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エピローグ
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影山は執行前の面談を行うため拘留室に来た。3回ノックしてから入るとそこには手錠を掛けたままの新居義則が座っていた。
「結構な男前が担当するだな。」
「私語を慎め。私が質問する内容に正直に答えればそれでいい。」
「どうせ殺されるんだ。煮るなり焼くなり好きにしなよ。」
影山は新居の言葉を無視して資料を確認した。
「新居義則。41歳。強姦罪で逮捕、起訴され先日SaBへの執行委託の判決が下された。間違いないな。」
「そんなもの確認しなくたってわかるだろ。それともなんだ今更無罪でしたなんて言う人でもいたのか?」
実際にいた。飲酒運転の冤罪で逮捕、起訴された松田だ。黒田が面談、執行内容を強引に押し進めたため、控訴請求が受理される前に亡くなってしまった。最後の最後まで無罪を訴えたが結果は変わらず、無惨な最後を迎えてしまった。
「お前の執行担当する影山慎だ。ハッキリ言っておくがお前を殺すつもりはない。だが、それなりの報いを受けてもらう。」
「慎?お前、あの女の男か。」
慎があさひの恋人だとわかると新居はニヤニヤ笑った。
「あの時、なんかブツブツ言ってるなと思って耳寄せて聞いてみたら慎、慎って念仏のように唱えてたよ。あんな上玉、そうそういねー…」
新居がいい終わる前に影山が胸ぐらを掴んだ。影山の目には殺気が滲んでいた。
「影山さん、離してください。落ち着いて。」
小山が影山を離そうとするが、なかなか離そうとしない。それに便乗するかのように新居は影山を挑発する。
「どうした?殺したいか?ならさっさと殺せよ。どうせここは犯罪者を殺すんだろう。殺すつもりはない?笑わせるな。ほら、どうした。さっさとやれよ。」
怒りに狂っていた影山だが、突き放すように手を離した。そして机を叩いた。
「言ったはずだ。お前は殺さない。生きて、生きて生きて生き抜いて、お前のやった罪の重さを思い知らせてやるから覚悟しろ。」
そういうと椅子に座り、持っていた資料のページをめくる。
「新居義則。お前への執行内容を発表する。」
そして影山は新居への罰を発表した。どのような罰を与えるか。どんな内容がふさわしいかはここまで読んでくれたあなたの正義に任せてみようと思う。更生を目的とした罰か。はたまた命を落としてしまうかもしれない罰か。慎重に考えて決めてほしい。
ここで忘れてはならない男がいる。それはSaBの創設者であり、最高責任者を解任された黒田誠也である。
職権濫用罪で逮捕起訴された後の判決は…。
「判決を言い渡す。黒田誠也をSaBへの執行委託とする。」
SaBでの罰を受けることを言い渡された。そしてその黒田に与えられた罰は…。
「黒田誠也。あなたには個人情報の公開及びSaBからの追放を言い渡す。あなたはもう2度とここの敷居を跨ぐことはできない。」
榎本にそう告げられると黒田はSaBから追い出された。
それから1年が経った。黒のキャップに黒のマスクで顔を隠し、周りをキョロキョロしながらコンビニへ向かう。あれから黒田は不摂生極まりない生活を送り、体は痩せ細り、無精髭が伸びて、髪もボサボサに伸びた状態だった。
周囲の視線が怖い。もしかして自分が黒田だと気づかれたのかもしれない。1年前には怖くもなんともなかった恐怖が黒田の精神を襲う。前に住んでた家は個人情報が公開されたため、逃げるように住所を変えた。ボロボロのアパートの1階に住み、気づかれないように過ごしていた。
今日もコンビニでこっそり買ったカップ麺と賞味期限が切れかけのお惣菜だった。死人のように歩いていたため、後ろから来る自転車に気づかなかった。慌てて避けたせいで、レジ袋から買ったものが溢れてしまった。どうしてこんなことになってしまったのか。自分はただこの世から犯罪を無くしたかっただけなのに。何を間違えてしまったのか。そんな黒田に追い打ちをかけるかのように雨が降ってきた。傘も刺さず震える黒田に雨水が落ちてくる。
しばらくうずくまっていると雨水の感触が無くなった。顔を上げると誰かが自分に傘を刺している。その顔をよく見ると。
「く、熊田のジジイ。」
「酷い悪態を吐くんだな。黒田元最高責任者。」
黒田がSaBから排除した熊田康弘だった。
「何しに来た?」
「追い出された者同士。顔を拝みに来てやったんだよ。」
「せいぜい気が晴れただろう。好きなだけ笑うがいい。」
黒田は自嘲しながら帰ろうとする。
「黒田君。忘れ物だ。」
熊田は黒田が買ったものを手渡した。
受け取ると黒田は小さな声で熊田の現在を聞いた。
「青森の執行場で監視職をやってるよ。細々だが君よりはマシな生活を送ってる。」
「そうか…。」
そういうと黒田は背中を丸めて帰って行った。
「黒田君。君は生きにくいかもしれないが、もしやり直したいと思うならいつでも私に連絡するといい。SaBは人手が少なくて困っている。君みたいなものでもいないよりかはマシだ。」
