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しあわせ。
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「ダメです!」
間髪入れずそう断られた。
え? どうしてよ。あたしついて行った方が安全なのに!
ちょっと膨れっ面になったあたしにすかさず、
「お気持ちは嬉しいですよ? でも、まだ生まれたばっかりの赤ん坊の貴女を連れて行ったりしたら、今のご両親に顔向けができません。いくら中身は最強だと言っても流石にそれは人としてだめでしょう?」
あうあう。
そっか。そういうものか。
ほんと人間ってめんどくさい。
「大丈夫だから」
「そんな筈はないでしょう? 今夜ここに来ているのだってどうやって抜け出してきてるのかって不安に思ってるのに。まさか孤児のわけもないでしょうしね?」
「うー」
「ふくれてもだめですよ? さぁ。紅茶ももう冷めた頃です。それを飲んだら帰りましょうね?」
うう。もう完全にあたしが年下みたいに扱われてる。
まあほんとまだ生まれて半年なのは間違い無いんだけどさ。
ぺろっとカップに入った紅茶を舐めてみたら、もう充分冷めてぬるくなってる。これなら大丈夫かなぁ。
あたしはごくごくっと飲み干して。うん。美味しい。ああ、なんだか身体がポカポカしてくる。
「ほんと、これ、おいしい。からだ、ぽかぽか……」
ああ。なんだかぽかぽかふわふわする……。
☆☆☆
目の前にいるラギレス。ハルカねえさん。本物だ。もう離したくない。
そうノワは感慨深く眺めていた。
この十年間。忘れたことはひと時たりともなかった。
半年前に結界が亡くなった時。バーン様が取り乱しとるものもとりあえず出立してしまった時も、自分も追いかけて行きたかった。
しかし。
自分が今この王都を何の理由も無く離れるわけにもいかず。
彼女がもし無事であれば自分のところに現れるかもしれない。そうも思えて。
歯痒い気持ちを抑え、我慢していた。
窓の外に懐かしい魔力紋を感じた時は、もう飛び上がって抱きつきたくなるのを抑え。
そして。
あの時からぜんぜん変わっていない彼女。いや、少し幼くなった? そんな彼女に触れる事ができたことを喜んだのだ。
しかし。
だからといって。
「あたし、付いてく! こっそり連れてって!」
そう言い放つ彼女をそのまま連れて行くわけにもいかない。
彼女の弁が本当なら、今のご両親に顔向けができない。
そう思ったのだが……。
渡した紅茶に垂らしたブランデーはほんの数滴。
まさかそれで酔ってしまうとは思わなかった。
くてっと倒れそうになった彼女を抱き上げベッドに運ぶ。
軽いな……。
そう。彼女はまだこんなに軽いのだ。
それなのに。
この世界の命運をこんな彼女一人に背負わせるわけにはいかない。
だから。
今度は僕が。
絶対に護る。
護って見せるのだ。
そう思って。
かわいい寝息を立てる彼女をしばらく眺めて、幸福に浸って。
そして。
彼女から金色の粒子が湧き出たかと思うと。
そこにはクリーム色の猫がいた。
間髪入れずそう断られた。
え? どうしてよ。あたしついて行った方が安全なのに!
ちょっと膨れっ面になったあたしにすかさず、
「お気持ちは嬉しいですよ? でも、まだ生まれたばっかりの赤ん坊の貴女を連れて行ったりしたら、今のご両親に顔向けができません。いくら中身は最強だと言っても流石にそれは人としてだめでしょう?」
あうあう。
そっか。そういうものか。
ほんと人間ってめんどくさい。
「大丈夫だから」
「そんな筈はないでしょう? 今夜ここに来ているのだってどうやって抜け出してきてるのかって不安に思ってるのに。まさか孤児のわけもないでしょうしね?」
「うー」
「ふくれてもだめですよ? さぁ。紅茶ももう冷めた頃です。それを飲んだら帰りましょうね?」
うう。もう完全にあたしが年下みたいに扱われてる。
まあほんとまだ生まれて半年なのは間違い無いんだけどさ。
ぺろっとカップに入った紅茶を舐めてみたら、もう充分冷めてぬるくなってる。これなら大丈夫かなぁ。
あたしはごくごくっと飲み干して。うん。美味しい。ああ、なんだか身体がポカポカしてくる。
「ほんと、これ、おいしい。からだ、ぽかぽか……」
ああ。なんだかぽかぽかふわふわする……。
☆☆☆
目の前にいるラギレス。ハルカねえさん。本物だ。もう離したくない。
そうノワは感慨深く眺めていた。
この十年間。忘れたことはひと時たりともなかった。
半年前に結界が亡くなった時。バーン様が取り乱しとるものもとりあえず出立してしまった時も、自分も追いかけて行きたかった。
しかし。
自分が今この王都を何の理由も無く離れるわけにもいかず。
彼女がもし無事であれば自分のところに現れるかもしれない。そうも思えて。
歯痒い気持ちを抑え、我慢していた。
窓の外に懐かしい魔力紋を感じた時は、もう飛び上がって抱きつきたくなるのを抑え。
そして。
あの時からぜんぜん変わっていない彼女。いや、少し幼くなった? そんな彼女に触れる事ができたことを喜んだのだ。
しかし。
だからといって。
「あたし、付いてく! こっそり連れてって!」
そう言い放つ彼女をそのまま連れて行くわけにもいかない。
彼女の弁が本当なら、今のご両親に顔向けができない。
そう思ったのだが……。
渡した紅茶に垂らしたブランデーはほんの数滴。
まさかそれで酔ってしまうとは思わなかった。
くてっと倒れそうになった彼女を抱き上げベッドに運ぶ。
軽いな……。
そう。彼女はまだこんなに軽いのだ。
それなのに。
この世界の命運をこんな彼女一人に背負わせるわけにはいかない。
だから。
今度は僕が。
絶対に護る。
護って見せるのだ。
そう思って。
かわいい寝息を立てる彼女をしばらく眺めて、幸福に浸って。
そして。
彼女から金色の粒子が湧き出たかと思うと。
そこにはクリーム色の猫がいた。
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