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3.アラン
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(アラン視点)
フィーネが仕事をしている頃、アランは蔦で編んだ籠を作っていた。
まだまだ複雑な形の籠は編めないが、母に教えてもらいながら作れるようになった物を机に並べていく。
籠は平民に時々売れる。出来が悪いものは売れないし、たくさん売れるわけではない。他にも孤児たちが作っていたりして籠は巷に溢れ返っている。
しかし、少しでも売って母の役に立ちたかった。
汚くはないが、古くて狭くて寒くて暑い家。
アランが物心がついた時から住んでいる家だった。
今年で5歳になる僕には秘密がある。
母上は僕の秘密が周りにバレないように必死で隠した。
今のところ、僕の秘密を知っているのは母上とババ様だけ。
ババ様は僕が生まれた時、母上の世話をしてくれたから。
僕には父上がいない。
いるけどいない事になっているの。
僕の髪と目は父上にそっくりなんだって。
でも、それがわかると僕と母上は離れ離れになっちゃうから絶対に隠さないとダメなんだ。
だから僕は毎日髪の毛の色と目の色を薬で変えてる。
僕は元の髪の色とか目の色なんて好きじゃないけど、母上は時々僕の色を見て泣いている事がある。
僕の黒い髪と赤い目を見ながら母上は悲しんでいるような恋しがっているようにもどちらとも取れる複雑な表情を見せる。だから僕は父上って人が嫌い。
母上が悲しい顔をするから僕は父上なんかいなくてもいいんだ。
僕はもっと小さな頃から知能の成長が早いみたい。
僕と同じ年ごろの子供と話していても、会話が成り立たなくて楽しくないんだ。
自分がちょっと変わっているっていうのは何となくわかるんだよ。
母上に時々教わっている勉強は一回聞いたら忘れないんだ。
ババ様が商人からかっぱらった?という本を借りて読んでみたら、僕の世界は色々なところに広がった。
今ではババ様が時々持ってくる色々な専門書を読ませてもらって勉強してる。
早く大人になりたい。
大人になって、母上を助けて休んでもらいたいんだ。
頭が下手に良すぎるとそれはそれで災いを呼ぶから母上は隠したがっているし、スラム出身の子供なんて大人以上に仕事にはありつけないから。
少しでも真面な仕事について母上に楽をさせてあげたい。
「あ、もうこんな時間!ババ様のところへ行かなきゃ」
没頭して作業してたためか、すっかりお昼もすぎ日が傾きかけていた。
基本朝と晩しか食事はしないため問題ないが、母はアランが稼ごうとするのを嫌がった。
僕だって母上のためなら何でも出来るのに。
「ババ様のところへ母上の代わりにお金も持っていこう。今月はまだ渡してないはず」
母上の仕事は日が暮れて遅くなる事があるから僕は日が暮れそうになったらババ様の所で夕食を食べさせてもらう。家で一人で待てるし、料理だってきっと出来るって言ってもまだ子供に火は危ないからダメだって言われるんだ。そんなことないのに。
だから夕食のお世話をババ様に頼む代わりに毎月少額だが食費代などをババ様に渡していた。
お金を保管している戸棚の奥から銅貨を数枚掴みポケットに入れた。
家から出ると丁度太陽が傾きかけ路地が薄暗くなって来ているところだった。
こんなひどい環境の汚い路地裏でも太陽は綺麗だなって思う。
「おい」
少し太陽を眺めてぼーっとしていたのが悪かったのかもしれない。
立ち止まった僕の背後から嫌いな声が聞こえた。
相手は僕の肩を強く掴んでくる。
「離せ!」
「んだよ。相変わらず生意気な奴だなっ。今からどこいくんだよ」
「お前には関係ない」
「俺の仲間になれって声かけてただろ。逃げ回るんじゃねぇ」
こいつはこのスラムで子供を集めて金持ちからスリをやらせたりしている集団の頭だ。
母上には丁寧な言葉で話しているが、ここスラムではそれは舐められるだけだ。母上には聞かせられないような汚い言葉も沢山覚えた。
確か12歳になるという褐色の少年は今のアランより遥かに体格が良いので掴まれた肩が振り払えない。
「お、お前ポケットに金入ってんじゃん」
「っ返せ!!」
こういう連中は金に敏感だ。
すぐに気付かれポケットに入った銅貨を奪われた。
「ははは。これは今日の上納金としてもらってくからな」
「待て!!!」
お金を奪った途端身を翻し路地裏の奥へ走って消えていく。
あれは、母上が必死で貯めたお金なのに!!
