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3.アイドルプロデュース計画始動
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「…で、何がどうするって?」
私達のやり取りを静かに見守っていた最高神が流し目でこちらを見た。どうせ、また変な暴走が始まったよこいつと呆れているに違いない。まぁ、事実だから仕方ないんだけど…。
「うん。アイドルを作ろうと思って」
「あいどる?何なの?それは」
その言葉に私は目を丸くする。まさか最高神とあろう方がアイドルをご存知ないなんて思わなかった。
「知らないの?アイドルは選ばれた美男美女たちが、ダンスや歌で人々を元気にする存在よ。騎士が女性たちに追いかけられるのは、そもそもそういった欲を満たせる娯楽がないのが一番の原因だと思うの。それならやることは一つ。追いかけてもいい人々の憧れの存在を作ればいいのよ!そうすれば目の保養に飢え、騎士達を追いかけていた女性たちの注目は彼らにいくわ!」
「ふーん、あいどる、ね。貴方にしては中々いい考えかもしれないわ」
一々一言多いのよね、この神様は。褒めるなら普通に褒めてくれればいいのに。
「それに、ファン教育をすることで、彼らを守ることもできるわ!推しへの接し方の流儀、徹底的に私が叩き込むのよ!」
「どうやって?」
「聖女の権力を最大限に活かすわ。最高神が人間に与えた娯楽として、アイドルをみんなに広めるのよ。そして、神から定められた規則として、ファンとしてあるべき姿を示し、健全で最良なオタ活を広めるの!」
ふふん。我ながら良いアイデアである。この国は神に対する信仰心がとても強い。そのため、神様の言うこと絶対みたいな風潮があるのだ。そして、そんな神の言葉を伝えるのが聖女の役割なことから、聖女の発言も絶対ということになる。つまりは、私がオタクとしてのマナーを人々に教えれば、彼らはそれを守ろうとするのだ。
しかも、神によって与えられた娯楽というパワーワードのおかげで、民衆からの注目も一気に集めることができ、尚且つ人々に受け入れてもらいやすい神聖なイメージが付与できるとまさにいいこと尽くしなのである。
―ああ!聖女になってよかった!
「どう、これ!?私は暇つぶしができてハッピーだし、女子達も推しのカッコいい瞬間味わえてハッピーだし、騎士たちも守られてハッピーになれるよ!しかも、最高神は素晴らしいものを人間に与えたとして、さらに讃えられる!誰も損しない、素晴らしい計画じゃない!?」
期待を込めて最高神に視線を送ると、彼は口角を上げて言った。
「ふーん、面白そうじゃない。私も美丈夫を眺めるのは嫌いじゃないわ」
いや、大好きの間違いだろうと私は心の中でツッコむ。この最高神はいつも嬉しそうに神殿騎士団長眺めているのを、私は知っている。何なら、イケメンが来た時だけ、いつもより張り切って願いを叶えさせるために部下を動かしているのも知っている。どんなに貢がれようが、どんなに懇願されようが、願いを叶えるかどうかは顔によって決める。それがこの最高神なのだ。控えめに言って最低である。
「あんたが私を利用しようだなんて百年早いけれど、いいわ。今回は特別に許してあげる。ただし、条件があるわ」
「条件?」
「ミハイルを参加させなさい」
「……」
やっぱこの神、私と同類だわ。いっそ潔いまでのイケメン贔屓である。
「なに?できないの?」
「いや、最高神の頼みならできると思うけど…随分気に入ってるんだなぁと思って」
「最高じゃない。あの落ち着いた雰囲気と、引き締まった身体つき。彼なら一生側に置いても構わないわ」
いや、それはミハイルが可哀想なので辞めてあげてください。最高神に目をつけられてしまった彼を不憫に思っていたのが顔に出ていたのか、彼は不満そうに唇を尖らせた。
「…アンタって本当につれないのね。いいじゃない、見て楽しむくらい。恥じらいながらも、私の為に一生懸命踊ってる姿とか、想像しただけで最高だわ」
「あ、それは確かに萌える」
冷静沈着で大人なイメージの聖騎士団長が、ステージで不器用ながらに踊ってる姿はめっちゃ見たい。よし、ならば絶対引き込もう。
「でしょ?じゃあ、今日のうちに設定のすり合わせするわよ」
「わかった!前世の知識全力で注ぎ込むわ!」
こうして、私のアイドルプロデュース計画が幕を開けたのだった。
***
「あいどる…ですか?…私が?」
次の日、私は聖騎士団長であるミハイルにこのアイドルプロデュース計画のことを話した。最高神よりアイドルを作り、民に新たな娯楽を与えることを命じられたこと。そして、その為に騎士から志願者を出して欲しいと言うこと。
信仰深い彼は私の話を疑うこともなく、最高神のお望みならばと了承してくれた。
「それから、主が貴方をアイドルにしたいと望んでいるの。だから、できれば貴方をアイドルの第一人者に据えたいと思うのだけど、引きうけてくれるかしら?」
私の言葉にミハイルは目を丸くした。
「最高神様に私のような者を望んでいただけるなんて、大変光栄です。ただ…私は歌はおろか、踊りさえもできないのです。恥ずかしながら、社交会を避けて生きて参りましたので…。ですから、最高神様のご期待に添えるかどうか…」
「それは大丈夫よ。主は貴方の存在を求めているのであって、歌やダンスのうまさは求めてないわ。それに、そこに関しては私も指導するし、プロにも指導をいれてもらうから大丈夫よ。何事も真面目に努力をできる貴方なら、すぐに上達するわ」
何せ歴代最若年齢で聖騎士団長へと昇り詰めた彼のことだ。もともと運動のセンスもあるし、すぐに上達するに違いない。
「…かしこまりました。そこまでおっしゃって頂けるなら、挑戦してみます」
頷いてくれた彼に私はぱっと笑顔を向けた。よかった!これでアイドルのプロデュースを始動できる!ミハイルのアイドル姿も見れるようになる!
