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その日。
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旦那様、ルークヴァルトが夜になっても帰ってこない。
今まで、なんだかんだ言っても夕食はセラフィーナと一緒に摂っていたのに今夜は遅くなるときかされて。
セバスがソワソワしてるところを見ると、もしかしたら今夜があの例の場面の決行日なのだろうか? と、不安になる。
前回のあの日、セラフィーナがどうやってあの場面に出くわすことができたのか。
少しだけ思い出した記憶によれば、セラフィーナは兄に会いに王宮まで出向き、そこで悪い人たちに拉致されたのだということだった。
何かを兄から聞き出そうとした悪人たちに、利用価値があると思われたのだろう。
薬を嗅がされ気がついたら目の前に兄がいて。
そしてその現場にルークが乗り込んできて戦闘になったのだ。
今みたいに前世を思い出していなかったセラフィーナは完全に足手纏いだった。
当然現場がどこにあったのかもわからない。
でも。
今なら。
寝室の窓をあけ、セラフィーナは王都中に意識を張り巡らせた。
ルークヴァルトの魂の色。マナの波紋を見つけるまで。
人のもつマナの波紋。それは個々に微妙に違っている。
魂の色? と言ったらいいのか。
そんな「魔力紋」と呼ばれるものを、セラフィーナは感じ取ることができる。
もちろん普段からいつでもわかるってほどではないけれど、少しでもルークがマナを放出してくれさえすれば。少しでも魔法を使ってくれさえすれば。
この王都の中だったらなんとか見つけることができるはずとそう信じ。
意識を薄く円状に広げていく。
ルークはバアルの加護を持っている。水の魔法とか氷の魔法とか、そういう魔法が得意なはず。
前回の未来に放った彼の最大魔法、氷結は、あだ名のもとにもなったそんな魔法は、中でもかなり上級の部類に属してる。
まだそこまでのマナの熾りは見えない。
(ううん、だからまだ大丈夫。どうか無事でいて。ルーク様——)
▪️▪️▪️▪️▪️
国家安全保安局局長という職にあるルークヴァルト・フォン・ウイルフォード公爵は、現在捜査中であった闇オークションについての情報を集めるために組織に潜入させていた部下のアルバート・レイニーウッドとの連絡が取れなくなったことで焦っていた。
優秀なアルバートが自ら買って出た役目であったとはいえ、連絡がつかない状況というのは危険な状態であるのは間違いがない。
(それに。私はアルバートと約束したんだ。彼の妹を守る、と。悲しい目には合わせたくはない……)
元々はただの契約婚、お飾りの結婚、それだけだった。王陛下からの無理難題を避ける為に仕方なく。それでも、いざ結婚してみると、セラフィーナは他の女性とは全く違って見えた。
女々しく媚びることもなく、日々を楽しそうに過ごしている彼女。
一緒に食事した時など、美味しそうに食べるその姿がとても微笑ましくて。
どんなに無理をしても夕食は一緒に。
そんなふうに思ってしまうほどだった。
内気でおとなしくて他人とは口も聞けない女性。
そう聞いていたのは間違いだったのか?
まだほんの少しの間だっていうのに、屋敷の中も、なんだかとても明るくなったような気がして。
「よし。突入する。A班は周囲を警戒。B班は私についてこい!」
選りすぐった騎士数人を引き連れマキアベリ侯爵邸への突入作戦を開始する。
闇組織ブレインマフがマキアベリ侯爵邸を拠点にしていることはすでに確認済み。
アルバートは一般の執事としてこの屋敷に採用され、内部調査を行なっていたのだった。
次のオークションまではまだ期間があるはず。噂では、魔素を凝縮した高濃度の魔結晶が出品されるという話だった。
魔獣を召喚し自在に操ることが可能だという魔結晶。そんなもの、人の手には余る。
悪人が勝手に魔獣に喰われるくらいならまだマシだ。
そのせいで世界に歪みが起き魔獣のスタンピードがおきてしまったらたまらない。
王都の中で次元の裂け目ができるようなことがあったら、と、それを恐れて。
屋敷の主人、マキアベリ侯爵は不在だという。
本来であれば彼が在宅中に踏み込み捕らえる予定であったけれどしょうがない。
夜に紛れ強行突入し関係者を全て捕らえ証拠を抑える。
できれば魔結晶そのものを抑えてしまいたかったけれど、それがどこにあるのかまではまだわかっていなかった。
今まで、なんだかんだ言っても夕食はセラフィーナと一緒に摂っていたのに今夜は遅くなるときかされて。
セバスがソワソワしてるところを見ると、もしかしたら今夜があの例の場面の決行日なのだろうか? と、不安になる。
前回のあの日、セラフィーナがどうやってあの場面に出くわすことができたのか。
少しだけ思い出した記憶によれば、セラフィーナは兄に会いに王宮まで出向き、そこで悪い人たちに拉致されたのだということだった。
何かを兄から聞き出そうとした悪人たちに、利用価値があると思われたのだろう。
薬を嗅がされ気がついたら目の前に兄がいて。
そしてその現場にルークが乗り込んできて戦闘になったのだ。
今みたいに前世を思い出していなかったセラフィーナは完全に足手纏いだった。
当然現場がどこにあったのかもわからない。
でも。
今なら。
寝室の窓をあけ、セラフィーナは王都中に意識を張り巡らせた。
ルークヴァルトの魂の色。マナの波紋を見つけるまで。
人のもつマナの波紋。それは個々に微妙に違っている。
魂の色? と言ったらいいのか。
そんな「魔力紋」と呼ばれるものを、セラフィーナは感じ取ることができる。
もちろん普段からいつでもわかるってほどではないけれど、少しでもルークがマナを放出してくれさえすれば。少しでも魔法を使ってくれさえすれば。
この王都の中だったらなんとか見つけることができるはずとそう信じ。
意識を薄く円状に広げていく。
ルークはバアルの加護を持っている。水の魔法とか氷の魔法とか、そういう魔法が得意なはず。
前回の未来に放った彼の最大魔法、氷結は、あだ名のもとにもなったそんな魔法は、中でもかなり上級の部類に属してる。
まだそこまでのマナの熾りは見えない。
(ううん、だからまだ大丈夫。どうか無事でいて。ルーク様——)
▪️▪️▪️▪️▪️
国家安全保安局局長という職にあるルークヴァルト・フォン・ウイルフォード公爵は、現在捜査中であった闇オークションについての情報を集めるために組織に潜入させていた部下のアルバート・レイニーウッドとの連絡が取れなくなったことで焦っていた。
優秀なアルバートが自ら買って出た役目であったとはいえ、連絡がつかない状況というのは危険な状態であるのは間違いがない。
(それに。私はアルバートと約束したんだ。彼の妹を守る、と。悲しい目には合わせたくはない……)
元々はただの契約婚、お飾りの結婚、それだけだった。王陛下からの無理難題を避ける為に仕方なく。それでも、いざ結婚してみると、セラフィーナは他の女性とは全く違って見えた。
女々しく媚びることもなく、日々を楽しそうに過ごしている彼女。
一緒に食事した時など、美味しそうに食べるその姿がとても微笑ましくて。
どんなに無理をしても夕食は一緒に。
そんなふうに思ってしまうほどだった。
内気でおとなしくて他人とは口も聞けない女性。
そう聞いていたのは間違いだったのか?
まだほんの少しの間だっていうのに、屋敷の中も、なんだかとても明るくなったような気がして。
「よし。突入する。A班は周囲を警戒。B班は私についてこい!」
選りすぐった騎士数人を引き連れマキアベリ侯爵邸への突入作戦を開始する。
闇組織ブレインマフがマキアベリ侯爵邸を拠点にしていることはすでに確認済み。
アルバートは一般の執事としてこの屋敷に採用され、内部調査を行なっていたのだった。
次のオークションまではまだ期間があるはず。噂では、魔素を凝縮した高濃度の魔結晶が出品されるという話だった。
魔獣を召喚し自在に操ることが可能だという魔結晶。そんなもの、人の手には余る。
悪人が勝手に魔獣に喰われるくらいならまだマシだ。
そのせいで世界に歪みが起き魔獣のスタンピードがおきてしまったらたまらない。
王都の中で次元の裂け目ができるようなことがあったら、と、それを恐れて。
屋敷の主人、マキアベリ侯爵は不在だという。
本来であれば彼が在宅中に踏み込み捕らえる予定であったけれどしょうがない。
夜に紛れ強行突入し関係者を全て捕らえ証拠を抑える。
できれば魔結晶そのものを抑えてしまいたかったけれど、それがどこにあるのかまではまだわかっていなかった。
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