1 / 1
可愛くなりたい
しおりを挟むある森の中に1匹のウサギがいました。
名前はシロです。
なぜなら毛が真っ白だからです。
ウサギは可愛い生き物。
動物たちもそう思っています。
それはシロも同じです。
でもシロはどうしても自分の容姿に自身が持てませんでした。
毛並みは癖っ毛でクルクル
目が小さくて
耳は曲がっています。
確かに他のウサギより可愛いとは言えません。
そんなシロは食べることも大好き。
今日も朝ごはんを食べに野原へ行き
大好きな山人参の葉っぱをかじります。
モグモグ
「やっぱりここの山人参が1番美味しいわ。」
モグモグ モグモグ
周りにはシロと同じように、山人参目当てのウサギ達が集まっていました。
「シロおはよう」
シロが後ろを振り向くとそこには、友達のクロがいました。
真っ白なシロと反対でクロは真っ黒。
「おはようクロ。あなたもここの山人参食べに来たの?」
シロは口をモグモグさせながら言いました。
「そうだよ。ここの山人参は美味しいからね。」
クロはそう言って、シロの隣で同じように山人参の葉っぱを食べはじめました。
「そういえば、昨日シロツメクサの花畑を見つけたんだ。シロに似合うと思って。花冠を作ったんだ。ほら、付けてみて。」
クロはそう言うと
器用に編んだシロツメクサの花冠をシロの頭に被せました。
「まぁ、とっても可愛いわ。ありがとう。」
シロは嬉しくなりなりその場でピョンピョン飛び跳ねました。
「でも私、あなたになにもプレゼントするものがないわ。」
シロは申し訳なさそうにし、何かないかと辺りを見渡します。
周りは山人参と、山人参を食べに来たウサギ達だけです。
クロは言います。
「僕はシロから何か欲しくて花冠をプレゼントした訳じゃないよ。だったら今度一緒に、昨日見つけたシロツメクサ畑に行ってくれないかな。」
クロはちょっと照れくさそうに言います。
「そんな事でいいの?そんなのいつでも行けるじゃない。」
シロは拍子抜けした顔で言いました。
そんな会話をしていると、なんだか遠くの方が騒がしいようです。
「どうしたんだろう?」
シロとクロは気になり、騒がしくなっているその場所へ向かいました。
ガヤガヤ。ガヤガヤ。
そこにはたくさんのウサギ達が何かを見るように集まっています。
「美しい」
「綺麗だなぁ」
「可愛い!!」
そんな言葉がウサギ達から飛び交っています。
シロとクロもその人集りの中の隙間から覗き込みます。
そこにいたのは
シロと同じように真っ白なウサギ。
でもシロとはちょっと違って
目は綺麗な青色
毛は長くサラサラ
耳は下に垂れていて、この辺りに住んでいるウサギとは違う魅力がありました。
「なんて可愛いの。」
シロも自然と口からそんな言葉が出ていました。
そしてその綺麗なウサギは言います。
「はじめまして。今日からこの森に引っ越してきたフワです。よかったら仲良くしてください。」
フワはそう言って深々と頭を下げました。
するとウサギ達は
「僕がこの森を案内するよ!」
「私、フワちゃんとお友達になりたい!」
「僕のお家に案内するよ!美味しい料理をご馳走するよ!」
と、フワに言いより出しました。
他のウサギたちも綺麗なウサギが来た事に喜んでいるようです。
シロも話してみたかったのですが、みんなの勢いに押されて、外に追いやられてしまいました。
「大丈夫?」
クロが慌ててシロに駆け寄ります。
「私は大丈夫よ。でもとっても綺麗なウサギね。私と同じ白色なのに全然違うウサギみたい。」
シロは自分でも分からないような
羨ましいような
モヤモヤするような
そんな変な気持ちになりました。
誰かが言いました。
「どうしたらそんなに綺麗になれるの?」
するとフワは言いました。
「綺麗になる勉強をして、食事に気をつけたり、運動もしているの。」
ウサギたちはなる程と感心しました。
それはシロにも聞こえてきました。
「私もフワちゃんみたいに綺麗になりたい!」
大きな声で言ってしまったようで、周りにいたウサギたちはシロの方を振り向きました。
そして、みんな同じように笑い出しました。
どうしてみんなが笑うのか
シロは分かって恥ずかしくなりました。
「今のシロだって可愛いよ。」
クロはシロに言います。
それでもシロは悔しくなりました。
「私、今から走る!」
シロはそう言うと
急に起き上がり走り出しました。
クロはポツンとその場に立ちすくみ、行ってしまったシロの後ろ姿を見ていました。
その日からシロは大好きな山人参をいつもの半分だけ食べるようにしました。
そして暇さえあれば野原を走りまわりました。
お化粧もした事はありませんでしたが、木苺をとって口に塗ってみたりしました。
そんな事をしているたある日。
友達のウサギがシロに言いました。
「シロちゃんなんだか最近綺麗になった?」
そう言われ、シロは嬉しくなりました。
そしてこれまで以上に頑張るようになったのです。
人参もひと口かじるだけ。
後は走って走って走りました。
シロはどんどん痩せて
やつれていきました。
クロはそんなシロをみて心配していました。
ある日走っているシロに話しかけます。
「もう充分走ったじゃないか。ほらこの前言ってたシロツメクサ畑に行こう?」
するとシロは迷惑そうに
「ごめんなさい。今そんな事してる時間はないの。他のウサギと行ってちょうだい。」
シロはそう言うとプイッと前を向いて走って行ってしまいました。
ある日シロは倒れました。
そしてベッドの上から動けなくなってしまったのです。
「ほとんど食べずに走って。倒れて当たり前だわ。」
「頑張ったってフワちゃんみたいになれる訳じゃないのに。」
倒れた事を聞いたウサギたちは口々に話すのでした。
シロはベッドにいました。
「ほら、ご飯作ったから食べよう。今日は人参のステーキだよ!」
そう言って料理を持ってきたのはクロでした。
シロが倒れてからクロは四六時中、シロの看病をしていたのです。
シロはステーキを見て言いました。
「こんなに食べたら太っちゃう。」
するとクロは身体を震わせて言いました。
「シロは誰の為にこんな事をしているの?僕は前の飾らないシロも可愛いかったし、大好きだったよ。」
シロはクロの顔をみて驚きました。
だってクロは目を真っ赤にして涙を溜めています。
シロは反省しました。
まわりの目ばかり気にして、飾らないままの自分を受け入れてくれる存在に気づけなかったのですから。
「急にお腹が空いてきたわ。」
シロはそう言うとモグモグとクロの作った人参ステーキを食べはじめました。
クロは驚き、そして喜びました。
シロは言いました。
「元気になったら、この前クロが言っていた、シロツメクサ畑に行きたいわ。今度は私が花冠をクロの為に作りたいの。」
自分から1度断っておいて今度は自分から誘うのです。
シロは断られないか不安そうに下を向いて言います。
そんなシロに
クロは笑って答えます。
「 喜んで。」
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
ローズお姉さまのドレス
有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です*
最近のルイーゼは少しおかしい。
いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。
話し方もお姉さまそっくり。
わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。
表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる