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一作目
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田崎明日香。21歳。東京都出身。神城大学の3年生。高校生の時から入退院を繰り返している。これで4回目。ぎこちない会話から得られた情報はこれくらいだった。春樹が言った情報は年齢39歳。小説家。独身。東京都出身。これくらいだった。別に対して知りたくもないし、知る必要もないと思っていた。入院している病室は4人部屋だが、田崎と春樹の前のベットは空いている為、この病室には2人しかいない。
「工藤さんはどんな本を書いているんですか?」
「別に、思いついたら書いてる程度ですけど。」
「何か代表作とかあるんですか?」
「一応、人魚の住処。構文社の新人賞を受賞してます。」
「すごいじゃないですか。読ませてくださいよ。」
「本屋に行けばあるんじゃないですか?このパソコンには入ってませんよ。」
「えー、そんな。」
田崎の質問に答えながら執筆をする。正直言って邪魔でしかないが、答えなければ延々と質問攻めを受けて、答えるまで終わらないので渋々答えている。こんなやりとりを30分ほど続けていると病室がノックされた。
「明日香、おはよう。体調はどう?」
入ってきたのは田崎栞里。田崎明日香の母親だ。栞里と工藤は目が合うと会釈をした。
「初めまして。明日香の母の栞里と申します。娘がお世話になっております。」
「工藤春樹です。こちらこそお世話になってます。」
「この娘ったら誰にでも声をかけるから遠慮しなさいって言っても聞かなくて。迷惑かけてませんか?」
初日から結構迷惑だったが、本人の目の前で言うのは可哀想だと思い、そんなことないですよと言って安心させた。
翌日。春樹がトイレから戻ると明日香は本を読んでいた。しかしよりにもよって読んでいる本は「人魚の住処」だった。
「それ、俺の。」
「ああ、工藤さん。母に頼んで買ってもらったんです。これ以外にも工藤さんの本は一通り揃えてあります。」
余計なお世話かと思ったが、スランプの自分には読者の感想が間近で聞けるいい機会なのかもしれない。言いたい文句をグッと堪えてベッドへと戻った。明日香は読んだ本の栞に簡単な感想を書いてそれを春樹に見せてくれた。
「人魚の住処。とっても面白かったです。仲睦まじい幼馴染の境遇が描かれてて読破しちゃいました。2冊目も楽しみにしてますね。明日香」
明日香には申し訳ないが、この作品以外は泣かず飛ばずで評価が低い。何とかして書き直そうと思ってはいるが、そのきっかけがわからない。春樹は横で楽しそうに本を読んでいる明日香を横目にパソコンで執筆を続けた。
「黄昏の街。読ませていただきました。人魚の住処とは180度違う世界観がとっても良かったです。でも登場人物の関係性は考えた方がいいかもしれません。明日香」
また明日香から感想文付きの栞が送られた。黄昏の街は結構な自信作だったが、隣の人に酷評されると意外と心にグサっと刺さるものだ。しかし、その栞にはしっかりと改善点が書かれている。レビューとは違い、しっかりと指摘されるのは嬉しいと思う春樹だった。
「紅の涙。読ませていただきました。春樹さんの文章は人間関係よりもミステリーやサスペンスの方が向いてると思います。よければ参考にしてください。」
明日香の栞にはそう書かれていた。ミステリーやサスペンスは過去にボツにした作品がある。いろんなところで取材をして、トリックを考えて書いてみたがしっくりこなくて書くのをやめた。パソコンのフォルダを確認すると1番下の段に残っていた。読み直してみるとあとはエピローグのみだった。せっかくだから書き直してみるかと気分転換のつもりで執筆に取り組んだ。
翌日。明日香が持っていたタブレットに小説のPDFを送り、読んでもらった。
「前に栞に書いてあった、ミステリー小説です。一度ボツにした作品ですが、良かったら読んでください。」
明日香は微笑んで頭を下げた。
「ありがとうございます。読ませていただきますね。」
そう言って明日香はタブレットで春樹の書いた小説を読み始めた。感想は意外と早く帰ってきた。
