伝えし言葉

pulun

文字の大きさ
上 下
9 / 10
9

現実世界?

しおりを挟む
 地下の階段は幅が広く今にも転がり落ちてしまいそうな傾斜だった

ゆらは僕の手をとって、ゆっくりと行こうと言ってくれた。幸せだ

僕はこの階段がずっと続けば良いと思った

突然ガーっという大きな音がした。音がする方を咄嗟に見ると大きな何かがこちらに押し寄せてきている

よく見てみると高速で移動している人間の集合体だ。500はいるその人の塊はよく見ると宙に浮いている

まずい、、ここはまさに死後の世界。先ほどまでの朗らかとした世界とはまるでちがうドロドロとした感情が充満している

「ゆら!早くここから出よう!!」

ゆらの手を強く握り、きた道を戻ろうとした

「ここを通らないと行きたいところに行けないみたいなの」

ゆらは意外にも怖がっていない。ゆらと僕は見えているものが違うのか?

僕はこの人とも言えぬ物体が怖くてたまらない。ゆらが話し出す

「昔、樫夜木くんにひどく裏切られたことがあったよね、、あのあと引き抜かれてすぐいなくなっちゃったけど彼、、」

「……」

その話は今はしたくなかった。この得体の知れない物が目の前に繰り広がっている世界線でそんな現実の話してる時ではないだろう

「そうだね」

せめて相槌だけはしておこうと思う

「あの後彼、あなたにした事が自分で許せなくて、毎晩深酒していたらしいわ」

あいつはあんな酷い事をしておいて何を言ってるんだ

「そう、、僕はもう忘れたよ」

嘘をついた。今でも僕はあいつを全く許せていないし、本当は2度と会いたくもなかった。手紙は渡しても渡さなくても、そんな身勝手な気持ちでさえいた

でも実際は、こうやって手紙を渡しに骨董屋まで来たわけだから、僕はどうやらお人好しなのだろう

「そんな事よりどうやってここを進むの?」

前にはあの塊がいる。ゆらは先に進もうと言っている。

「たぶんすり抜けられると思うの」

え?!僕にその発想はなかった。あの高速で動く人のような塊をすり抜ける??

考えるだけで恐ろしい

「わ、わかった、、行ってみよう」

行きたくない、、何故こんな事になったんだ。さっきまであんなに幸せな時間をゆらと過ごしていたというのに




しおりを挟む

処理中です...