っていた、といった方が正解か。
人々は色恋欲望に明け暮れ只々変わらぬ日常を快楽のままに過ごし。
民草は酒や娯楽に溺れ、貴族は権力抗争に酔いしれた。
「お前は聖女失格だ! 魔力量は多いが聖女として何もしていないではないか! そんなお飾りの名ばかりの聖女はこの国には必要ない!!」
拉致されたあの夜、聞こえたあの声は間違いなく婚約者であったはずの皇太子、ジークのものであった。
その非凡な才能と魔力量に、明らかに嫉妬と敵意を向けていた皇太子ジーク。
聖女であるから?
それがなんだっていうのだろう。
羨望と嫉妬、そんなものしか自分には向けられなかった。
聖女位の剥奪、上等だ。
もともとそんな位、名称、欲しかったわけじゃない。
真実がどうこう、ではなく、そんな聖女だなんて呼ばれ方をされたかったわけじゃないのだもの。
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