1 / 13
1
しおりを挟む
運命の恋とか出会いなんて存在しない。他人なんて信じちゃだめ。
そりゃ、びっくりした。社会人になって恋人がちっともできないと嘆いたら先輩が合コンに誘ってくれて、そこでちょっといいなと思った男性とその後本屋で、同僚と行ったボルダリングと瞑想で再会。
「奇遇ですね」
「ええ、本当に」
恋をすると都合よく考えてしまうものなのだ。そして、それを運命と名付ける。
ある日私が一人でドライヤーを電気店で選んでいたら、
「これがおすすめですよ」
と髪が短いくせに彼はあれこれ教えてくれた。それまで恋らしきものをしてこなかった私はスマートな彼にぽうっとなってしまって、トントン拍子でお付き合いをすることになった。あとで判明したのだが、彼は私の同僚や知り合いを調べまくって私の行動を把握していたのだ。ぞっとした。その気になってうっかり婚約までしてしまった自分を呪いたい。
彼曰く、私は、
「俺の隣りにいるのにちょうどいい」
らしい。地味な顔だろうか。派手ではない服装を好まれたのかもしれない。
母が亡くなったことを理由に延期を申し出たら、諸々のお金を請求された。彼の中では私の母が死のうとも半年後の結婚式は動かせないようだ。
そんな人無理です。
友人たちが間に入ってくれて婚約解消は大事にはならなかったが、母の葬儀の途中で別の厄介事が判明する。母は仕事をしていたのに貯金がほぼない。私は一人暮らしをしていたので実家に母の恋人が転がり込んでいることも知った。その人に、
「ここは俺の家だ」
と言い張られる。どう考えてもその人が母の預金を使い込んでいることは明らかだ。母はお金に困っている素振りは見せなかったし、看護師をしながら私を短大にまで出してくれた。私は権利を主張し、その過程で自分に姉がいることを初めて知る。会ったこともなければ、母からそのようなことを聞かされたこともない。
急に自分の人生が慌ただしい。今までが平穏すぎた。いつも頼っていた母もいない。
真夜中というのは寂しさを倍増させる。もう恋人じゃないからあの人にも連絡できない。きっともう半年後に結婚ができる女性を探しているに決まっている。
私はいつも読んでいるネットの小説の投稿サイトを見る。
お気に入りの作家さんは俳句を詠む人。
『へいマミー これから私 どうすんの』
まさに今の私の気持ちだ。
母の恋人は内縁の間柄だったともっとお金を要求してきた。確かに生命保険は私が受取人になっている。それをよこせなんて強欲すぎる。母が亡くなったから家の光熱費を私に払えなんて冗談じゃない。姉を取り込んで、母の恋人を追い出そう。それしかない。
私と姉で財産を二分の一。法的にはそうなっているが、探りを入れたところその男は母の職場の人いわく、
「雨だからって迎えに来てくれる優しい人」
らしい。
嘘だ。その人は母よりも10も若かった。優しそうな顔なのにお金の話になると般若のような形相に早変わり。仕舞には舎弟のような男を同席させ、私を恫喝した。当然、録音させていただきました。
亡くなった母と男運がない母子だねと笑いたい。
今更か。
そりゃ、びっくりした。社会人になって恋人がちっともできないと嘆いたら先輩が合コンに誘ってくれて、そこでちょっといいなと思った男性とその後本屋で、同僚と行ったボルダリングと瞑想で再会。
「奇遇ですね」
「ええ、本当に」
恋をすると都合よく考えてしまうものなのだ。そして、それを運命と名付ける。
ある日私が一人でドライヤーを電気店で選んでいたら、
「これがおすすめですよ」
と髪が短いくせに彼はあれこれ教えてくれた。それまで恋らしきものをしてこなかった私はスマートな彼にぽうっとなってしまって、トントン拍子でお付き合いをすることになった。あとで判明したのだが、彼は私の同僚や知り合いを調べまくって私の行動を把握していたのだ。ぞっとした。その気になってうっかり婚約までしてしまった自分を呪いたい。
彼曰く、私は、
「俺の隣りにいるのにちょうどいい」
らしい。地味な顔だろうか。派手ではない服装を好まれたのかもしれない。
母が亡くなったことを理由に延期を申し出たら、諸々のお金を請求された。彼の中では私の母が死のうとも半年後の結婚式は動かせないようだ。
そんな人無理です。
友人たちが間に入ってくれて婚約解消は大事にはならなかったが、母の葬儀の途中で別の厄介事が判明する。母は仕事をしていたのに貯金がほぼない。私は一人暮らしをしていたので実家に母の恋人が転がり込んでいることも知った。その人に、
「ここは俺の家だ」
と言い張られる。どう考えてもその人が母の預金を使い込んでいることは明らかだ。母はお金に困っている素振りは見せなかったし、看護師をしながら私を短大にまで出してくれた。私は権利を主張し、その過程で自分に姉がいることを初めて知る。会ったこともなければ、母からそのようなことを聞かされたこともない。
急に自分の人生が慌ただしい。今までが平穏すぎた。いつも頼っていた母もいない。
真夜中というのは寂しさを倍増させる。もう恋人じゃないからあの人にも連絡できない。きっともう半年後に結婚ができる女性を探しているに決まっている。
私はいつも読んでいるネットの小説の投稿サイトを見る。
お気に入りの作家さんは俳句を詠む人。
『へいマミー これから私 どうすんの』
まさに今の私の気持ちだ。
母の恋人は内縁の間柄だったともっとお金を要求してきた。確かに生命保険は私が受取人になっている。それをよこせなんて強欲すぎる。母が亡くなったから家の光熱費を私に払えなんて冗談じゃない。姉を取り込んで、母の恋人を追い出そう。それしかない。
私と姉で財産を二分の一。法的にはそうなっているが、探りを入れたところその男は母の職場の人いわく、
「雨だからって迎えに来てくれる優しい人」
らしい。
嘘だ。その人は母よりも10も若かった。優しそうな顔なのにお金の話になると般若のような形相に早変わり。仕舞には舎弟のような男を同席させ、私を恫喝した。当然、録音させていただきました。
亡くなった母と男運がない母子だねと笑いたい。
今更か。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ヤクザに医官はおりません
ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした
会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。
シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。
無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。
反社会組織の集まりか!
ヤ◯ザに見初められたら逃げられない?
勘違いから始まる異文化交流のお話です。
※もちろんフィクションです。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる