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【価値】
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王家のスペアでもある筆頭公爵家の、それも長子として生まれたアリシア。
幼少の折に母が逝った後、まさか父が自分と一年も歳が違わない妹を連れてくるとは思ってもみなかった。
それでも。
五歳の神参りのおりの魔力測定で、ありえないほどの高い数値を叩き出したアリシア。
父は、そんなアリシアの利用価値を認め、教会の聖女職にと彼女を売ったのだ。
政略結婚であった父と母。そんな母の娘である自分と比べ愛した人の娘であるマリサ。
父にとってどちらが大切な存在であるのか、そんなことは幼い自分にも理解ができた。
だからこそ、利用価値があると思われたくて聖女の修行にも力を入れていたのだというのに。
全てのきっかけは、そう。
アリシアがルイス殿下の婚約者に選ばれたことだったろうか。
眩いばかりのプラチナブロンド。すっと通った鼻筋に、若い女性であれば誰もが魅了されるその切長の碧い瞳。幼いうちからそんな天使のような容姿とその身のこなしの良さで、多くの令嬢が虜になっていたそんなルイスとの婚約。
きっと、国王直々の指名でさえなければ、アリシアにそんな地位が回ってくるだなんてことはなかったのだろう。
「アリシアなんか王子の婚約者にはふさわしくないわ。どうしてお父様。どうしてわたくしじゃ、ないの?」
アリシアのことを姉だなんて思ってもいないということが丸わかりな、そんなマリサ。
今までだったらなんでも父が叶えてくれていただろうに。今回だけはそうはいかなかったことに癇癪を起こしてそう父に追い縋る。
「お前の婚約者はクリストだと言ったろう? バッケンバウワー公爵家の次男の彼なら家格も申し分ない。クリストと結婚しこのブランドー公爵家を守っていくのだと、ついこの間まではそれで満足していたではないか」
「だって。わたくしがアリシアよりも下の地位になるなんて、そんなこと許せるわけはないじゃない。そうでしょう? お父様だってそう思われるんじゃない?」
「それはそうだがな。しかしこれは国王陛下直々のご指名なのだ。聖女である女性が王太子の妃にと。夢枕にそう神のお告げがあったそうなのだよ」
「だからって、どうしてそれがアリシアなのよ! 聖女なら他にもいるでしょう?」
「それがな。どこの家も普通は聖女宮直属の聖女職ならともかく所属の教会に娘を差し出したりなどしない。あそこに現在在籍している聖女の中ではアリシアが一番家格が上だった、と、それだけの理由だが」
「そんなの! どうせアリシアなんか、王子に嫌われて捨てられるんだから!」
「そう、だな。あれが王子の妃として勤めを果たせるとも思えぬ。それならそれで構わぬが。王家からも慰謝料を頂けばいいだけのこと」
「まあそうね。役に立つうちはせいぜい役に立って貰えばいいわね」
「そういうことだ。あれにはまだ価値がある。捨てるには惜しいよ」
大声で話す二人の声は、アリシアにも聞こえていた。
それでも、いいと。
この時は本気でそう思っていた。
——本当は愛したい。愛されたい。だけれど。
自分に利用価値があるうちは、彼らに捨てられることもない。
愛されない、そうわかってはいたけれど、それでも必要とされるのであればそれでいい。
王子の前でもそれは同じで。
彼が自分のことを気に入っていないことは、最初からわかっていた。
だけど。
愛がなくてもいい。
婚姻が、ゆっくりと二人の関係を癒して、最終的に家族になれればそれでいい。
そう、思っていたのに。
聖女の仕事は休みがなく、アリシアは国のためにと身を粉にして働いた。
マリサとルイスが学院に通い、学生生活を楽しんでいる間も。
在籍だけはして筆記試験だけはこなし、ほとんど通うことがなかったそんな学院の。
最後の卒業パーティの日にそれは起こった。
幼少の折に母が逝った後、まさか父が自分と一年も歳が違わない妹を連れてくるとは思ってもみなかった。
それでも。
五歳の神参りのおりの魔力測定で、ありえないほどの高い数値を叩き出したアリシア。
父は、そんなアリシアの利用価値を認め、教会の聖女職にと彼女を売ったのだ。
政略結婚であった父と母。そんな母の娘である自分と比べ愛した人の娘であるマリサ。
父にとってどちらが大切な存在であるのか、そんなことは幼い自分にも理解ができた。
だからこそ、利用価値があると思われたくて聖女の修行にも力を入れていたのだというのに。
全てのきっかけは、そう。
アリシアがルイス殿下の婚約者に選ばれたことだったろうか。
眩いばかりのプラチナブロンド。すっと通った鼻筋に、若い女性であれば誰もが魅了されるその切長の碧い瞳。幼いうちからそんな天使のような容姿とその身のこなしの良さで、多くの令嬢が虜になっていたそんなルイスとの婚約。
きっと、国王直々の指名でさえなければ、アリシアにそんな地位が回ってくるだなんてことはなかったのだろう。
「アリシアなんか王子の婚約者にはふさわしくないわ。どうしてお父様。どうしてわたくしじゃ、ないの?」
アリシアのことを姉だなんて思ってもいないということが丸わかりな、そんなマリサ。
今までだったらなんでも父が叶えてくれていただろうに。今回だけはそうはいかなかったことに癇癪を起こしてそう父に追い縋る。
「お前の婚約者はクリストだと言ったろう? バッケンバウワー公爵家の次男の彼なら家格も申し分ない。クリストと結婚しこのブランドー公爵家を守っていくのだと、ついこの間まではそれで満足していたではないか」
「だって。わたくしがアリシアよりも下の地位になるなんて、そんなこと許せるわけはないじゃない。そうでしょう? お父様だってそう思われるんじゃない?」
「それはそうだがな。しかしこれは国王陛下直々のご指名なのだ。聖女である女性が王太子の妃にと。夢枕にそう神のお告げがあったそうなのだよ」
「だからって、どうしてそれがアリシアなのよ! 聖女なら他にもいるでしょう?」
「それがな。どこの家も普通は聖女宮直属の聖女職ならともかく所属の教会に娘を差し出したりなどしない。あそこに現在在籍している聖女の中ではアリシアが一番家格が上だった、と、それだけの理由だが」
「そんなの! どうせアリシアなんか、王子に嫌われて捨てられるんだから!」
「そう、だな。あれが王子の妃として勤めを果たせるとも思えぬ。それならそれで構わぬが。王家からも慰謝料を頂けばいいだけのこと」
「まあそうね。役に立つうちはせいぜい役に立って貰えばいいわね」
「そういうことだ。あれにはまだ価値がある。捨てるには惜しいよ」
大声で話す二人の声は、アリシアにも聞こえていた。
それでも、いいと。
この時は本気でそう思っていた。
——本当は愛したい。愛されたい。だけれど。
自分に利用価値があるうちは、彼らに捨てられることもない。
愛されない、そうわかってはいたけれど、それでも必要とされるのであればそれでいい。
王子の前でもそれは同じで。
彼が自分のことを気に入っていないことは、最初からわかっていた。
だけど。
愛がなくてもいい。
婚姻が、ゆっくりと二人の関係を癒して、最終的に家族になれればそれでいい。
そう、思っていたのに。
聖女の仕事は休みがなく、アリシアは国のためにと身を粉にして働いた。
マリサとルイスが学院に通い、学生生活を楽しんでいる間も。
在籍だけはして筆記試験だけはこなし、ほとんど通うことがなかったそんな学院の。
最後の卒業パーティの日にそれは起こった。
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