婚約破棄され、思わず第二王子を殴りとばしました~国外追放ですか!心から感謝いたします~

四季 葉

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月の満ち始めた夜に

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 月が淡い光を放つ夜だった。
 もう少し経てば綺麗な満月が見られるが、まだ月が満ちてるまでにはもう少し時間がかかるそんな夜更け。

 「貴女も本当に変わっているのね・・。婚約者を略奪されたら普通は仕返しをしたいって思うでしょうに、私にお礼を言いたいだなんて」
 「私はフェルナンド殿下のことは、今考えても特に好意を抱いてはいなかったように思います。ただ王命と、家名の為に仕方なく婚約していただけで・・だからメリーナさんがフェルナンド殿下を奪ってくれて結果的には本当に助けられたんだなって」

 最初メリーナは、アメリアが本気で危害を加えてくると思いビクビクしていた。
 しかしどうやら本当に自分のことを心配しているようだとわかり・・・
 気がつけば布団の中で、窓から見える夜の月を眺めながら二人でポツリポツリと話しを始めていたのだ。

 夕食にだされた食事も質素な麦粥で好物ではなかったが、不思議と温かくまあまあな味だった・・
 迫真の演技をするためしばらくは本当に食事を抜いていたが、胃が空っぽだったからこそなお美味しく感じられた。

 なぜかはわからないが、心も満たされ気が緩んでしまったようだ。
 それに・・・お互いに何も得られていないからこうして話ができるのかもしれない。
 しかし実際の処分はこの女が一番重かったはず。生活も決して豊かではないのに、なぜこんなにも幸せそうにしているのかも気になるところだ。

「ああ、貴女は知らないようなので言っておきますけど、フェルナンドに殿下の敬称はもう不要ですわよ。
あの馬鹿王子、普段からあちらこちらで騒ぎを起していたようで、今回の騒ぎでついに王家の権威を貶める行為をしたとして王族の地位を剥奪。男爵として辺境の地へ送られました。もう二度と王都には戻れないでしょうね」
「そうなんですね・・。フェルナンド様のことすっかり忘れてました。でも命があるのならきっとまた良いこともありますよ」

「・・・。貴女なかなかいい性格してますのね。まあいいですわ・・。それと、言っときますけど私もこのままで終わるつもりはありませんことよ!
私は貴女のとばっちりで身分剥奪になり家が没落しましたが、いずれ這い上がって見せます。今回は危ない案件なのに依頼主の好条件に釣られて失敗しましたが、次からはまっとうな方法で、この美貌と女の武器を使いもっといい男に取り入り、前以上の地位について見せます。いずれ分かることなので貴女には話しておきますけどね。よ~く覚えておくことね。最後に笑うのはこの私よ!オホホホホホホ」

 突然、高笑いをするメリーナにアメリアは慌てる。

「めメリーナさん・・夜も遅いしみんな寝静まった時間なんですから、大きな声で高笑いはやめてください!隣の部屋で寝ているセルフィス様が起きてしまいますよ」
「そ、そうね。あの男が起きてきたら厄介だわ・・」

 なぜかセルフィスの名を聞いたとたんメリーナはおとなしくなる。どうやらセルフィスのことが苦手らしい。

 「それしても貴女も物好きよね・・あの治療師の一体どこがいいのやら・・好きなんでしょ。あの男のことが・・・」
 「・・。」

 いきなり図星をさされ、アメリアは顔を赤くする。

 「やっぱりね。まあ、私にはどうでもいいことだけど・・あの男、これ以上は貴女との距離を縮めるつもりはないんじゃないかしら。貴女を妹のように大切には思ってはいるようだけど」
 「え・・」

 それはアメリアも気がついてはいた。セルフィスはとても優しくしてくれるが、関係はまったく進展しないのだ。 
 友達以上恋人未満のまま。そう、昔とちっとも変わらずに・・
 アメリアは彼のことがずっと昔から好きだった。

 急に涙目になったアメリアにメリーナは慌てる。

 「ちょちょっと!別にあんたのこと泣かせるために言ったわけじゃないのよ!あんたがこのままでいいならそれで良し。それ以上の関係になりたかったらもっと積極的になりなさいってことよ!ああもう、今日は疲れたわ・・私はこれで寝るから後は自分で考えなさい」

 気まずそうにメリーナは布団をかぶると反対側を向き眠りについたのだ。
 アメリアはずっと彼女の言葉が気になりなかなか寝つくことができなかった。

 そして翌日の朝、メリーナは隣国へと帰っていったのである。
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