異世界で推しに会ったので全力で守ると決めました。

ロク

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プロローグ【レナード視点】

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グロテスク、暴力表現有り注意。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



大きい骨張った手許にはスワロフスキーが装飾してある花型の髪飾りが握られていた、世の男性からプレゼントされたいと令嬢が憧れるだろう代物だ。レナードは静かに息を吐きそれを丁寧にハンカチに包むと内ポケットにしまった。


ここ最近、彼女は危険な旅に出る事が多い。心配する此方の気も知らず意思を貫くミクリアは自分の言葉で止まる事はない。
何度肝が冷えた事かー…だからこそガリウス家代々伝わる加護魔法をほどこした髪飾りを渡そうと決心をした。そしてミクリアにちょっかいをかける周りの煩い野次から堂々と彼女を守る権利をと明日には求婚しようと心に決めていたのだった。





◆◆◆◆◆





空に濃紺がかりガリウス家の屋敷が寝静まった頃、レナードは横たわるベッドの上で寝返りを繰り返して寝れずにいた。嫌な予感がぎりなかなか寝付けない…彼女と向き合うのが怖いのか女々しいなと内心で己を叱咤する。
僕達は想い合っている、きっと彼女はプロポーズを受けてくれるはずだ。いやいやーー慢心はダメだ、誠実に誠意を持って愛を伝えるんだ。
首を振り心を落ち着かせようと瞼を閉じようとした時、ふと辺りに魔法の気配が近付くのが分かった。警戒と共に飛び起きると窓の外を凝視する、すると窓からすり抜けて青く光る球体が此方に迫るのを見付けると肩の力を抜いた。
なんだ、フィリーナの魔法か。それは良く見知った魔法で同じ魔法学園のフィリーナ・サファミリアが自身のオリジナルで開発した伝言魔法だ。しかしこんな時間に伝言だなんて、令嬢の彼女らしからぬ行為に僅かに眉を寄せる。
生きてる生物の様にふわふわと浮く光る球体に触れると弾けた様に勢い良く言葉が脳に駆け巡った。



「!」



飛び込んで来た声に思わず呼吸を忘れる。


《レナード様…!!助けて…!ミクリア様が悪魔に殺される!…私を逃してくれて…ミクリア様がお一人で、契約神を…!》
フィリーナの焦った声が聞こえ今にも泣きそうだ、音声の遠くから魔法が発動しぶつかり合い何かが崩れる大きな音が聞こえる。


ーーなんだって?

 
明日求婚をしようとしている大事な人の名前が聞こえて頭を抱える、只ならぬ状況と最後の言葉に舌打ちをするとベッドから降りて使い慣れた杖とポーションを棚から取り出し急いで自室を出た。
屋敷の奥にある魔方陣が使える部屋に入ると即座に移動魔法の準備をし、床にポーションを垂らし彼女を想いながら丁寧に魔法陣描き魔力を注ぐ。
通常、移動魔法は行きたい場所を思い浮かべるとその場所に行けるのだが今回は場所の情報量が少ない。その為人物の事を考えるしかないのだが、焦らずにミクリアを思い浮かべなるべく近くに移動する事だけに専念する。描き終えた魔法陣の中に立ちレナードの唇から呪文を唱えられる、すると足元から光の散りとなり身体全体を覆いその場から消えて行く。

何度も使っている魔法だ、レナードが失敗する事はないだろう。迷う事なく目的の洞窟に到着すれば彼女の気配を感じ、やはり戸惑いが大きくなるばかりだった。何故こんな場所にミクリアがーー?
しかし今は一刻も早くミクリアとフィリーナを救出せねばと暗闇が広がる洞窟へと早足で歩みを進める。
軽く杖を振るうと杖の頭先から火が灯され暗い洞窟内を照らす。少しでも気を抜くと転けてしまいそうなほど足場の悪い洞窟内だ、灯がないと歩くのは難しい。
時折奥の方から地鳴りが聞こえ天井の石壁から砂を降らす、彼女がもたらしているものだと考えるとレナードの心に焦りが募る。

またミクリアが自分の知らない場所で危険な目に合っている、あんなに口酸っぱく注意をしたのにも関わらずこんな場所で悪魔と戦うなんて…一体どうすれば彼女は大人しく守られてくれるのだろうか。


暫く走ると魔法撃の音がどんどん大きくなって行く、目的の場所が近い証拠だ。すると前方から長い金髪を揺らすフィリーナを見付け僅かに胸を撫で下ろす、華やかなドレスは泥と苔だらけで顔には切り傷が幾つか見受けられた。フィリーナはレナードを見付けると泣きたいのを我慢していたであろう金色の瞳から溢れんばかりの涙を零した。



「レナード様…!」


「フィリーナ、無事か?!」


急いで駆け寄ると憔悴しきったフィリーナの表情には何時もの天真爛漫さは無い。思った以上に事態は最悪らしい、間入れずフィリーナの口が開く。


「ミクリア様がお一人でスタン様に取り憑いた悪魔と戦っています…!他の方にも伝達をしたんですが…まだレナード様しか来ておりません…!」


「ミクリアが一人…分かった、先を急ぐしかないみたいだね。フィリーナも良く頑張ったね。」



気遣うようにフィリーナの背を撫でると奥は危ないのでそこで待機をして貰った、いずれ伝言魔法で呼び出された騎士達が彼女を見つけるだろう。再び奥を目指そうと走り出せば暗闇が広がる。
濃い魔法術の気配がする、近いはずだ。ーーーと、月明かりに浮かぶミクリアの背中を見付けた。間に合った!翠の瞳がその姿を捉える。
視線を動かすとしっとり輝くモスグリーンの長い髪が肩程までに切れていると気付く、と同時に彼女の方腕が弾け飛んだ、凄まじい土煙と共に。

それからはスローモションで事が進んで行く。

彼女の背後から禍々しい契約神が飛び出し見た事も無いような大きさの剣が宙に浮かぶとトドメの一突きと言わんばかりに虫の息の悪魔に向かって振り落とす。
地に落ちた剣は地響きを立て悪魔に突き刺さる、すると剣に巻き込まれるように気味が悪い悲鳴を上げながら消えて行ったのだった。



土煙りが晴れる頃、冷たそうな地には愛しい彼女が横たわっていた。


全身の血液が冷える様な感覚に足元がフラつく。
彼女の傍に立つと魔法や戦力の代償にと契約神にもぎ取られたであろう片腕や片目が無くなっていた。正気を戻したスタンに名を呼ばれたが反応する気になれない、気が付けば瀕死のミクリアを腕の中に掻き抱いていた。
必死に治療の魔法を彼女に掛けるが手応えの無さに手が震える。

 お願いだ、効いてくれ…!

ガリウス家が生業とする治療系の魔法は強力のはずだった。レナード自身も使い慣れ高く評価を貰う治療魔法を何度もミクリアの身体に施すも効いている様子はない。死が近い証拠だ。だが、諦める気は無い、必死に魔法を送り込む。
不意に此方に気付いた彼女が瞳を見開く、僅かに口角を震わせ微笑んでいたのだったーー…まるでレナードを安心させるかのように。
こんな時でさえ自分よりもレナードを気遣う事にどうしようもなく苛立ちを覚えた、何も出来ない自分に苛立ちと焦りと悲しみと。何が代々伝わる加護魔法だ。
気付けばいつも助けられてばかりだった、どうして僕ばかり君に助けれているんだろう。ふとレナードの頭の中で嫌に冷静に思考が動く、散りばめられた沢山のピースが重なり合って行く。

初めからミクリアは

色んな感情が心中を?惜き乱すも一つの可能性に気付いた時、レナードの頬に水滴が伝う。余りの彼女の愛の大きさに。


「ミクリア…まさか、…どうして。ミクリア…君は……「やぁだ、この子ったら死んじゃうの?」」



聞こえた声は天使か悪魔か、この時のレナードの思考では考える事が出来なかった。








ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



ここまで見て下さりありがとうございます…!契約神の事や各キャラの設定など物語を進めて描いて行く予定です。長い目でお付き合い頂ければ幸いです。
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感想 1

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みんなの感想(1件)

はちみつ
2017.03.17 はちみつ

プロローグだけでこんなに面白いなんて…!
後の展開どうなるのかとても気になります!ワクワク
期待が重かったらすみません 笑

2017.03.17 ロク

はちみつ様、感想下さり有難うございます…!
重いなんてとんでもないです、こんな拙い文に優しいお言葉を下さり大変嬉しかったです。暇潰しとして見て頂けたら幸いです。
本当に有難うございました!

解除

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