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これから私は幸せな人生を歩みます!
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「どうしたんですか?顔がこんなに真っ赤になって――」
セルフィスは慌ててアメリアの傍に駆け寄ると、彼女の額にそっと手を当てたのだ。
楽器でもつま弾くような繊細で白い指先が彼女の肌に触れ、おまけに顔までいつもより近いのだ。
完全な要領オーバーで、今にもアメリアは目を回して倒れそうになったが、寸でのところでなんとか堪える。
「な・・何でもありません。今日は暑いですから・・きっとそれで顔が赤くなっているんですよ・・アハハハハ・・」
「何言ってるんですか。今日は寒いですよ。やっぱり熱があるようですね・・。薬を煎じますから今夜は家に帰ってゆっくり休みなさい。明日は無理はせず家でゆっくり静養すること」
いつの間にか話が違う方向に反れて、このままではセルフィスに押し切られてしまいそうだ。
彼は薬湯の準備をするため慌ててその場を離れようとしたとき、アメリアは思わず彼の腕をつかんだのだ。
「ち、違うんです!そうじゃなくて・・その、貴方を意識して顔が赤くなっただけ、病気では全くないんです」
「・・!」
自分でも何を言っているんだろうと、恥ずかしさのあまりアメリアは俯き呆然としたが、それでも勢いに任せ言葉にする。
「その・・つまり私、ずっと前からセルフィス様のことが好きだったんです!」
「・・。私は・・亡くなった貴女のご両親からアメリア様のことを託されたんです。自分たちにもしものことがあったら娘を頼むと・・」
「そ、そうですよね。あくまで家族としてですよね・・。今まで本当にありがとうございました。私、この村を出て旅にでることにします・・」
アメリアは震える唇を噛みしめると無理に笑顔を作る。これ以上ここにいたら泣いてしまいそうだ。早くここを出ないと・・そう思っていると
彼は泣いてるような笑顔を浮かべたのだ。
「私はね、貴女が思っているような立派な人間ではないんですよ。本当はとても心が醜く狡猾な人間なんですよ。アメリア様の父君はそのことを知っていながら・・とても良くしてくれました。本当に感謝しています。その娘のあなたには本当に幸せになってもらいたい。だからもっと素敵な人と」
アメリアははっと顔を上げると、
「ここにいます!私の目の前に・・・ これ以上、素敵な人はもう見つかりません。
今まで言い寄ってくる男の人たちはいました。でも私の怪力がわかるとすぐに逃げて行きます。私が怪力だって知っているのに、いつも変わらず笑いかけ接してくれたのはセルフィス様だけです!お父様が気にかけたということはセルフィス様は決して悪い人ではありません!」
「本当に・・貴女という人は・・またそんな無茶苦茶なことを言って私を困らせるんですね・・」
彼は困った顔をしていたが、心なしか温かい微笑みを浮かべていた。
「もしも、セルフィス様のことで悪く言ったり危害を加える人がいたら私がやっつけます!腕っぷしには自信もあるし、熊のクーちゃんだって私が頼めば協力してくれます!私が貴方のことを守って見せます」
「・・それは、私が言うべきセリフですよ」
「え・・!」
セルフィスの苦笑に、アメリアは一瞬思考が停止する。
「・・わかりました。アメリアと一緒にこれから先も生きていけたら、とても楽しいでしょうね。それから私から一つお願いがあります」
「は、はい」
「私のことをセルフィス様と呼ぶのはやめてください。これからは、セルフィスと呼んでください」
アメリアは口をパクパクさせる。彼女にとっては非常に難易度が高いのだ。今までの慣れた呼び方を変えなければならない。
「セルフィスさん・・?」
「違いますよ。はい、もう一度」
悪戯っぽい顔をするとアメリアの頭の上に静かに口づけを落とす。
「え・・と、セルフィス・・」
「まあ、いいでしょう・・」
そう言うセルフィスはアメリアの唇に口づけを落としたのだ。
窓辺から見える月は優しく綺麗な満月になっていた。
ここから先の道のりは大変なことももちろんあったけど、この人と一緒になれて本当に良かったと心から思える幸せな人生をアメリアは送ったのでした。
・~ おわり ~・~
セルフィスは慌ててアメリアの傍に駆け寄ると、彼女の額にそっと手を当てたのだ。
楽器でもつま弾くような繊細で白い指先が彼女の肌に触れ、おまけに顔までいつもより近いのだ。
完全な要領オーバーで、今にもアメリアは目を回して倒れそうになったが、寸でのところでなんとか堪える。
「な・・何でもありません。今日は暑いですから・・きっとそれで顔が赤くなっているんですよ・・アハハハハ・・」
「何言ってるんですか。今日は寒いですよ。やっぱり熱があるようですね・・。薬を煎じますから今夜は家に帰ってゆっくり休みなさい。明日は無理はせず家でゆっくり静養すること」
いつの間にか話が違う方向に反れて、このままではセルフィスに押し切られてしまいそうだ。
彼は薬湯の準備をするため慌ててその場を離れようとしたとき、アメリアは思わず彼の腕をつかんだのだ。
「ち、違うんです!そうじゃなくて・・その、貴方を意識して顔が赤くなっただけ、病気では全くないんです」
「・・!」
自分でも何を言っているんだろうと、恥ずかしさのあまりアメリアは俯き呆然としたが、それでも勢いに任せ言葉にする。
「その・・つまり私、ずっと前からセルフィス様のことが好きだったんです!」
「・・。私は・・亡くなった貴女のご両親からアメリア様のことを託されたんです。自分たちにもしものことがあったら娘を頼むと・・」
「そ、そうですよね。あくまで家族としてですよね・・。今まで本当にありがとうございました。私、この村を出て旅にでることにします・・」
アメリアは震える唇を噛みしめると無理に笑顔を作る。これ以上ここにいたら泣いてしまいそうだ。早くここを出ないと・・そう思っていると
彼は泣いてるような笑顔を浮かべたのだ。
「私はね、貴女が思っているような立派な人間ではないんですよ。本当はとても心が醜く狡猾な人間なんですよ。アメリア様の父君はそのことを知っていながら・・とても良くしてくれました。本当に感謝しています。その娘のあなたには本当に幸せになってもらいたい。だからもっと素敵な人と」
アメリアははっと顔を上げると、
「ここにいます!私の目の前に・・・ これ以上、素敵な人はもう見つかりません。
今まで言い寄ってくる男の人たちはいました。でも私の怪力がわかるとすぐに逃げて行きます。私が怪力だって知っているのに、いつも変わらず笑いかけ接してくれたのはセルフィス様だけです!お父様が気にかけたということはセルフィス様は決して悪い人ではありません!」
「本当に・・貴女という人は・・またそんな無茶苦茶なことを言って私を困らせるんですね・・」
彼は困った顔をしていたが、心なしか温かい微笑みを浮かべていた。
「もしも、セルフィス様のことで悪く言ったり危害を加える人がいたら私がやっつけます!腕っぷしには自信もあるし、熊のクーちゃんだって私が頼めば協力してくれます!私が貴方のことを守って見せます」
「・・それは、私が言うべきセリフですよ」
「え・・!」
セルフィスの苦笑に、アメリアは一瞬思考が停止する。
「・・わかりました。アメリアと一緒にこれから先も生きていけたら、とても楽しいでしょうね。それから私から一つお願いがあります」
「は、はい」
「私のことをセルフィス様と呼ぶのはやめてください。これからは、セルフィスと呼んでください」
アメリアは口をパクパクさせる。彼女にとっては非常に難易度が高いのだ。今までの慣れた呼び方を変えなければならない。
「セルフィスさん・・?」
「違いますよ。はい、もう一度」
悪戯っぽい顔をするとアメリアの頭の上に静かに口づけを落とす。
「え・・と、セルフィス・・」
「まあ、いいでしょう・・」
そう言うセルフィスはアメリアの唇に口づけを落としたのだ。
窓辺から見える月は優しく綺麗な満月になっていた。
ここから先の道のりは大変なことももちろんあったけど、この人と一緒になれて本当に良かったと心から思える幸せな人生をアメリアは送ったのでした。
・~ おわり ~・~
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