「ありがとう!主も大変喜んでおられるわ」
「最高だわ。お礼に貴方には加護をあげちゃう!」
身体をくねくねさせながら、最高神は手をミハイルに向けてかざした。キラキラと光の粒子が舞う。光の粒子はミハイルにも見えたのか、不思議そうにその光景を見つめている。
「…これは?」
「主がお礼に御加護をくださったそうよ」
「ふふふん、半径1メートル以内に、貴方に危害を加える女が近づけないようにしたわ」
…いや、それ貴方の私欲を満たしただけじゃん。そんなツッコミを心の中でしながら、私はオブラートに包みこみミハイルに説明をした。
「…貴方に危害を加えそうな女性が近づけない魔法をかけたらしいです」
「そうなんですか。それはありがたいですね。…ご好意に感謝申し上げます、最高神様」
私の視線で最高神がどこらへんにいるのかを察しているらしいミハイルは、最高神の方に視線を向けて深く礼をした。普段自分に向けられることのない視線が向けられて最高神は頬を赤く染めている。彼は上機嫌でこう言った。
「ふふふ、いいのよ。その代わり、華麗なる肉体の舞を期待してるわ」
流石にこれを私が口にするのは憚れるので、私は盛大にオブラートに包んで言った。
「今後の貴方の活躍に期待しているとおっしゃっています」
「はい。ご期待に添えるよう最善を尽くします」
嬉しそうな表情を浮かべそう礼を言う聖騎士団長を見て、この最高神がただのクズ神で、貴方のことを欲情にまみれた目で見ていますという事実は一生黙っておこうと胸に誓った。
私達のやり取りを静かに見守っていた最高神が流し目でこちらを見た。どうせ、また変な暴走が始まったよこいつと呆れているに違いない。まぁ、事実だから仕方ないんだけど…。
「うん。アイドルを作ろうと思って」
「あいどる?何なの?それは」
その言葉に私は目を丸くする。まさか最高神とあろう方がアイドルをご存知ないなんて思わなかった。
「知らないの?アイドルは選ばれた美男美女たちが、ダンスや歌で人々を元気にする存在よ。騎士が女性たちに追いかけられるのは、そもそもそういった欲を満たせる娯楽がないのが一番の原因だと思うの。それならやることは一つ。追いかけてもいい人々の憧れの存在を作ればいいのよ!そうすれば目の保養に飢え、騎士達を追いかけていた女性たちの注目は彼らにいくわ!」
「ふーん、あいどる、ね。貴方にしては中々いい考えかもしれないわ」
一々一言多いのよね、この神様は。褒めるなら普通に褒めてくれればいいのに。
「それに、ファン教育をすることで、彼らを守ることもできるわ!推しへの接し方の流儀、徹底的に私が叩き込むのよ!」
「どうやって?」
「聖女の権力を最大限に活かすわ。最高神が人間に与えた娯楽として、アイドルをみんなに広めるのよ。そして、神から定められた規則として、ファンとしてあるべき姿を示し、健全で最良なオタ活を広めるの!」
ふふん。我ながら良いアイデアである。この国は神に対する信仰心がとても強い。そのため、神様の言うこと絶対みたいな風潮があるのだ。そして、そんな神の言葉を伝えるのが聖女の役割なことから、聖女の発言も絶対ということになる。つまりは、私がオタクとしてのマナーを人々に教えれば、彼らはそれを守ろうとするのだ。
しかも、神によって与えられた娯楽というパワーワードのおかげで、民衆からの注目も一気に集めることができ、尚且つ人々に受け入れてもらいやすい神聖なイメージが付与できるとまさにいいこと尽くしなのである。
―ああ!聖女になってよかった!
