6 / 6
Chapter 1-0 最初の一歩
しおりを挟む
アレクシオスと一緒に近くにある街へ向かうことになった。彼が言うにはここ最近は魔法式自動車なる乗り物が首都や主要都市では一般的な交通手段になりつつあるようだ。しかし、コレから向かう街は比較的田舎で現在でも馬車が主流だという。アレクシオスの納品も馬車で行くと聞いたのだが……目の前の馬車には馬がない。
「アレクシオス、これ馬車だよね?その、馬はどうしたの」
「あー……これね。俺が押していくの」
まって、今この獣人なんて言った?
「回復薬とか瓶ものって箱に入れて積んでいくと楽なんだよね~。荷物もまとまってると獣人の体力とスキルで街まですぐに運べるんだ。エリスも中に座ってて!」
ポーションや薬草に囲まれて、私と監督は小一時間獣人が引く馬車に揺られた。道中、何度か馬車に何かぶつかったような音が聞こえて、動物っぽい影が何度か見えたような気がした。
アレクシオス、まさかこの馬車で動物とか轢いていないだろうな?
その不安に揺られたまま、私は馬車で気絶した。
「エリス~、街に着いたよ……あれ寝てるの?」
アレクシオスの呑気な声で起こされたのは出発してから少し日が高くなった頃だった。彼に馬車から降ろしてもらうと……馬車のテント部分が所々赤黒く染まっていた。
「アレクシオス、あの汚れは?」
「あー……また魔物轢いちゃったんだね。オレは獣人の力の制御がいまいち下手だから、商品を守りながら戦うことができないんだ」
「もしかして、昨日の夜あたしを襲ってきた原因て……獣人の力が原因?」
「それもある。ちゃんとした獣人って成人するまでに獣の本能を抑える術を身につけるんだけど……それって獣人同士の親子や師弟から教わるんだよね」
獣の本能……何故だろう、いい予感がしない。それ以外にも彼の言い回しに引っかかるところがある。もしかして……。
「アレクシオスには獣人の師匠がいないってこと?」
「昔はいたんだけどね」
「……余計なこと聞いてごめん」
「いいよ、むしろエリスにはいつか話しておきたいと思ってたし」
アレクシオスはふにゃりと笑い子供をあやすように私の頭を撫でた。エリスの肉体年齢は12歳とされているのだが、彼の中では完全に子供として認識されてるようだ。彼が悪意を持っての扱いではないのだろうが、こちらとしては複雑である。
そんなやり取りを終えたところ、長柄の斧を持ち甲冑を身につけた大男がこちらに話しかけてきた。
「アレクじゃないか!久しぶりだな! 最近納品にも全然来ないからベーカリーの姉さんも道具屋の婆さんも心配してたんだぞ」
「いつもの魔力不足で人型化出来なくなってさ、そっち行ける状況じゃなかったんだ。そこをエリスに助けてもらったんだ」
そう言ってアレクシオスは私を見下ろした。守衛は物珍しそうに私を見下ろす。ひかえめにいって、威圧感がすごい。
「ほう、アレクを助けたのか……お前さんらもしかして契約魔法でも使ったのか?だとしたら、役所に申請しないとまずいぞ」
「今日はそれがメインできたんだ。エリスの戸籍も作りたいから、役所に話を通しておいてくれる?」
「おうよ、任せとけ。ところでアレク、お前さん幼女趣味にでも目覚めたのか?」
「オレの命の恩人だって言ってんだろ齧るぞ」
アレクシオスは守衛に思いっきり牙を剥ける。守衛は青ざめながら、冗談だよ。アレクシオスを宥めていた。獣人の目は全く笑っていなかった。あまり彼を怒らせないようにしよう、私はこっそり決意した。
「それじゃお嬢ちゃん、仮の身分証をつくるからこいつに手ェかざしてくれ」
守衛が差し出したのはA5サイズくらいの黒く艶めいてる石版。漆器に近いけど鉱石にも見える。守衛の指示通り、そこに手をかざすと石版が白っぽく発光した。眩しさからつい目を閉ざすが、すぐに光が消えて目を開ける。いつのまにか、私の手には黒いカードが握られていた。
「それ、仮の身分証ね。役所の窓口に出せばちゃんとした君の身分証が作られるから、それまで無くさないでな」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、オレたち行くね」
「アレクちょい待ち。最近市場の方で子供が失踪するって報告が数件上がってるんだ。お前さんは鼻が効くから問題ないだろうが……念のため気ィつけろよ」
「ありがとう」
守衛に見送られて、私たちは門をくぐる。アレクシオスにはないしょだが、私は完全に童心に戻り初めての街に期待を寄せていた。
「アレクシオス、これ馬車だよね?その、馬はどうしたの」
「あー……これね。俺が押していくの」
まって、今この獣人なんて言った?
「回復薬とか瓶ものって箱に入れて積んでいくと楽なんだよね~。荷物もまとまってると獣人の体力とスキルで街まですぐに運べるんだ。エリスも中に座ってて!」
ポーションや薬草に囲まれて、私と監督は小一時間獣人が引く馬車に揺られた。道中、何度か馬車に何かぶつかったような音が聞こえて、動物っぽい影が何度か見えたような気がした。
アレクシオス、まさかこの馬車で動物とか轢いていないだろうな?
その不安に揺られたまま、私は馬車で気絶した。
「エリス~、街に着いたよ……あれ寝てるの?」
アレクシオスの呑気な声で起こされたのは出発してから少し日が高くなった頃だった。彼に馬車から降ろしてもらうと……馬車のテント部分が所々赤黒く染まっていた。
「アレクシオス、あの汚れは?」
「あー……また魔物轢いちゃったんだね。オレは獣人の力の制御がいまいち下手だから、商品を守りながら戦うことができないんだ」
「もしかして、昨日の夜あたしを襲ってきた原因て……獣人の力が原因?」
「それもある。ちゃんとした獣人って成人するまでに獣の本能を抑える術を身につけるんだけど……それって獣人同士の親子や師弟から教わるんだよね」
獣の本能……何故だろう、いい予感がしない。それ以外にも彼の言い回しに引っかかるところがある。もしかして……。
「アレクシオスには獣人の師匠がいないってこと?」
「昔はいたんだけどね」
「……余計なこと聞いてごめん」
「いいよ、むしろエリスにはいつか話しておきたいと思ってたし」
アレクシオスはふにゃりと笑い子供をあやすように私の頭を撫でた。エリスの肉体年齢は12歳とされているのだが、彼の中では完全に子供として認識されてるようだ。彼が悪意を持っての扱いではないのだろうが、こちらとしては複雑である。
そんなやり取りを終えたところ、長柄の斧を持ち甲冑を身につけた大男がこちらに話しかけてきた。
「アレクじゃないか!久しぶりだな! 最近納品にも全然来ないからベーカリーの姉さんも道具屋の婆さんも心配してたんだぞ」
「いつもの魔力不足で人型化出来なくなってさ、そっち行ける状況じゃなかったんだ。そこをエリスに助けてもらったんだ」
そう言ってアレクシオスは私を見下ろした。守衛は物珍しそうに私を見下ろす。ひかえめにいって、威圧感がすごい。
「ほう、アレクを助けたのか……お前さんらもしかして契約魔法でも使ったのか?だとしたら、役所に申請しないとまずいぞ」
「今日はそれがメインできたんだ。エリスの戸籍も作りたいから、役所に話を通しておいてくれる?」
「おうよ、任せとけ。ところでアレク、お前さん幼女趣味にでも目覚めたのか?」
「オレの命の恩人だって言ってんだろ齧るぞ」
アレクシオスは守衛に思いっきり牙を剥ける。守衛は青ざめながら、冗談だよ。アレクシオスを宥めていた。獣人の目は全く笑っていなかった。あまり彼を怒らせないようにしよう、私はこっそり決意した。
「それじゃお嬢ちゃん、仮の身分証をつくるからこいつに手ェかざしてくれ」
守衛が差し出したのはA5サイズくらいの黒く艶めいてる石版。漆器に近いけど鉱石にも見える。守衛の指示通り、そこに手をかざすと石版が白っぽく発光した。眩しさからつい目を閉ざすが、すぐに光が消えて目を開ける。いつのまにか、私の手には黒いカードが握られていた。
「それ、仮の身分証ね。役所の窓口に出せばちゃんとした君の身分証が作られるから、それまで無くさないでな」
「はい、ありがとうございます」
「じゃあ、オレたち行くね」
「アレクちょい待ち。最近市場の方で子供が失踪するって報告が数件上がってるんだ。お前さんは鼻が効くから問題ないだろうが……念のため気ィつけろよ」
「ありがとう」
守衛に見送られて、私たちは門をくぐる。アレクシオスにはないしょだが、私は完全に童心に戻り初めての街に期待を寄せていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
腹違いの妹にすべてを奪われた薄幸の令嬢が、義理の母に殴られた瞬間、前世のインテリヤクザなおっさんがぶちギレた場合。
灯乃
ファンタジー
十二歳のときに母が病で亡くなった途端、父は後妻と一歳年下の妹を新たな『家族』として迎え入れた。
彼らの築く『家族』の輪から弾き出されたアニエスは、ある日義母の私室に呼び出され――。
タイトル通りのおっさんコメディーです。
転生後はゆっくりと
衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。
日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。
そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。
でも、リリは悲観しない。
前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。
目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。
全25話(予定)
【完結】無能と婚約破棄された令嬢、辺境で最強魔導士として覚醒しました
東野あさひ
ファンタジー
無能の烙印、婚約破棄、そして辺境追放――。でもそれ、全部“勘違い”でした。
王国随一の名門貴族令嬢ノクティア・エルヴァーンは、魔力がないと断定され、婚約を破棄されて辺境へと追放された。
だが、誰も知らなかった――彼女が「古代魔術」の適性を持つ唯一の魔導士であることを。
行き着いた先は魔物の脅威に晒されるグランツ砦。
冷徹な司令官カイラスとの出会いをきっかけに、彼女の眠っていた力が次第に目を覚まし始める。
無能令嬢と嘲笑された少女が、辺境で覚醒し、最強へと駆け上がる――!
王都の者たちよ、見ていなさい。今度は私が、あなたたちを見下ろす番です。
これは、“追放令嬢”が辺境から世界を変える、痛快ざまぁ×覚醒ファンタジー。
我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。
たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。
しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。
そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。
ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。
というか、甘やかされてません?
これって、どういうことでしょう?
※後日談は激甘です。
激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。
※小説家になろう様にも公開させて頂いております。
ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。
タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身
にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。
姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる