お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!

友坂 悠

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第二部。

魔道士の塔。

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 魔道士の塔は王宮の敷地内に隣接し、ちょうど聖女宮と対になる位置に高く聳えて立っていた。
 聖女宮がその目の前に聖女宮広場をもって大通りに面しているのと対照的に、魔道士の塔はそのどこにも専用の入口はなく、また聖女宮側からの回り道も無い。

 王宮大門を抜け、王宮と離宮とを繋ぐ回廊を通りそのまま奥に進むとやっとその塔の入り口が見えてくるという塩梅で。

 そしてその塔の入り口には魔力紋ゲートが設置され、中に入るものを制限していた。

 当然一般人の入室は禁じられ、許可のあるものしかその奥には入ることができない。

 サイラス・フォン・スタンフォード侯爵とて、その職務上必要な場面でしか入室許可が降りない、そんな場所で。




 夜の帷が降りた後。

「そんな厳重な警備の魔道士の塔になど、わたくしが赴いても良いのでしょうか?」

 考えていたら眠れなくなってしまったシルフィーナ。
 そう彼の顔を見つめながら呟く。

「いや、これはむしろあちら側からの意向でもあったのだ。君の魔力量、魔力特性値の高さは知れ渡っている。おまけに以前の厄災の折の浄化魔法のことも」

 サイラスは少しだけ目を曇らせて。
 シルフィーナに寄り添い頬に手をあて、いった。

「実は当時、君を調べるべきだという要望が魔道士の塔側から上がっていたが、君がまだ幼かったことと、その後の魔力枯渇で倒れたこともあって、当時は男爵が強硬に反対、拒否をしたという経緯があってね」

(はう、お父様……)

「もしかしたら君の貴族院入りをマーデン男爵が拒否したのも、そのあたりが原因だったのかもしれないと今なら納得できるよ」

「え? 拒否、ですか?」

「ああ。君の将来を、君の可能性を奪った暴挙だと、それを知った時は私も憤慨してしまったのだけれど」

「でも、それはマーデンにはお金がなかったからで……」

「君は特待生に選出されていたからね。学資は全て魔道士の塔が負担する手筈になっていたそうだ。それだけあちらは君にご執心だったということだね」

(ああ、ああ。お父様……)

 自分はずっと父親に嫌われていると思っていた。
 でも。

「お父様は、わたくしをその魔道士の塔から護ってくださったのでしょうか……?」

「きっと当時、幼い君を研究材料としかみていなかった魔道士の塔の面々の思惑が透けて見えていたんだろうね。実はこの三年の間でも、魔道士の塔からの圧力は結構あってね。向こうさん、どうしても君を調べたいとそんなふうな一点張りで」

 ベッドの中で。
 シルフィーナを優しく抱きしめるサイラス。

「怖いかい?」

 そう優しく頭を撫でてくれる。

「いえ。旦那様も、そんな彼らからわたくしを庇って下さっていたのがわかって、今は嬉しいです」

 ふふ、っと漏らす彼の吐息が耳元にかかる。シルフィーナはくすぐったくてそのまま頭をサイラスの胸元に寄せて。

「でもね。今ならもう大丈夫だと思うんだよ。逆に、君がこうして過去を思い出した今こそ、ちゃんと自分自身について学び直すチャンスだとも思ってる」

 上目遣いに彼の目を覗き見て。
 うん。その優しい瞳は信じられる、そう思う。

「大丈夫、信頼のできる部下を一人つけるから。君を危険な目になんかあわすのもか」

「はい。旦那さま」

 そう言って、シルフィーナはサイラスの胸元に頬を擦り付けて。

 そのまま、安心したかのように眠りについた。

 シルフィーナの寝顔を眺めながら、サイラスはゆっくりとその髪を撫でて。

「愛してるよ。私の聖女」と、囁いた。
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