お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!

友坂 悠

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夢の話。

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 次に気がついた時はもううっすらと日が差し込んでいた。
 まだ早い時刻なのはわかるけれど。

 旦那様は横になってシルフィーナを覗き込むようにこちらを向いた姿のまま、目を瞑っていらっしゃる。
 ちゃんと眠ってくださったのかしら?
 わたくしが迷惑をおかけしたから寝不足なのではないかしら?
 そんな心配をしながら彼のその美麗なお顔を眺めて。

 髪の色と同じ夜の色をしたまつげが、ふっと揺れた気がした。
 長くふさふさとしたそのまつげに、少しの間見惚れてしまったシルフィーナ。

 男性の方なのに。
 なんて美しいのかしら。

 しばらくこのまま見つめていたい。
 そんなふうに思って、ううん、ダメダメ、と、頭をふる。

 わたくしはお飾りの妻なのだから。
 愛されることはないのだから。

 ついつい忘れてしまいそうになるそれを、思い出して。

 う、む、

 そう声が漏れた。旦那様の吐息をお側で感じて。
 それでも今だけは。
 こうして幸せな気分に浸ろう。
 そう思い返す。

「ああ、おはよう」

 旦那様の目がうっすらと開いて。

「おはようございます旦那様」

 シルフィーナも今日は笑顔でそう答えることができた。

 身体を起こし、シルフィーナの顔を覗き込む旦那様。

(ああ、近いです旦那様……)

「ねえ、ちゃんと眠れたかい? 君があんまりうなされているものだから、心配したよ」

(え? うなされて?)

 そういえば、と、思い返す。
 ずっと見ていた夢。
 漆黒の闇の夢を。

「漆黒の夢を……、見てしまったので……」

 素直にそう言葉に出ていた。

「ああ、もしかしてこの間の?」

 心配そうにそうシルフィーナの瞳を覗き込む彼。

「この間の聖女宮も夢に見たのですが……、どこだかわからない場所もあって、多分、怖かったんだと思います」

 沈んだ声でそういうシルフィーナ。

 怖い、という感情が適切なのかどうか。それはちょっとわからなかったけれど。
 旦那様にわかってもらうためにはそう言語化したほうがいい。
 そう思って。

「そうか」

 そういうとサイラスは、その大きな手でシルフィーナの頭を撫でた。

(はう! 旦那様!)

 優しいその手でくしゃくしゃっと撫でられて。
 もちろん不快では無かったけれど。
 むしろ嬉しくて泣きたくなるほどではあったけれど。

「ごめんなさい旦那様。わたくし……」

 その手から逃れるように、シルフィーナは身体をずらす。

(ダメ、です、こんなの勘違いしちゃうから……)

「ああ、すまない。君は小さな子供じゃないんだものな……」

 手を止め、遠い目をしてそうおっしゃる旦那様。

 そのお顔はなんだかとても悲しそうに見えて。
 撫でられるのを拒否したのがなぜかとても悪いことのような気分になったシルフィーナ。

「ごめんなさい、そういう意味じゃないのです……」

 と、それだけいうのが精一杯だった。

 気まずい沈黙が流れ、それでもシルフィーナをじっと見つめてくださる旦那様のお顔を見ていたら。

(ああ、何か、言わないと)
 と、そんな気持ちに駆られたシルフィーナ。

「ああそういえば、先日の漆黒はどなたかが描いた魔法陣のせいで現れたのですよね?」

 と、そう口に出していた。
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