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門扉の碑《いしぶみ》。

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「マジカ・イア・アウラ・エスト!」

 目の前にある魔界の門。

 豪奢な飾りがついたその門扉は、日本のアニメにあったスーパーロボットでさえ通り抜け出来るのでは無いかというほどの高さ。

 あたしはその手前にある灯籠の様な石造りの碑《いしぶみ》にくっついている丸い巨大な宝石、設置型転移魔ギアを自身の聖杖でコツンと叩き、そしてそこに書かれている古代語の碑文を読み上げる。


 まあ、この設置型魔ギアであっても起動するにはそれなりの魔力が必要で。

 あたしの中からけっこうなマナがこの宝石に流れたのがわかった。



「開いた、ね。ここからは僕が先頭を歩くから。ねえさんは後ろでマナを回復させておいて」

 そういうノワ。

 ふふ。

 前の時はまだ小さかったから。ね。

 いくら神に選ばれた勇者だとしても、そう簡単にあたしの前を歩かせるわけにはいかなかった。

 そういうことはあたしより強くなってから言うのよ、なんて言ってはあたしが護るように前に出てた。

 でも。

 うん。

 ノワ、強くなったな。

 あたしよりは、なんてことさえ考えなければ、たぶん現時点ではこの世界で一番強い人間だろう。

 それでも、ね。

 あなたがもし危なくなったら。

 あなたにもし危険が迫ったら。

 あたしはその全霊をかけてあなたを護るよ。

 あは。

 大好きな、ノワール。

 あなただけは絶対に。




 ☆☆☆


 大きな、とてつもなく大きなその門扉が開き。

 そこを通り過ぎたとき、ギイっと閉まった扉の向こうで水の音がした。

 この扉が振動して聞こえてくるのか?

 前の時もそうだったけれど、向こう側はまた湖の底に沈んだのだろう。

 こちら側にある石碑を使えば帰ることはできるのだろうけど、はたして僕の魔力で開くのかどうか。

 それもねえさんがついてきてくれたおかげで解決するのだとしたら、情けない。



 この薄暗いトンネルを抜けると魔王城。

 あの時は結局突入しようとした僕らの前に現れた魔王とそのまま外で対決することになったから、僕はまだあの城の中に入った事は無かった。

 今度、こそ、は。


 ねえさんにも僕がどれだけ成長したのか、見てもらおう。

 そして。

 ねえさん、ハルカは絶対に僕が護る。

 僕の全てをかけて。ハルカを絶対に護る!


 そう決意を新たにしたのだった。
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