わたくし、お飾り聖女じゃありません!

友坂 悠

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赤髪狐。

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「ライト!」

 冒険者の方の一人、カイトさんがそう灯の魔法を唱えて。
 目の前に浮かぶ小さな光の球を頼りに前に進みます。

 案内だから、ってそういって、先頭を歩くのはジャフさん。
 隣に魔法士のカイトさん。
 そしてわたくしとにいさま。
 最後にしんがりをダンさんが務めてくれました。
 ダンさんは人一倍大きな体に大きな盾を担いでいます。
 彼らは蒼い閃光という名前のパーティなのだそうです。強そうですね。
 冒険者の方々は、たいがいこうして3~5人でグループになってお仕事にあたっているそうです。
 ソロでは危険なお仕事は難しいし、受注もできない、といいます。
 なんでもよほどの高名な冒険者さんでない限り、本人になんらかのトラブルがあった場合に全てが台無しになるのでは、依頼する方もリスクが高すぎるから、だそうで。
 それはそうでしょうね。
 どんなに強い人でも、敵の攻撃に常に無傷でいられるわけではありません。
 そんな時にサポートがあるかないかでは生き残る確率も雲泥の差です。
 特にこうした身動きの取りにくい洞窟の中では、何が起きるかわかりませんし。
 前だけでなく後ろも警戒しないといけませんからね。

 ——アーシャ。野獣の気配がするわ! 前方ちょっと先よ。

 うん、ファフナ。

「ジャフさん! 前方に野獣がいます!」

「ああ、嬢ちゃん、ありがてえ」

 ジャフさんは短剣を二本、両手に持って構えます。
 カイトさんは右手のワンドを高く掲げて。
「アイスショット!!」
 と叫び、ジャフさんと共に前方に向かって駆け出しました。

 ぎゃわん!! 野獣の断末魔。

 赤髪狐でしょうか。真っ赤な炎のような柄の毛皮が特徴の野獣が数匹、こちらに向かって威嚇して、グルルルッと唸って睨みつけてきます。

 群れの中心に飛び込んだジャフさんとカイトさんがかなりの数を引き受けてくれていますがこちらに今にも飛びかかろうとする赤髪狐も残っていて。

 ダンさんが、すっと前に出て大きな盾を構え、わたくしたちを庇うように立ち塞がり。
「嬢ちゃんと旦那は下がっててくだせえ。ここは俺らが」
 そう言ってさっと剣を抜き、飛び掛かってきた赤髪狐をさっと切り捨てて。

「ありがとうございます!」

 わたくしはそう答えて。
 この人たちは強い。任せても大丈夫、それくらいはわたくしにもわかります。
 でも。
 何もしないのも、やっぱり違いますよね。
 ここはわたくしがおねがいして来て貰ったのですもの。

「おねがい、ギア、キュア! アウラ! 彼らを守って!」

 命のキュアと風のアウラ。

 空間の位相を司るアウラの権能で彼らの体の周囲に風の膜を張り巡らせます。
 自然に、薄皮一枚の厚みで、行動には全く影響を及ぼすことのないその風の膜。
 それでもそれは彼らの物理的な防御力を上げるバリアとなり。

 生命の力を司る金のキュアは、彼らの体の隅々まで溶け込んで肉体強度そのものを一段階引き上げます。
 きっと役に立つはず!!

 金色の粒子が巻き上がり、彼ら3人ともちろんにいさまにも降り注いで。

「お、なんだか体が軽くなったぞ?」

「スピードが上がった!!?」

「おおおお、力がみなぎる!!」

「お嬢様??」

 はう。驚かせてしまいました?

「お力になればとバフの魔法をかけました!!」

「おおおおお!!!」

「ありがとな嬢ちゃん! いや、聖女さま、か」

「これほどの力を頂いたのですから、頑張らなければいけませんね」

 ジャフさんたち3人も、そしてにいさまも。
 赤髪狐などものともせずに切り捨て倒していきます。
 洞窟の中ですし火の魔法は使いにくいので、攻撃も地味なものが多かったですけど、それでも。
 ものの数刻で全ての赤髪狐を倒した皆さま。
 本当にお疲れ様です!!

 わたくしは仕上げにもう一度キュアを、今度は回復の権能を解放し。
 全員に降り注ぎました。

 金色のシャワーが、嫌な匂いも全て洗い流してくれて。
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