僕はババ様に声をかけるのすら忘れてお金を取り戻すべく少年を追いかけた。
フィーネが仕事をしている頃、アランは蔦で編んだ籠を作っていた。
まだまだ複雑な形の籠は編めないが、母に教えてもらいながら作れるようになった物を机に並べていく。
籠は平民に時々売れる。出来が悪いものは売れないし、たくさん売れるわけではない。他にも孤児たちが作っていたりして籠は巷に溢れ返っている。
しかし、少しでも売って母の役に立ちたかった。
汚くはないが、古くて狭くて寒くて暑い家。
アランが物心がついた時から住んでいる家だった。
今年で5歳になる僕には秘密がある。
母上は僕の秘密が周りにバレないように必死で隠した。
今のところ、僕の秘密を知っているのは母上とババ様だけ。
ババ様は僕が生まれた時、母上の世話をしてくれたから。
僕には父上がいない。
いるけどいない事になっているの。
僕の髪と目は父上にそっくりなんだって。
でも、それがわかると僕と母上は離れ離れになっちゃうから絶対に隠さないとダメなんだ。
だから僕は毎日髪の毛の色と目の色を薬で変えてる。
僕は元の髪の色とか目の色なんて好きじゃないけど、母上は時々僕の色を見て泣いている事がある。
僕の黒い髪と赤い目を見ながら母上は悲しんでいるような恋しがっているようにもどちらとも取れる複雑な表情を見せる。だから僕は父上って人が嫌い。
母上が悲しい顔をするから僕は父上なんかいなくてもいいんだ。
僕はもっと小さな頃から知能の成長が早いみたい。
僕と同じ年ごろの子供と話していても、会話が成り立たなくて楽しくないんだ。
自分がちょっと変わっているっていうのは何となくわかるんだよ。
母上に時々教わっている勉強は一回聞いたら忘れないんだ。
ババ様が商人からかっぱらった?という本を借りて読んでみたら、僕の世界は色々なところに広がった。
今ではババ様が時々持ってくる色々な専門書を読ませてもらって勉強してる。
早く大人になりたい。
大人になって、母上を助けて休んでもらいたいんだ。
頭が下手に良すぎるとそれはそれで災いを呼ぶから母上は隠したがっているし、スラム出身の子供なんて大人以上に仕事にはありつけないから。
少しでも真面な仕事について母上に楽をさせてあげたい。
「あ、もうこんな時間!ババ様のところへ行かなきゃ」
没頭して作業してたためか、すっかりお昼もすぎ日が傾きかけていた。
基本朝と晩しか食事はしないため問題ないが、母はアランが稼ごうとするのを嫌がった。
僕だって母上のためなら何でも出来るのに。
「ババ様のところへ母上の代わりにお金も持っていこう。今月はまだ渡してないはず」
母上の仕事は日が暮れて遅くなる事があるから僕は日が暮れそうになったらババ様の所で夕食を食べさせてもらう。家で一人で待てるし、料理だってきっと出来るって言ってもまだ子供に火は危ないからダメだって言われるんだ。そんなことないのに。
だから夕食のお世話をババ様に頼む代わりに毎月少額だが食費代などをババ様に渡していた。
お金を保管している戸棚の奥から銅貨を数枚掴みポケットに入れた。
家から出ると丁度太陽が傾きかけ路地が薄暗くなって来ているところだった。
こんなひどい環境の汚い路地裏でも太陽は綺麗だなって思う。
「おい」
少し太陽を眺めてぼーっとしていたのが悪かったのかもしれない。
立ち止まった僕の背後から嫌いな声が聞こえた。
相手は僕の肩を強く掴んでくる。
「離せ!」
「んだよ。相変わらず生意気な奴だなっ。今からどこいくんだよ」
「お前には関係ない」
「俺の仲間になれって声かけてただろ。逃げ回るんじゃねぇ」
こいつはこのスラムで子供を集めて金持ちからスリをやらせたりしている集団の頭だ。
母上には丁寧な言葉で話しているが、ここスラムではそれは舐められるだけだ。母上には聞かせられないような汚い言葉も沢山覚えた。
確か12歳になるという褐色の少年は今のアランより遥かに体格が良いので掴まれた肩が振り払えない。
「お、お前ポケットに金入ってんじゃん」
「っ返せ!!」
こういう連中は金に敏感だ。
すぐに気付かれポケットに入った銅貨を奪われた。
「ははは。これは今日の上納金としてもらってくからな」
「待て!!!」
お金を奪った途端身を翻し路地裏の奥へ走って消えていく。
あれは、母上が必死で貯めたお金なのに!!
僕はババ様に声をかけるのすら忘れてお金を取り戻すべく少年を追いかけた。
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