「どう、これ!?私は暇つぶしができてハッピーだし、女子達も推しのカッコいい瞬間味わえてハッピーだし、騎士たちも守られてハッピーになれるよ!しかも、最高神は素晴らしいものを人間に与えたとして、さらに讃えられる!誰も損しない、素晴らしい計画じゃない!?」
期待を込めて最高神に視線を送ると、彼は口角を上げて言った。
「ふーん、面白そうじゃない。私も美丈夫を眺めるのは嫌いじゃないわ」
いや、大好きの間違いだろうと私は心の中でツッコむ。この最高神はいつも嬉しそうに神殿騎士団長眺めているのを、私は知っている。何なら、イケメンが来た時だけ、いつもより張り切って願いを叶えさせるために部下を動かしているのも知っている。どんなに貢がれようが、どんなに懇願されようが、願いを叶えるかどうかは顔によって決める。それがこの最高神なのだ。控えめに言って最低である。
「あんたが私を利用しようだなんて百年早いけれど、いいわ。今回は特別に許してあげる。ただし、条件があるわ」
「条件?」
「ミハイルを参加させなさい」
「……」
やっぱこの神、私と同類だわ。いっそ潔いまでのイケメン贔屓である。
「なに?できないの?」
「いや、最高神の頼みならできると思うけど…随分気に入ってるんだなぁと思って」
「最高じゃない。あの落ち着いた雰囲気と、引き締まった身体つき。彼なら一生側に置いても構わないわ」
いや、それはミハイルが可哀想なので辞めてあげてください。最高神に目をつけられてしまった彼を不憫に思っていたのが顔に出ていたのか、彼は不満そうに唇を尖らせた。
「…アンタって本当につれないのね。いいじゃない、見て楽しむくらい。恥じらいながらも、私の為に一生懸命踊ってる姿とか、想像しただけで最高だわ」
「あ、それは確かに萌える」
冷静沈着で大人なイメージの聖騎士団長が、ステージで不器用ながらに踊ってる姿はめっちゃ見たい。よし、ならば絶対引き込もう。
「でしょ?じゃあ、今日のうちに設定のすり合わせするわよ」
「わかった!前世の知識全力で注ぎ込むわ!」
こうして、私のアイドルプロデュース計画が幕を開けたのだった。
***
「あいどる…ですか?…私が?」
次の日、私は聖騎士団長であるミハイルにこのアイドルプロデュース計画のことを話した。最高神よりアイドルを作り、民に新たな娯楽を与えることを命じられたこと。そして、その為に騎士から志願者を出して欲しいと言うこと。
信仰深い彼は私の話を疑うこともなく、最高神のお望みならばと了承してくれた。
「それから、主が貴方をアイドルにしたいと望んでいるの。だから、できれば貴方をアイドルの第一人者に据えたいと思うのだけど、引きうけてくれるかしら?」
私の言葉にミハイルは目を丸くした。
「最高神様に私のような者を望んでいただけるなんて、大変光栄です。ただ…私は歌はおろか、踊りさえもできないのです。恥ずかしながら、社交会を避けて生きて参りましたので…。ですから、最高神様のご期待に添えるかどうか…」
「それは大丈夫よ。主は貴方の存在を求めているのであって、歌やダンスのうまさは求めてないわ。それに、そこに関しては私も指導するし、プロにも指導をいれてもらうから大丈夫よ。何事も真面目に努力をできる貴方なら、すぐに上達するわ」
何せ歴代最若年齢で聖騎士団長へと昇り詰めた彼のことだ。もともと運動のセンスもあるし、すぐに上達するに違いない。
「…かしこまりました。そこまでおっしゃって頂けるなら、挑戦してみます」
頷いてくれた彼に私はぱっと笑顔を向けた。よかった!これでアイドルのプロデュースを始動できる!ミハイルのアイドル姿も見れるようになる!
「ありがとう!主も大変喜んでおられるわ」
「最高だわ。お礼に貴方には加護をあげちゃう!」
身体をくねくねさせながら、最高神は手をミハイルに向けてかざした。キラキラと光の粒子が舞う。光の粒子はミハイルにも見えたのか、不思議そうにその光景を見つめている。
「…これは?」
「主がお礼に御加護をくださったそうよ」
「ふふふん、半径1メートル以内に、貴方に危害を加える女が近づけないようにしたわ」
…いや、それ貴方の私欲を満たしただけじゃん。そんなツッコミを心の中でしながら、私はオブラートに包みこみミハイルに説明をした。
「…貴方に危害を加えそうな女性が近づけない魔法をかけたらしいです」
「そうなんですか。それはありがたいですね。…ご好意に感謝申し上げます、最高神様」
私の視線で最高神がどこらへんにいるのかを察しているらしいミハイルは、最高神の方に視線を向けて深く礼をした。普段自分に向けられることのない視線が向けられて最高神は頬を赤く染めている。彼は上機嫌でこう言った。
「ふふふ、いいのよ。その代わり、華麗なる肉体の舞を期待してるわ」
流石にこれを私が口にするのは憚れるので、私は盛大にオブラートに包んで言った。
「今後の貴方の活躍に期待しているとおっしゃっています」
「はい。ご期待に添えるよう最善を尽くします」
嬉しそうな表情を浮かべそう礼を言う聖騎士団長を見て、この最高神がただのクズ神で、貴方のことを欲情にまみれた目で見ていますという事実は一生黙っておこうと胸に誓った。
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