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前前前世。

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 生きるのですアリシア。あなただけでも……。

 あたたかい。母親のイメージ。心の中まで包まれるようなそんな気分になって。でもなぜか悲しい、涙がじわって、止めようとしても出てきてしまう。動揺。諦め。睡魔。

 これは、いつもの夢だ。

 夢の中で夢だと感じてる。

 記憶には無いけれど、いつもみている夢だという事だけはわかるのだ。

 あたしが江藤遥香って名前のごくごく平凡な日本人だった前前世。

 いつも見ていたはずの夢。



 当時。

 夢と現実の狭間のそんなゆったりとした時の流れの中で。あたしはこれを夢だと認識して。

 なにかの映画のワンシーンのようであったのだけど、あたしには心当たりがなくて。もどかしかった。

 だいたいアリシアって誰のこと? 夢の中であたしのことそうよんでる人がいて、あたしも自分のことをそう自覚してるみたいで。
 でも、あたしには江藤遥香っていうれっきとした名前があったし。

 アリシアなんて知らない。記憶にはない。

 でも。どういうわけかこのアリシアっていう名前には、あたしの心に引っ掛かる何か、があるのは事実で。

 それが何かっていうことはぜんぜん判らないのだけど、なぜか耳障りのいい、懐かしいような、そんな名前なのだった。


 今になってそんな夢をもう一度観てるの?

 夢の中でそう考えてる。

 はざまの世界ではきっと、夢と現実が溶け合ってるから。

 きっと。



 まさか。

 前前前世?

 そんな記憶?



 まさか、ね。






 ぼんやりと夢から醒めて。

 うきゅうと伸びをする。

 あたし、いつの間に寝たんだろう?

 そんな事も考えて。


 目の前に人?

 お布団の中でもふもふに丸くなって寝てたみたいなんだけど。

 ここ、どこ?

 おっきな手が目の前にある。

 ぺろっと舐めてみるけど。

 うん。これ、知らない味?

 え?

 誰……?

 いつものレイアのベッドじゃない。

 お布団重いし。

 うきゅ。っと、お布団から這い出てみると。


 えーーー?

 ノワール?

 あたし、いま、ねこ、だよ、ね……?

 あうあう。

 目の前のノワ、こちらに気がついた?

「おはようミーシャ。まさかねえさんが猫に転生してるとは思いませんでしたけど。でも、その姿もかわいいですよ」

 そう言ってノワ、あたしの頭をふしゃふしゃって撫でた。

 にゃぁぁ。

 あたしはそう声をあげたのだった。
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