黒田は優しい言葉をかけてくれる熊田を無視し帰って行った。
いつだってやり直せる。雨に打たれながら去っていく黒田を見ながら熊田はそう思った。
「結構な男前が担当するだな。」
「私語を慎め。私が質問する内容に正直に答えればそれでいい。」
「どうせ殺されるんだ。煮るなり焼くなり好きにしなよ。」
影山は新居の言葉を無視して資料を確認した。
「新居義則。41歳。強姦罪で逮捕、起訴され先日SaBへの執行委託の判決が下された。間違いないな。」
「そんなもの確認しなくたってわかるだろ。それともなんだ今更無罪でしたなんて言う人でもいたのか?」
実際にいた。飲酒運転の冤罪で逮捕、起訴された松田だ。黒田が面談、執行内容を強引に押し進めたため、控訴請求が受理される前に亡くなってしまった。最後の最後まで無罪を訴えたが結果は変わらず、無惨な最後を迎えてしまった。
「お前の執行担当する影山慎だ。ハッキリ言っておくがお前を殺すつもりはない。だが、それなりの報いを受けてもらう。」
「慎?お前、あの女の男か。」
慎があさひの恋人だとわかると新居はニヤニヤ笑った。
「あの時、なんかブツブツ言ってるなと思って耳寄せて聞いてみたら慎、慎って念仏のように唱えてたよ。あんな上玉、そうそういねー…」
新居がいい終わる前に影山が胸ぐらを掴んだ。影山の目には殺気が滲んでいた。
「影山さん、離してください。落ち着いて。」
小山が影山を離そうとするが、なかなか離そうとしない。それに便乗するかのように新居は影山を挑発する。
「どうした?殺したいか?ならさっさと殺せよ。どうせここは犯罪者を殺すんだろう。殺すつもりはない?笑わせるな。ほら、どうした。さっさとやれよ。」
怒りに狂っていた影山だが、突き放すように手を離した。そして机を叩いた。
「言ったはずだ。お前は殺さない。生きて、生きて生きて生き抜いて、お前のやった罪の重さを思い知らせてやるから覚悟しろ。」
そういうと椅子に座り、持っていた資料のページをめくる。
「新居義則。お前への執行内容を発表する。」
そして影山は新居への罰を発表した。どのような罰を与えるか。どんな内容がふさわしいかはここまで読んでくれたあなたの正義に任せてみようと思う。更生を目的とした罰か。はたまた命を落としてしまうかもしれない罰か。慎重に考えて決めてほしい。
ここで忘れてはならない男がいる。それはSaBの創設者であり、最高責任者を解任された黒田誠也である。
職権濫用罪で逮捕起訴された後の判決は…。
「判決を言い渡す。黒田誠也をSaBへの執行委託とする。」
SaBでの罰を受けることを言い渡された。そしてその黒田に与えられた罰は…。
「黒田誠也。あなたには個人情報の公開及びSaBからの追放を言い渡す。あなたはもう2度とここの敷居を跨ぐことはできない。」
榎本にそう告げられると黒田はSaBから追い出された。
それから1年が経った。黒のキャップに黒のマスクで顔を隠し、周りをキョロキョロしながらコンビニへ向かう。あれから黒田は不摂生極まりない生活を送り、体は痩せ細り、無精髭が伸びて、髪もボサボサに伸びた状態だった。
周囲の視線が怖い。もしかして自分が黒田だと気づかれたのかもしれない。1年前には怖くもなんともなかった恐怖が黒田の精神を襲う。前に住んでた家は個人情報が公開されたため、逃げるように住所を変えた。ボロボロのアパートの1階に住み、気づかれないように過ごしていた。
今日もコンビニでこっそり買ったカップ麺と賞味期限が切れかけのお惣菜だった。死人のように歩いていたため、後ろから来る自転車に気づかなかった。慌てて避けたせいで、レジ袋から買ったものが溢れてしまった。どうしてこんなことになってしまったのか。自分はただこの世から犯罪を無くしたかっただけなのに。何を間違えてしまったのか。そんな黒田に追い打ちをかけるかのように雨が降ってきた。傘も刺さず震える黒田に雨水が落ちてくる。
しばらくうずくまっていると雨水の感触が無くなった。顔を上げると誰かが自分に傘を刺している。その顔をよく見ると。
「く、熊田のジジイ。」
「酷い悪態を吐くんだな。黒田元最高責任者。」
黒田がSaBから排除した熊田康弘だった。
「何しに来た?」
「追い出された者同士。顔を拝みに来てやったんだよ。」
「せいぜい気が晴れただろう。好きなだけ笑うがいい。」
黒田は自嘲しながら帰ろうとする。
「黒田君。忘れ物だ。」
熊田は黒田が買ったものを手渡した。
受け取ると黒田は小さな声で熊田の現在を聞いた。
「青森の執行場で監視職をやってるよ。細々だが君よりはマシな生活を送ってる。」
「そうか…。」
そういうと黒田は背中を丸めて帰って行った。
「黒田君。君は生きにくいかもしれないが、もしやり直したいと思うならいつでも私に連絡するといい。SaBは人手が少なくて困っている。君みたいなものでもいないよりかはマシだ。」
黒田は優しい言葉をかけてくれる熊田を無視し帰って行った。
いつだってやり直せる。雨に打たれながら去っていく黒田を見ながら熊田はそう思った。
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