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内向的だったらしい。
しおりを挟む朝食はコーンスープにスクランブルエッグ、それにベーコンとソーセージが添えてあるだけの簡素なものだった。それでも。
(ああ。美味しい)
大好きなものばかりで自然と顔が綻んでしまう。
特にソーセージがパリッとしてジューシーで。
親指くらいのサイズのが3本だったけど、もっと食べたいなって思うくらいで。
実際にはそんなことは言わずに我慢したのだけれど。
昼食は簡単にパンに野菜やベーコンを挟んだだけのもの。
ドレッシングが美味しく、カリッとしたベーコンがアクセントになっていて食感がとても良かった。
マリアは食事の時にしかお部屋に来なかったけれど、それでもたわいもない話をしながら楽しく過ごせた。
「すみません奥様。私、少し驚いているんですよ」
お昼の食器を下げるときにそうこちらを覗き見るように話すマリア。
「お伺いしていた話とあまりにも違うものですから」
「え? どういうことなのです?」
「うーん、奥様は内向的であまりご自分からお話になることもない、と、そう聞いておりましたの」
「そう、だったのですか……」
「実際、昨夜こちらに到着したばかりの奥様は、下を向いて何もお話にならないご様子で……。こんなにも笑顔でお喋りくださるとは思っていなかったのです」
「印象、違いました?」
「私は今の奥様の方が好ましく思いますよ」
そう微笑みながら答えるマリアに。
(なんだか好ましいな)
だなんて、こちらもそんな印象を持って。
仲良くできるといいなって思ったのだった。
午後、窓から差し込む日差しがとても暖かくて気持ちよく。
ソファーに腰掛けまどろみながら今後のことを考えていた。
本でもあれば、嬉しいな。
着替えも、もうちょっと欲しいかも。
贅沢は言わないから、もうほんの少しだけ、いろどりが欲しいなぁ。
ってそんなふうに考えて。
トランクにあった服は今着ているこれとあと洗いざらしの割と傷んだ薄っぺらいワンピースだけ。
下着も替えが一枚あるだけ。
とても貴族の令嬢の持ち物には思えないそんなものだけで。
(内向的って、わたし、そんな性格だったんだろうか?)
今の自分からは信じられない。
(気弱な令嬢、っていうならこの服の趣味もわからないでもないけど)
(いかにもオーソドックスな古風なワンピース。薄緑のストライプだなんて、童話の中でしか観たことないわ)
ふっとそんな考えが頭をよぎる。
記憶はないのに。そんな知識だけが蘇る。
(ままよ。考えてたって解決しないもの。明日は街に出て色々見てまわってみよう)
必要なものはセバスに言えばいい。
そんなふうに旦那様はおっしゃったけれど、できればあんまり頼りたくはないと思ってしまう。
幸い、今日の様子を見る限り食事の時間にさえ部屋にいればそこまで何か言われることもなさそうだ。
(わたしの荷物でさえ何が入っているかも興味がなさそうな旦那様だもの。お金を持っているかどうかだって、知られていないに違いないわ)
トランクの中身を知られていたら、さすがに今頃着替えの数着は必要だと思ってくれただろうに。いくらなんでもセラフィーナの荷物はこのお屋敷にそぐわないから。
そんなふうにも思って。
だから。
そこまで興味がないならないで、いっそほっておいてくれればいい。
とりあえず今すぐここから追い出されることはなさそうだ。だからあとは……。
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