114 / 174
113
しおりを挟む
日本へ戻っても取材が待っていた。
賞賛よりも、よのぎさんの、
「おかえり」
が嬉しい。
「ただいま。そば食べたい」
「寒いけど、冷たい天ぷら付き?」
「よくわかるね」
「あなたの奥さんだからね」
ちょっといいお店でそばをすすりながら、よのぎさんは家の工程表を見せてくれた。
「一人で建築事務所に行ったらまた写真撮られるよ」
「だから羽切さんがついてきてくれたの。歩きながら平然と『今はお腹に穴が開いている状態』なんて言うのよ。手術痕が痛そうなのに、ちゃんと私が一人で撮られないように密着してくれて。それもこれも七さんへの愛なんだろうな。普通できないよ。自分がずっと慕っていた男性が若いだけの女と結婚したら恨むはず」
「病気になってますます強くなったのかな」
「羽切さん、自分でもそう言ってた」
そば湯を飲んでマンションに戻る。
妻の隣りで眠ることが嬉しい。
次の日だけ休みで、また仕事。
お土産のチョコレートを一日一粒しか食べないよのぎさんを偉いなと思う。どうして自制できるのだろう。
カメラマンからようやくニューヨークの写真が送られてきて、それを見て気味が微笑むから、つられてにやける。
今日はうちで日本のコレクションのためによのぎさんの弟さんと打ち合わせ。
「バイト助かります。大学院へ進みたいので」
モデルはあくまで彼にとっては臨時収入。
家に呼んだのは、よのぎさんも会いたいだろうと思ったから。
「譲、見て。今、七さんと暮らす家を建てているの」
「でかいな。この納戸で俺暮らせそう」
「お前と一緒なんて御免蒙る」
よのぎさんのそういう口調を初めて聞いた。まだ心を許されていないのだろうか。男と女でもきょうだいだから笑った顔が似ている。
賞賛よりも、よのぎさんの、
「おかえり」
が嬉しい。
「ただいま。そば食べたい」
「寒いけど、冷たい天ぷら付き?」
「よくわかるね」
「あなたの奥さんだからね」
ちょっといいお店でそばをすすりながら、よのぎさんは家の工程表を見せてくれた。
「一人で建築事務所に行ったらまた写真撮られるよ」
「だから羽切さんがついてきてくれたの。歩きながら平然と『今はお腹に穴が開いている状態』なんて言うのよ。手術痕が痛そうなのに、ちゃんと私が一人で撮られないように密着してくれて。それもこれも七さんへの愛なんだろうな。普通できないよ。自分がずっと慕っていた男性が若いだけの女と結婚したら恨むはず」
「病気になってますます強くなったのかな」
「羽切さん、自分でもそう言ってた」
そば湯を飲んでマンションに戻る。
妻の隣りで眠ることが嬉しい。
次の日だけ休みで、また仕事。
お土産のチョコレートを一日一粒しか食べないよのぎさんを偉いなと思う。どうして自制できるのだろう。
カメラマンからようやくニューヨークの写真が送られてきて、それを見て気味が微笑むから、つられてにやける。
今日はうちで日本のコレクションのためによのぎさんの弟さんと打ち合わせ。
「バイト助かります。大学院へ進みたいので」
モデルはあくまで彼にとっては臨時収入。
家に呼んだのは、よのぎさんも会いたいだろうと思ったから。
「譲、見て。今、七さんと暮らす家を建てているの」
「でかいな。この納戸で俺暮らせそう」
「お前と一緒なんて御免蒙る」
よのぎさんのそういう口調を初めて聞いた。まだ心を許されていないのだろうか。男と女でもきょうだいだから笑った顔が似ている。
3
あなたにおすすめの小説
不遇な令嬢は次期組長の秘めたる溺愛に絡め取られる。
翼 うみ
恋愛
父の会社を立て直す交換条件のため、ほぼ家族に身売りされた形で関東最大級の極道・桜花組の次期組長に嫁入りしたジェシカ。しかし母を亡くして以降、義母と義妹に虐げられていたジェシカは実家を出られるなら、と前向きだった。夫となる和仁には「君を愛することはない」と冷たく突き放される。それでもジェシカは傷つくことはなく、自分にできることを探して楽しんでいた。
和仁には辛い過去がありそれ故に誰のことも愛さないと決めていたが、純真で健気なジェシカに段々と惹かれてゆき――。
政略結婚から始まる溺愛シンデレラストーリー。
定時で帰りたい私と、残業常習犯の美形部長。秘密の夜食がきっかけで、胃袋も心も掴みました
藤森瑠璃香
恋愛
「お先に失礼しまーす!」がモットーの私、中堅社員の結城志穂。
そんな私の天敵は、仕事の鬼で社内では氷の王子と恐れられる完璧美男子・一条部長だ。
ある夜、忘れ物を取りに戻ったオフィスで、デスクで倒れるように眠る部長を発見してしまう。差し入れた温かいスープを、彼は疲れ切った顔で、でも少しだけ嬉しそうに飲んでくれた。
その日を境に、誰もいないオフィスでの「秘密の夜食」が始まった。
仕事では見せない、少しだけ抜けた素顔、美味しそうにご飯を食べる姿、ふとした時に見せる優しい笑顔。
会社での厳しい上司と、二人きりの時の可愛い人。そのギャップを知ってしまったら、もう、ただの上司だなんて思えない。
これは、美味しいご飯から始まる、少し大人で、甘くて温かいオフィスラブ。
恋とキスは背伸びして
葉月 まい
恋愛
結城 美怜(24歳)…身長160㎝、平社員
成瀬 隼斗(33歳)…身長182㎝、本部長
年齢差 9歳
身長差 22㎝
役職 雲泥の差
この違い、恋愛には大きな壁?
そして同期の卓の存在
異性の親友は成立する?
数々の壁を乗り越え、結ばれるまでの
二人の恋の物語
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜
白亜凛
恋愛
佐藤弥衣 25歳
yayoi
×
月城尊 29歳
takeru
母が亡くなり、失意の中現れた謎の御曹司
彼は、母が持っていた指輪を探しているという。
指輪を巡る秘密を探し、
私、弥衣は、愛のない結婚をしようと思います。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる