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▪️アルバート。2
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黒竜と名乗るその男はラカン・マキアベリ侯爵の記憶を読み取っていたらしい。
次元の穴が空いた時に魔素に飲まれ溶けてしまったという侯爵の身体。流石に悲惨な最後だとは思うがそれも自業自得なのだろう、同情はしないで済んだ。
侯爵が隣国と通じていた証拠や、そしてこのさきに狙っていた王家転覆の企み、そしてそれに同調していた他の貴族に対する証拠も押収し、この事件は幕を閉じた。
何をどうしたのかは俺には聞かされていないけれど、黒竜は表向きマキアベリ侯爵として今も振る舞っている。
国王ウイリアム陛下に直接話をつけたという奴は、まるで昔から侯爵であったかのようなふりをして今もこの世界に居座っているのだ。
表向きは、侯爵家は全て国王陛下の指示のもと裏切り者を炙り出すために活動していたのだ、と、そう言うことになった。
隣国にも釘を刺し外交も有利に運んだ。我が国アルメルセデスにとっても利のある結果となったそうだ。
そう。
元の侯爵が苦し紛れに全ての罪をなすりつけようとした執事は今黒竜の世話をそのまましている。
地下室に幽閉されていた彼にしてみれば、新しい侯爵は命の恩人であるのだろう。
実は侯爵家の人間で全てを知っているのは執事ジルステッドだけだ。
彼は本当に侯爵の裏の顔も全て知っていた生き証人でもあったから、その分今の黒竜に忠誠を誓うことで命を繋いだのだと言っても過言ではなかった。
太っていたラカン・マキアベリからシュッとしたスマートなラカン・マキアベリ侯爵となった黒竜。
最初に見た切れ長の目をした美丈夫だった顔を少しラカン・マキアベリ侯爵に似せるように変えた奴。
家族、と言うか親族には魔素によって痩せたのだと話し、それ以上の説明はしなかった。
社交界にも、病気のせいで体質がかなり変わってしまったのだという噂を流し、いらない詮索をされぬよう予防線を張っていた。
そんな黒竜と親しげに話をする妹セラフィーナ。
いや、あれは、もしかしたら黒竜と同じ?
セラフィーナの顔と記憶だけ持った、異質な存在なのだろうか?
そんな恐怖にもにた想像をしてしまう。
ルークとも随分と親しげになった彼女。
やつもまんざらでもない様子で、側から見たら本当の仲のいい夫婦に見えることだろう。
それが少し、気に入らない。
ああ、この気持ちをどうすればいいんだ。
そんな、悶々とした生活を送っていたある日、だった。
久々にルークと飲もうと言う話になって公爵家に足を踏み入れた。
夕食はセラフィーナも一緒で、二人の仲の良い雰囲気にあてられ。
酒はまだ晩酌に少し飲んでいただけだったけれど、熱った顔を少し冷まそうと中庭に出た俺。
天頂には大きな月。
まるで月が振るように眩い光が降りそそぐ、そんな噴水のヘリに腰掛けると片手に何か飲み物を持ったセラフィーナが現れた。
「これ、すっごく喉越しがいいから。ほてった身体にはいいのよ」
そう言って杯に入った果樹水を手渡す彼女。
その姿は月の光に溶けるようで。人間離れして見える。
「おまえは、誰だ? セラフィーナはどうなったんだ!?」
酔っていたせいか、思わずそんな言葉が出てしまった。
「バカね。お兄ちゃんったらそんな事考えてたの? 確かにあたしの性格が変わったのは不思議に感じてるだろうくらいは思ってたけど、別人だと思ってただなんて。ひどいわ」
そうこちらを見て笑うセラフィーナ。
「お兄ちゃん」だなんて呼ばれて。
小さい頃に俺のことをそう呼び懐いてくれていた、天使のようによく笑う妹セラフィーナの面影を思い浮かべ。
「じゃぁ、その魔力はどう説明するんだ!?」
人には到底到達できないであろうほどの魔力量。
それを。
「あたし、前世、とっても力の強い魔女だったんだ。白蓮って呼ばれた魔女。白竜のおじいちゃんに育てられた、そんな前世を思い出したのよ」
次元の穴が空いた時に魔素に飲まれ溶けてしまったという侯爵の身体。流石に悲惨な最後だとは思うがそれも自業自得なのだろう、同情はしないで済んだ。
侯爵が隣国と通じていた証拠や、そしてこのさきに狙っていた王家転覆の企み、そしてそれに同調していた他の貴族に対する証拠も押収し、この事件は幕を閉じた。
何をどうしたのかは俺には聞かされていないけれど、黒竜は表向きマキアベリ侯爵として今も振る舞っている。
国王ウイリアム陛下に直接話をつけたという奴は、まるで昔から侯爵であったかのようなふりをして今もこの世界に居座っているのだ。
表向きは、侯爵家は全て国王陛下の指示のもと裏切り者を炙り出すために活動していたのだ、と、そう言うことになった。
隣国にも釘を刺し外交も有利に運んだ。我が国アルメルセデスにとっても利のある結果となったそうだ。
そう。
元の侯爵が苦し紛れに全ての罪をなすりつけようとした執事は今黒竜の世話をそのまましている。
地下室に幽閉されていた彼にしてみれば、新しい侯爵は命の恩人であるのだろう。
実は侯爵家の人間で全てを知っているのは執事ジルステッドだけだ。
彼は本当に侯爵の裏の顔も全て知っていた生き証人でもあったから、その分今の黒竜に忠誠を誓うことで命を繋いだのだと言っても過言ではなかった。
太っていたラカン・マキアベリからシュッとしたスマートなラカン・マキアベリ侯爵となった黒竜。
最初に見た切れ長の目をした美丈夫だった顔を少しラカン・マキアベリ侯爵に似せるように変えた奴。
家族、と言うか親族には魔素によって痩せたのだと話し、それ以上の説明はしなかった。
社交界にも、病気のせいで体質がかなり変わってしまったのだという噂を流し、いらない詮索をされぬよう予防線を張っていた。
そんな黒竜と親しげに話をする妹セラフィーナ。
いや、あれは、もしかしたら黒竜と同じ?
セラフィーナの顔と記憶だけ持った、異質な存在なのだろうか?
そんな恐怖にもにた想像をしてしまう。
ルークとも随分と親しげになった彼女。
やつもまんざらでもない様子で、側から見たら本当の仲のいい夫婦に見えることだろう。
それが少し、気に入らない。
ああ、この気持ちをどうすればいいんだ。
そんな、悶々とした生活を送っていたある日、だった。
久々にルークと飲もうと言う話になって公爵家に足を踏み入れた。
夕食はセラフィーナも一緒で、二人の仲の良い雰囲気にあてられ。
酒はまだ晩酌に少し飲んでいただけだったけれど、熱った顔を少し冷まそうと中庭に出た俺。
天頂には大きな月。
まるで月が振るように眩い光が降りそそぐ、そんな噴水のヘリに腰掛けると片手に何か飲み物を持ったセラフィーナが現れた。
「これ、すっごく喉越しがいいから。ほてった身体にはいいのよ」
そう言って杯に入った果樹水を手渡す彼女。
その姿は月の光に溶けるようで。人間離れして見える。
「おまえは、誰だ? セラフィーナはどうなったんだ!?」
酔っていたせいか、思わずそんな言葉が出てしまった。
「バカね。お兄ちゃんったらそんな事考えてたの? 確かにあたしの性格が変わったのは不思議に感じてるだろうくらいは思ってたけど、別人だと思ってただなんて。ひどいわ」
そうこちらを見て笑うセラフィーナ。
「お兄ちゃん」だなんて呼ばれて。
小さい頃に俺のことをそう呼び懐いてくれていた、天使のようによく笑う妹セラフィーナの面影を思い浮かべ。
「じゃぁ、その魔力はどう説明するんだ!?」
人には到底到達できないであろうほどの魔力量。
それを。
「あたし、前世、とっても力の強い魔女だったんだ。白蓮って呼ばれた魔女。白竜のおじいちゃんに育てられた、そんな前世を思い出したのよ」
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