9 / 61
魔法。
しおりを挟む
ゲームの中で魔法を使うのは簡単だった。
そりゃあね?
ボタンでコマンド選択するだけだもの。簡単に決まってる。
普通レベルが上がるごとに新しい魔法を覚えていくものなんだけど、あたしのマキナは最初からデフォルトでほぼ基本魔法を網羅してた。
よく使うものはジョグコマンドにセットしておけばさっと魔法を行使できたし、普通に過ごしてる範囲ではMP切れなんか心配したこともなかったっけ。
そういう意味ではこうしてゲームの世界が現実になってしまうと、あたしは魔法の使い方すらわからないことに気がついた。
って、コマンド画面もステータス画面も見当たらないんだもの。
アイテムボックスだって、選択することができないってほんと詰んでる。
色々集めたあの装備、この世界にも持って来れたのならもうちょっと楽だったろうになぁと、門番のおじさんにいただいた素朴な槍を構えつつ思う。
ビュンって振ってみると、ミシっと音がした。
あうあう。
もしかしてこれあたしが全力で振るうと壊れちゃう?
それは困るな。
歩きながら空中を弄ってみるけどやっぱりなんの画面も出てくるわけもなく。
そうだよね。おはなしのようにうまくいくわけはないよね。
そんなふうにも考える。
あたしがよく読んでた異世界物のお話では、結構女神様とかからチート能力を授かるシーンとかが多かった。
転生する時に女神様がいる場所を訪れて、そこでチートを授かったり。
あたしの場合はそんなこともなかったし。
ここがゲームの世界とおんなじ世界観だっていうのは多分間違いないしあたしのこの容姿がゲームのアバターであるマキナだったっていうのももう間違いのない事実。
実際、この身体の身体能力は通常の人のそれを大きく逸脱している。
この世界の冒険者であっても、ジャンピングキック一発でグリズリーを退治してしまうような人はほぼいないそうだ。
それもあってあたし、ギルドで自分がキックでグリズリーを殺しちゃったって話はするの躊躇われ。
だって、そんなことを言ったら変に思われるくらいじゃすまないことない?
国の機関に捕まって人体実験されるとか、そんなSFみたいなシチュエーションはやっぱり避けたい。
そんなことを考えながら歩いていると目の前に目的地の林が見えた。
せめて魔法が少しでも使えたらなぁ。
この先も結構楽になるだろうに。
林に踏み入ればまた野獣や魔物と遭遇するかもしれない。
このフィジカルの高さなら倒すのはそんなに難しくないかもしれない。
でも、毒持ちのモンスターや状態異常のスキルを放つ敵だっているだろう。
そんなの相手に体力だけでどうにかなるとも思えないし。
はあ。
とため息をつきながら考える。
マギアクエストの設定では、さっきも思い出したけど魔法って、
「人は体内にある魂《レイス》から、ゲートを通してマナを放出する。
それを魔力《エネルギー》に変換し、力を行使する」
って事だったよね?
そもそも魂? ゲート? そんな物、あたしにも感じることができるんだろうか?
まあ魂《レイス》って心のことだよね?
そんなふうに思ったあたし、自分の心の奥底を見つめてみる。
瞑想?
そんなふうに。
林に入ると危険もあるかもだからとその前に。
ちょっとした草原にしゃがんで、ゆっくりと目を閉じた。
風を感じる。
草木の匂いもわかる。
地面がひやっと冷たいのも。
五感がだんだんと広がっていくような気がして。
そして、それがだんだんと収束し。
あたしはあたしそのものだけを意識してみたのだった。
そりゃあね?
ボタンでコマンド選択するだけだもの。簡単に決まってる。
普通レベルが上がるごとに新しい魔法を覚えていくものなんだけど、あたしのマキナは最初からデフォルトでほぼ基本魔法を網羅してた。
よく使うものはジョグコマンドにセットしておけばさっと魔法を行使できたし、普通に過ごしてる範囲ではMP切れなんか心配したこともなかったっけ。
そういう意味ではこうしてゲームの世界が現実になってしまうと、あたしは魔法の使い方すらわからないことに気がついた。
って、コマンド画面もステータス画面も見当たらないんだもの。
アイテムボックスだって、選択することができないってほんと詰んでる。
色々集めたあの装備、この世界にも持って来れたのならもうちょっと楽だったろうになぁと、門番のおじさんにいただいた素朴な槍を構えつつ思う。
ビュンって振ってみると、ミシっと音がした。
あうあう。
もしかしてこれあたしが全力で振るうと壊れちゃう?
それは困るな。
歩きながら空中を弄ってみるけどやっぱりなんの画面も出てくるわけもなく。
そうだよね。おはなしのようにうまくいくわけはないよね。
そんなふうにも考える。
あたしがよく読んでた異世界物のお話では、結構女神様とかからチート能力を授かるシーンとかが多かった。
転生する時に女神様がいる場所を訪れて、そこでチートを授かったり。
あたしの場合はそんなこともなかったし。
ここがゲームの世界とおんなじ世界観だっていうのは多分間違いないしあたしのこの容姿がゲームのアバターであるマキナだったっていうのももう間違いのない事実。
実際、この身体の身体能力は通常の人のそれを大きく逸脱している。
この世界の冒険者であっても、ジャンピングキック一発でグリズリーを退治してしまうような人はほぼいないそうだ。
それもあってあたし、ギルドで自分がキックでグリズリーを殺しちゃったって話はするの躊躇われ。
だって、そんなことを言ったら変に思われるくらいじゃすまないことない?
国の機関に捕まって人体実験されるとか、そんなSFみたいなシチュエーションはやっぱり避けたい。
そんなことを考えながら歩いていると目の前に目的地の林が見えた。
せめて魔法が少しでも使えたらなぁ。
この先も結構楽になるだろうに。
林に踏み入ればまた野獣や魔物と遭遇するかもしれない。
このフィジカルの高さなら倒すのはそんなに難しくないかもしれない。
でも、毒持ちのモンスターや状態異常のスキルを放つ敵だっているだろう。
そんなの相手に体力だけでどうにかなるとも思えないし。
はあ。
とため息をつきながら考える。
マギアクエストの設定では、さっきも思い出したけど魔法って、
「人は体内にある魂《レイス》から、ゲートを通してマナを放出する。
それを魔力《エネルギー》に変換し、力を行使する」
って事だったよね?
そもそも魂? ゲート? そんな物、あたしにも感じることができるんだろうか?
まあ魂《レイス》って心のことだよね?
そんなふうに思ったあたし、自分の心の奥底を見つめてみる。
瞑想?
そんなふうに。
林に入ると危険もあるかもだからとその前に。
ちょっとした草原にしゃがんで、ゆっくりと目を閉じた。
風を感じる。
草木の匂いもわかる。
地面がひやっと冷たいのも。
五感がだんだんと広がっていくような気がして。
そして、それがだんだんと収束し。
あたしはあたしそのものだけを意識してみたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。
猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。
復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。
やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、
勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。
過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。
魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、
四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。
輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。
けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、
やがて――“本当の自分”を見つけていく――。
そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。
※本作の章構成:
第一章:アカデミー&聖女覚醒編
第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編
第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編
※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位)
※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
おばさんは、ひっそり暮らしたい
波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜
AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。
そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。
さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。
しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。
それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。
だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。
そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる