お飾り妻は離縁されたい。「君を愛する事はできない」とおっしゃった筈の旦那様。なぜか聖女と呼んで溺愛してきます!!

友坂 悠

文字の大きさ
65 / 65
第二部。

請う皇女。

しおりを挟む
 通されたのはサラ皇女が泊まるゲストルームに設られた応接コーナーだった。

「よくいらっしゃいました。サイラス様、シルフィーナ様」

 シルフィーナたちが部屋に通されると同時にさっと席を立つサラ皇女。そうしてそのまま軽く会釈すると手招きで二人に手前のソファーを勧める。

 着座すると同時に周囲のメイドたちがさっと飲み物のカップを差し出す。
 優雅にそっと口をつけ、こちらに向かって笑みをこぼすサラ。

「帝国で流行りのお茶ですわ。お口に合うといいのですけど」

 そう、ゆったりと話す。

「ありがとうございます。いただきます」

 隣でなぜかむっつりと黙ってしまったサイラスを横目で見ながらそう応えるシルフィーナ。

「あの、サラ様……」

 じっとシルフィーナを見つめるだけのサラにサイラスが痺れを切らしているのを感じ、そう声をかけてみる。

「どう、お口にあったかしら?」

 それでもそんなことを意に返さない様子で笑みを絶やさずゆったりとそう言うサラに。

「私たちはあの溢れた魔の瘴気に対して帝国側がどう対処されるおつもりなのか、それを尋ねにきたのです。まったりとお茶を楽しむためにわざわざ参ったのではありません」

 そう冷たい声で言い放つサイラス。

「ええ。それについては帝国においても憂慮しておりますわ。ですからシルフィーナ様をお貸しいただけないか? と、事前に打診をしたのですけれど」

「それは難しいとしか言いようがありません。彼女はこの国においても必要です。魔力災害に対応するために騎士団を出動させますが、それにも同行してもらう予定ですから」

「この国には別に、ちゃんと聖女として認定されている方々がいらっしゃるではありませんか?」

「聖女宮の聖女は残念ながら魔を払うまでの力を持ちません。多少の回復魔法や聖魔法が使えるのみです。そもそもそれも、欠損を回復させうる力もないのです」

「それが本当なのだとしたら、そちらのシルフィーナ様は聖女どころか大聖女に認定されていなければおかしいのではないですか? 聞けば準聖女にさえ認定されていないのでしょう?」

「聖女に、せめて準聖女に、という話はあった。しかし……」

「わたくしがお受けしなかったのです。自信がないから、と」

「シルフィーナ様……。まあ貴女はそうなのかもしれませんね……。帝国にいらしてくださらないのはもう仕方がないと諦めていますわ。でも、せめて」

 サラ皇女はシルフィーナに向き直り、両手を取って跪く。

「せめて、貴女を大聖女に認定させていただけませんか? 帝国聖女宮より、大聖女の称号を贈りたいと思っています。貴女にはそれだけの力があります。貴女の活躍はそれを裏付けるのに十分なのですもの」

 熱心にそう話すサラの視線はまっすぐシルフィーナの目を見据えていた。
 嘘や偽りでも、ましてや交渉の材料でもない。
 ただシルフィーナにそれだけの価値があるのだと。シルフィーナにそんな大聖女の地位を送りたいのだと、そう話す彼女に。

 それ以上、あらがうことはできなかった。
 帝国皇女が跪いて請うのだ。
 そんな真似をさせてしまった自分に、申し訳なさの方が先に立つ。

「すみません。サラ様。わたくしのような者でよろしければ、そのお申し出をお受けしたいと思います……」




しおりを挟む
感想 7

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(7件)

ノヴァ
2022.06.01 ノヴァ
ネタバレ含む
2022.06.02 友坂 悠

ありがとうございます。
この先のお話とか世界観のお話とかも考えているので、
現在シルフィーナのその後のストーリーと、彼女たちの次の世代のお話とを書いてます。
できたらまたこちらに掲載させて頂きますのでよろしくお願いします。

解除
ひつじ
2022.05.27 ひつじ

素敵なお話でした‼️
私も番外編、お願いします
ラブ❤️ラブ感、読んでみたいっす‼️
せっかく障害がなくなったので、是非とも よろしくお願いします

2022.05.29 友坂 悠

ありがとうございます〜♬
頑張って続き書きます💕

解除
wanko.no.nyanko
2022.05.27 wanko.no.nyanko

つまらん終わり方だなぁ…
面白いなぁ、と読み進めていただけに、かなり残念…

2022.05.29 友坂 悠

ありがとうございます〜。
もしできましたらどんな感じがご希望だったか教えて頂けると嬉しいです。
今番外編と続編の構想中デス。

解除

あなたにおすすめの小説

氷の王妃は跪かない ―褥(しとね)を拒んだ私への、それは復讐ですか?―

柴田はつみ
恋愛
亡国との同盟の証として、大国ターナルの若き王――ギルベルトに嫁いだエルフレイデ。 しかし、結婚初夜に彼女を待っていたのは、氷の刃のように冷たい拒絶だった。 「お前を抱くことはない。この国に、お前の居場所はないと思え」 屈辱に震えながらも、エルフレイデは亡き母の教え―― 「己の誇り(たましい)を決して売ってはならない」――を胸に刻み、静かに、しかし凛として言い返す。 「承知いたしました。ならば私も誓いましょう。生涯、あなたと褥を共にすることはございません」 愛なき結婚、冷遇される王妃。 それでも彼女は、逃げも嘆きもせず、王妃としての務めを完璧に果たすことで、己の価値を証明しようとする。 ――孤独な戦いが、今、始まろうとしていた。

【完結】今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです)

私の願いは貴方の幸せです

mahiro
恋愛
「君、すごくいいね」 滅多に私のことを褒めることがないその人が初めて会った女の子を褒めている姿に、彼の興味が私から彼女に移ったのだと感じた。 私は2人の邪魔にならないよう出来るだけ早く去ることにしたのだが。

愚かな側妃と言われたので、我慢することをやめます

天宮有
恋愛
私アリザは平民から側妃となり、国王ルグドに利用されていた。 王妃のシェムを愛しているルグドは、私を酷使する。 影で城の人達から「愚かな側妃」と蔑まれていることを知り、全てがどうでもよくなっていた。 私は我慢することをやめてルグドを助けず、愚かな側妃として生きます。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

結婚5年目のお飾り妻は、空のかなたに消えることにした

三崎こはく
恋愛
ラフィーナはカールトン家のお飾り妻だ。 書類上の夫であるジャンからは大量の仕事を押しつけられ、ジャンの愛人であるリリアからは見下され、つらい毎日を送っていた。 ある日、ラフィーナは森の中で傷ついたドラゴンの子どもを拾った。 屋敷に連れ帰って介抱すると、驚いたことにドラゴンは人の言葉をしゃべった。『俺の名前はギドだ!』 ギドとの出会いにより、ラフィーナの生活は少しずつ変わっていく―― ※他サイトにも掲載 ※女性向けHOT1位感謝!7/25完結しました!

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。