「読ませていただきました。確かにボツにしたくなる気持ちはわかります。この系統だったらホラーもいける気がします。完成したらまた読ませてください。」
サスペンスにホラー。明日香はダークな話が好きなのか?見た目に合わず、変な趣味があるんだなと思った。
「工藤さんはどんな本を書いているんですか?」
「別に、思いついたら書いてる程度ですけど。」
「何か代表作とかあるんですか?」
「一応、人魚の住処。構文社の新人賞を受賞してます。」
「すごいじゃないですか。読ませてくださいよ。」
「本屋に行けばあるんじゃないですか?このパソコンには入ってませんよ。」
「えー、そんな。」
田崎の質問に答えながら執筆をする。正直言って邪魔でしかないが、答えなければ延々と質問攻めを受けて、答えるまで終わらないので渋々答えている。こんなやりとりを30分ほど続けていると病室がノックされた。
「明日香、おはよう。体調はどう?」
入ってきたのは田崎栞里。田崎明日香の母親だ。栞里と工藤は目が合うと会釈をした。
「初めまして。明日香の母の栞里と申します。娘がお世話になっております。」
「工藤春樹です。こちらこそお世話になってます。」
「この娘ったら誰にでも声をかけるから遠慮しなさいって言っても聞かなくて。迷惑かけてませんか?」
初日から結構迷惑だったが、本人の目の前で言うのは可哀想だと思い、そんなことないですよと言って安心させた。
翌日。春樹がトイレから戻ると明日香は本を読んでいた。しかしよりにもよって読んでいる本は「人魚の住処」だった。
「それ、俺の。」
「ああ、工藤さん。母に頼んで買ってもらったんです。これ以外にも工藤さんの本は一通り揃えてあります。」
余計なお世話かと思ったが、スランプの自分には読者の感想が間近で聞けるいい機会なのかもしれない。言いたい文句をグッと堪えてベッドへと戻った。明日香は読んだ本の栞に簡単な感想を書いてそれを春樹に見せてくれた。
「人魚の住処。とっても面白かったです。仲睦まじい幼馴染の境遇が描かれてて読破しちゃいました。2冊目も楽しみにしてますね。明日香」
明日香には申し訳ないが、この作品以外は泣かず飛ばずで評価が低い。何とかして書き直そうと思ってはいるが、そのきっかけがわからない。春樹は横で楽しそうに本を読んでいる明日香を横目にパソコンで執筆を続けた。
「黄昏の街。読ませていただきました。人魚の住処とは180度違う世界観がとっても良かったです。でも登場人物の関係性は考えた方がいいかもしれません。明日香」
また明日香から感想文付きの栞が送られた。黄昏の街は結構な自信作だったが、隣の人に酷評されると意外と心にグサっと刺さるものだ。しかし、その栞にはしっかりと改善点が書かれている。レビューとは違い、しっかりと指摘されるのは嬉しいと思う春樹だった。
「紅の涙。読ませていただきました。春樹さんの文章は人間関係よりもミステリーやサスペンスの方が向いてると思います。よければ参考にしてください。」
明日香の栞にはそう書かれていた。ミステリーやサスペンスは過去にボツにした作品がある。いろんなところで取材をして、トリックを考えて書いてみたがしっくりこなくて書くのをやめた。パソコンのフォルダを確認すると1番下の段に残っていた。読み直してみるとあとはエピローグのみだった。せっかくだから書き直してみるかと気分転換のつもりで執筆に取り組んだ。
翌日。明日香が持っていたタブレットに小説のPDFを送り、読んでもらった。
「前に栞に書いてあった、ミステリー小説です。一度ボツにした作品ですが、良かったら読んでください。」
明日香は微笑んで頭を下げた。
「ありがとうございます。読ませていただきますね。」
そう言って明日香はタブレットで春樹の書いた小説を読み始めた。感想は意外と早く帰ってきた。
「読ませていただきました。確かにボツにしたくなる気持ちはわかります。この系統だったらホラーもいける気がします。完成したらまた読ませてください。」
サスペンスにホラー。明日香はダークな話が好きなのか?見た目に合わず、変な趣味があるんだなと思った。
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