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ハーレム編
56話 堕天
「ってかお前だって迷ってんだろ? じゃなきゃ世界一の勇者様が、こんな簡単に制圧されるわけねえもんなぁ?」
一歩進み出たマホが、愉快そうにユーリに手をかざしながら言った。
「どうするよ、勇者? ボクたちと一緒に頭おかしくなるか、それとも、童貞メンタルとちんちんぶら下げながら生きていくか……どっちにする?」
「まあこのまま押し切っちゃえば、私たちの要望も通っちゃうんだけどね~♪ でもその前に、」
そこでゆるふわな口調を取り下げると、ブレイダは真剣な表情で露刃をユーリへと突きつける。
「セイラさんの気持ちに、ちゃんと答えてあげなさい。
どうするんですか、坊ちゃん?」
「…………」
その質問に、ユーリは一度目を瞑る。
セイラの気持ちはよく分かった。
みんなの気持ちも、分かった。
──そして、自分の気持ちも、固まった。
だから。
だから、ユーリは……。
「……セイラさんの気持ちに答えることは、できない」
「あ゛ッ……!?」
と、ブレイダがマジ切れする声に構わず、ユーリは全身から【勇装龍気】」を迸らせ、
「【覇龍爪】」
バォオオオオオオンッ!!
ユーリが剣を振り抜くと、その軌道に沿って夥しい量の青黒い光が放たれ、一同は衝撃で吹き飛ばされていった。
「はッ……?」
ゴロゴロと転がりながらも、どうにか体勢を整えたセイラは、天井を見て愕然とした。
いや、その言い方には少し語弊がある。
上を見上げても、天井などなかったのだ。
先ほど放たれた【勇装龍気】によって、広大な屋敷の天井が、完全に消滅していたのだった。
「……ごめんね。天井が崩落したら危ないと思って、本気で戦えなかったんだ」
それを成した張本人は、穏やかな笑顔を浮かべながらこちらに歩み寄って来た。
その手の中には、ぐったりとしたツインテールの女の子が、お姫様抱っこをされている。
「エリちゃん!」
「対人戦闘の場合、まずは回復魔法使いと付与魔法使いを潰す……最初にそれ教えてくれたのって、ブレイダさんだっけ? パンダくんだっけ?」
【勇装龍気】でその身体を保護してから、ユーリはブレイダに向けてエンリエッタを投げ渡す。
彼女を受け取って横たえてから、ブレイダは穏やかな笑顔を浮かべ──しかしその目の奥にはバキバキの殺意を湛えて、地面を踏み砕きながらユーリへと突っ込んだ。
「言いつけが守れて偉いね。でもあなたはもう破門です。
──こんなタマナシ野郎を育てた覚えは、私にはないので」
ブレイダは可視不能な速度で剣を振るい、ユーリもまた信じられない速度でそれを返していく。
鋼が削れ合う音と、ふたりの間で巻き起こる火花。傍目から見れば、そのふたつの情報しか認識できないような、凄まじい速度の剣戟だった。
「っく!」
そんな異次元の攻防が数秒続いたところで、ブレイダの顔が僅かに歪み、その半瞬後に彼女の剣が打ち上げられた。
「おらあああぁぁぁぁッ!!」
その直後、ファイフがユーリへと突っ込むが、彼は重心をずらしてそれを躱し、首根っこに手を伸ばして掴み上げた。
そしてもう片方の手でブレイダを捕まえると、ふたりの頭を思い切り打ちつける。
「「うぐぅッ!!」」
石頭同士がかち合い、そのまま意識を手放すふたりを、ユーリは【勇装龍気】で保護してからその場に寝かせる。
「クソが……! この期に及んでラスボスムーブかましやがって……!」
マホは瓦礫を押しのけて立ち上がると、空に向けて手をかざし、
「風魔法【キラールー……】」
「遅い」
「がふっ……!」
突如として目の前に現れたユーリに、剣の柄を叩きこまれ、マホは成すすべなく意識を刈り取られた。
「カリナが囮になる! ハンナはみんなを叩き起こして!」
「わかりましたわ」
短い意思疎通を終え、カリナとハンナが左右に散ろうとした、そのとき──。
「え~。でもカリちゃむもハンナさんも可愛いから、ふたりとも捕まえたくなっちゃうなぁ~」
「「!!」」
一瞬にしてふたりの背後へと回りこんだユーリが、その肩に手を回しながら、なんとも軽薄な口調でそう告げた。
「それと、叩き起こしても無駄だよ。【龍の揺り籠】……この技でみんなを保護してるけど、それと同時に拘束もしてるからね。解除にまあまあ時間かかるんじゃないかなあ~」
「に、ひひぃ……えちえち道具無しで緊縛プレイもできちゃうようになったかい。そういうのはレモンサワー二杯くらいいってからやって欲しいんだよなぁ~」
「……テクニシャンなのは知っていましたけれど、いつの間にそんな器用なことまでできるようになったのですか?」
軽い口調で返しつつも、彼から逃れるべく全身に魔力を纏わせるカリナとハンナ。しかしユーリはそれ以上の魔力でふたりの身体を包み込み、足元から徐々に自由を奪っていった。
「いやぁ~、いままで【勇装龍気】」を封じられてたからさ、修行できるのが楽しくて楽しくて! 新しい技とかガンガン生み出しちゃってるんだよね~。魔力の絶対値もギンギンに上がってるしさ♪」
「「っぐ……!」」
やがて青黒い光はふたりの口元にまで到達し、その自由を完全に奪い去った。
ユーリは彼女らを優しく床に寝かせると、さわやかな笑顔のまま立ち上がり、
「いまだったらほんと、四天王にも魔王にも──世界最強の聖女にだって、勝ち確で勝負挑めちゃいそうな気がするんだよね~」
「…………っ!」
その場に立ち尽くす最後の一人──セイラへと向き直った。
一歩進み出たマホが、愉快そうにユーリに手をかざしながら言った。
「どうするよ、勇者? ボクたちと一緒に頭おかしくなるか、それとも、童貞メンタルとちんちんぶら下げながら生きていくか……どっちにする?」
「まあこのまま押し切っちゃえば、私たちの要望も通っちゃうんだけどね~♪ でもその前に、」
そこでゆるふわな口調を取り下げると、ブレイダは真剣な表情で露刃をユーリへと突きつける。
「セイラさんの気持ちに、ちゃんと答えてあげなさい。
どうするんですか、坊ちゃん?」
「…………」
その質問に、ユーリは一度目を瞑る。
セイラの気持ちはよく分かった。
みんなの気持ちも、分かった。
──そして、自分の気持ちも、固まった。
だから。
だから、ユーリは……。
「……セイラさんの気持ちに答えることは、できない」
「あ゛ッ……!?」
と、ブレイダがマジ切れする声に構わず、ユーリは全身から【勇装龍気】」を迸らせ、
「【覇龍爪】」
バォオオオオオオンッ!!
ユーリが剣を振り抜くと、その軌道に沿って夥しい量の青黒い光が放たれ、一同は衝撃で吹き飛ばされていった。
「はッ……?」
ゴロゴロと転がりながらも、どうにか体勢を整えたセイラは、天井を見て愕然とした。
いや、その言い方には少し語弊がある。
上を見上げても、天井などなかったのだ。
先ほど放たれた【勇装龍気】によって、広大な屋敷の天井が、完全に消滅していたのだった。
「……ごめんね。天井が崩落したら危ないと思って、本気で戦えなかったんだ」
それを成した張本人は、穏やかな笑顔を浮かべながらこちらに歩み寄って来た。
その手の中には、ぐったりとしたツインテールの女の子が、お姫様抱っこをされている。
「エリちゃん!」
「対人戦闘の場合、まずは回復魔法使いと付与魔法使いを潰す……最初にそれ教えてくれたのって、ブレイダさんだっけ? パンダくんだっけ?」
【勇装龍気】でその身体を保護してから、ユーリはブレイダに向けてエンリエッタを投げ渡す。
彼女を受け取って横たえてから、ブレイダは穏やかな笑顔を浮かべ──しかしその目の奥にはバキバキの殺意を湛えて、地面を踏み砕きながらユーリへと突っ込んだ。
「言いつけが守れて偉いね。でもあなたはもう破門です。
──こんなタマナシ野郎を育てた覚えは、私にはないので」
ブレイダは可視不能な速度で剣を振るい、ユーリもまた信じられない速度でそれを返していく。
鋼が削れ合う音と、ふたりの間で巻き起こる火花。傍目から見れば、そのふたつの情報しか認識できないような、凄まじい速度の剣戟だった。
「っく!」
そんな異次元の攻防が数秒続いたところで、ブレイダの顔が僅かに歪み、その半瞬後に彼女の剣が打ち上げられた。
「おらあああぁぁぁぁッ!!」
その直後、ファイフがユーリへと突っ込むが、彼は重心をずらしてそれを躱し、首根っこに手を伸ばして掴み上げた。
そしてもう片方の手でブレイダを捕まえると、ふたりの頭を思い切り打ちつける。
「「うぐぅッ!!」」
石頭同士がかち合い、そのまま意識を手放すふたりを、ユーリは【勇装龍気】で保護してからその場に寝かせる。
「クソが……! この期に及んでラスボスムーブかましやがって……!」
マホは瓦礫を押しのけて立ち上がると、空に向けて手をかざし、
「風魔法【キラールー……】」
「遅い」
「がふっ……!」
突如として目の前に現れたユーリに、剣の柄を叩きこまれ、マホは成すすべなく意識を刈り取られた。
「カリナが囮になる! ハンナはみんなを叩き起こして!」
「わかりましたわ」
短い意思疎通を終え、カリナとハンナが左右に散ろうとした、そのとき──。
「え~。でもカリちゃむもハンナさんも可愛いから、ふたりとも捕まえたくなっちゃうなぁ~」
「「!!」」
一瞬にしてふたりの背後へと回りこんだユーリが、その肩に手を回しながら、なんとも軽薄な口調でそう告げた。
「それと、叩き起こしても無駄だよ。【龍の揺り籠】……この技でみんなを保護してるけど、それと同時に拘束もしてるからね。解除にまあまあ時間かかるんじゃないかなあ~」
「に、ひひぃ……えちえち道具無しで緊縛プレイもできちゃうようになったかい。そういうのはレモンサワー二杯くらいいってからやって欲しいんだよなぁ~」
「……テクニシャンなのは知っていましたけれど、いつの間にそんな器用なことまでできるようになったのですか?」
軽い口調で返しつつも、彼から逃れるべく全身に魔力を纏わせるカリナとハンナ。しかしユーリはそれ以上の魔力でふたりの身体を包み込み、足元から徐々に自由を奪っていった。
「いやぁ~、いままで【勇装龍気】」を封じられてたからさ、修行できるのが楽しくて楽しくて! 新しい技とかガンガン生み出しちゃってるんだよね~。魔力の絶対値もギンギンに上がってるしさ♪」
「「っぐ……!」」
やがて青黒い光はふたりの口元にまで到達し、その自由を完全に奪い去った。
ユーリは彼女らを優しく床に寝かせると、さわやかな笑顔のまま立ち上がり、
「いまだったらほんと、四天王にも魔王にも──世界最強の聖女にだって、勝ち確で勝負挑めちゃいそうな気がするんだよね~」
「…………っ!」
その場に立ち尽くす最後の一人──セイラへと向き直った。
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