【完全版製作記念連載再開】金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!

夕凪五月雨影法師

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ハーレム編

57話  “愛を待っている” 前編

「…………なぜ、ですか?」

 世界最強の勇者に矛を向けられたセイラは、しかし恐怖や絶望の類は感じなかった。

「なぜ……そこまで拒むのですか? そんなに頑ななんですか? なんで……なんで、こんなにお願いしてるのに……受け止めてくれないんですか!?」

 恐怖や絶望を上回るほどの、深い悲しみ。
 そして、怒り。
 それらがないまぜになった感情のまま、セイラはユーリへと躍りかかった。
 ユーリは刃を八の字にぶん回してから、袈裟斬りの一撃を軽々とはじき返す。

「何回も言ってるでしょ? 君たちの言ってることが、滅茶苦茶だからだよ」
「だから! それは承知の上でのご提案だと! 何度も言ってるじゃないですか!!」

 セイラははじき返された勢いのまま一回転すると、遠心力の乗った一撃を叩きこむ。ユーリはそれも易々と弾くと、やはり淡々とした口調で応じた。

「僕も何回も言ってるよ。君たちの気持ちを全部聞いたうえでも、君たちの提案を受けることはできない。ごめんね、ってさ」
「この……分からず屋ぁッ!」

 セイラはユーリに向けてウォーハンマーを振るい続ける。
弾かれると分かっていても、負けると分かっていても……。
全力で、セイラは振るい続ける。
 もはやそれしかできることがなかった。

「なぜ……ねえ、なんで!? なんでダメなの!? そりゃおかしなことしてる自覚はあるよ!? でもそうでもしないと無理じゃん! ユーくんもセイラもしんどいじゃん! だからこんな訳わかんないことやってるんだよ!? なんで分かってくんないの!?」

 説得には失敗し、作戦も尽き、力業も通用せず、こちらの思いのたけも響かず。
 こちらに残っているものは、もうなにもない。
 だからセイラは、地雷系全開で槌を振るうことしかできないのだ。

「分かってはいるんだよ。セイラちゃんがどんな気持ちで僕と一緒にいてくれたかも、みんなの気持ちも、全部ちゃんと分かってる。でも、分かったうえでも無理だって言ってるの」
「それが意味分かんないだよ! みんなもいいって言ってるんだし、セイラもいいって言ってんじゃん! ユーくんは誰に気を遣ってるの!? 誰に許可を得れば満足なの!?」

「誰かに許して欲しいわけじゃないよ! それだと自分が納得できないの!」
「だからそのわけ分かんない自分ルールなんなの!? そんなの誰も得しないじゃん! ユーくんだってほんとはみんなとエッチしたいんでしょ!? でも結局それに縛られてんじゃん! ユーくんのバカ! 浮気男! イケメン!!」
「なにさ! セイラちゃんの天使! 顔面ステータスカンスト! 何度生まれ変わっても君を探しに行くよ!!」

 と、凄まじい剣戟と凄まじいクソキモを続ける間にも、徐々に終わりの時が近づいていることを、セイラは自覚していた。
 すなわち、

(……ヤバ。力入らなくなってきた……!)

 魔力切れの兆候である。
 ユーリへの奇襲で大技を連発してしまったし、こうして彼の一撃を受け止めるだけで膨大な魔力を消費するのだ。
体力のほうはまだ持つが、魔力なしではユーリの相手などできるわけがない。魔力切れを起こした時点で負け確なのである。

(……だったら!)

 セイラはユーリと距離を取ると、ウォーハンマーに魔力を流し込み、

「【変態トランスフォーム同担拒否モードウェイティングソーラブ】」

 ガチャン! ガチャンガチャン! と、ウォーハンマーのパーツが入れ替わり、瞬く間に二メートルを超える大剣(クレイモア)へと組み変わっていく。
 その棟(むね)には複数の噴射口が備え付けられ、紫煙のように微量の魔力を吐き出していた。
 その凶悪の形状の剣を力強く握りこむと、軸足と刀身に魔力を集中させる。
 そしてユーリに照準を定め、上体を低く沈みこませると、

「るああああああッ!!」

 一瞬にして彼我の間合いが消失し、セイラは大剣をユーリに叩きつけた。それが弾かれるや、素早く着地して二刀目の逆袈裟を放つ。それも半歩引いて躱されるが、セイラも半歩踏み込んで追撃をかけ、そのまま反撃の間を与えることなく連撃を続けていった。

(超短期決戦狙いか……!)

 セイラの思惑を見抜いたユーリは、しかし余裕の笑みを浮かべることはできなかった。
 刃物を持った相手の捨て身のインファイト。それがモンスターなどであれば、いくらでもやりようはある。

 しかし相手はセイラなのだ。致命傷になるような攻撃を繰り出すわけにはいかない。が、相手も決死の覚悟なので、少しでも手を抜けばこちらが致命傷を貰うことになる。
 セイラはいわば、自分の命を人質に取るような戦法を取ってきたのである。
 強かではあるものの、それも立派な戦術だった。
 ともあれ、

「危ないことしてくれるじゃない、セイラちゃん。一歩間違えば大怪我だよ」
「大怪我する覚悟もないのに、こんなヤバい提案しないよっ!」

 剣を地面へと突き立てたセイラは、それを支柱にするように飛び上がり、ドロップキックの要領でユーリに両足蹴りを食らわせる。
 剣脊(けんせき)でそれを防いだユーリだったが、僅かに上体のバランスが崩れた。
 セイラの目が獣のような光を灯す。

「それにぃッ!!」

 セイラは大剣を引き抜いて大きく振りかぶった。瞬間、ドゥルン、ドゥルルンッ! と、背部の噴射口が一斉に魔力を吐き出し──その刀身と腕が掻き消える。

「ユーくんがセイラのお願い聞いてくれれば、こんなことにならなかったんだもんんんんんんんんんッ!!!」
「ぐうううぅぅぅぅッ!!」

 腕力だけでは到底出しえない速度のフルスイングが、ユーリの宝剣に突き刺さった。両足の地面は爆砕したかのように砕け散り、申し訳程度に残っていた周囲の壁が、衝撃で粉々になって吹き飛んでいく。
 それでもどうにか鍔迫り合いを続けながら、ユーリは叫ぶようにして言葉を返す。

「さっきも、その前も、その前の前も言ったけど、それはできないんだよぉッ!」
「さっきもその前もその前の前も聞いたけど、それはなんでなの!?」
「だって……ぐぅッ!」

 噴射口から放たれる魔力が増す。ユーリの足元はとうとう地面にめり込み、グングンと魔力が目減りしていくのが分かる。
 反撃に転じるか、受け流すかすれば、この窮地を脱することができる。
 しかし、そうはしない。

 この一撃は受けきらなければならない。
 受けきったうえで、勝負に勝たなくてはならない。
 なぜなら──。

「うぐ……だって、だってそれは……ッ!!」
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