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青腕の怪人 探索開始!
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緊張で眠れなかった大海は、そのままベッドにスライドイン。さぁて、どうするかな。この六道という男も気になるけど、普通にこういう義務教育の学校を大人になって、大人目線で楽しんでいきたい気分でもある。まぁ、まだ時間はあるんだし、大丈夫だろう。しかし何かみられているようで落ち着かない。監視カメラらしいものはないが、「自分は監視カメラです!」なんて言い張るような場所に置かないだろうな、この施設は。
偏見を育てている間に縫之介が話しかけてきた。
「三人でまず探索しないか、小学校の思い出にふけりながらよ。さっき明日香とも話して明日香は来るらしい。来ないか?」
もちろん返事はイェスだ。この施設で一人になりたくないし、六道と二人きりというのも怖い、何されるか分からないし。せめて全員いるときに彼とは接触したい。
この話している間に大海は寝てしまった。変ではあるが、そこまで厳格ではない運営陣に安心したのだろうか、とても心地よさそうに寝ている。僕の使っているベッドよりいいんじゃないかな、わからんけど。
かくして明日香、縫之介と僕はまず教室の並ぶ二階、三階の廊下をゆったりと歩いて行った。
「うわぁ、見て!!机もイスもちっちゃーい!」
はしゃぐ明日香、それにつられて縫之介も教室の中へ入り掃除棚やランドセルを置く棚を見たりなぞったりしている。黒板には真新しいチョークやルーラー、ルーラークリーナーもあり、少し埃をかぶっている。前の暗い緑色の部分には茶色い斑点があり、おそらく紙を押しピンでとめていたようなところだろう。
「ちょ!助けて!抜けなくなったわぁw」
「フッ、おバカさんだなぁ。」
明日香が座ったイスと机に挟まって抜けなくなって大笑いしている。どうやら机と机の間隔が小さくて、イスが座ったまま引けなくなったんだろう。やれやれという感じで縫之介が助けた。こんなところに罠(笑)があるなんてな。
少し見られている気分だ、ここでも監視カメラがあるのか…そりゃあ被験者が変なことしないためにそうするのは当たり前だが…。他のクラスにも行ってみるか…。
僕は二人のいる教室の隣の方へ行ってみた。ここは三階だし、さっきのところよりも窓がきれいで外の景色がより見える。ここから梅島と錦瀬湾、住宅街や山が見えて、朝日もあってか景色としてとても映えている。先ほどの教室同様、イスと机、チョークなどがある。
しばらく外の景色を楽しんでいると、後ろから縫之介の僕を呼ぶ声が聞こえてきた。そろそろ他のところの探索に行くらしい。彼の声に反応して振り返る。その際に一つの机が目に入った。何の変哲もない机、でもその角には黒っぽい跡があった。木目かと思ったが、それにしては模様もなくまっさらだ。でもわかる。僕にはそれが血液であることが。どういった経緯でそれが起こったかわかんない。でも僕の頭には痛みが走る。僕より大きな手が髪の毛を引っ張る感覚、血液が通うたびに痛みが走る頬、鉄の生臭さ。…こんなことを思い出す理由なんてないか。
僕は縫之介の声のする方へ向かった。
ある程度時間が経ち、アナウンスがなった。
「12時の15分前です、校内にいる被験者の方々は元の教室へお戻りください。」
相も変わらず甲高い声、逆居だな。まぁ、検診と投与があるし、従って向かおう。
教室に戻ったのは12:55。縫之介のトイレが思った以上に長引いたのが原因だが、あまり言わないでおいた。教室にはいまだに寝ている大海と、僕らの前に帰っていた明日香がいた。二分後に六道が帰ってきた。
そして12時きっかりにはまた研究者率いる逆居さんが入ってきた。また、彼らが戸を開けたと同時にいい匂いがほんのりと漂ってきた。
「えぇー、今からまた投与を行います。先ほどの投与から三時間が立ちましたが、体調の悪い方がいらっしゃったらお伝えください。」
僕らは特に何もない。六道も同じように顔を軽く横に振っている。そして、何やら血圧を測る機械をはめて10分何かを測った。なぜ『何か』なのか。それはその機械の繋がれた先を見ると見たこともない機械があるからだ。血圧以外にも測るものがあるんだろうか。体感、僕の体に異常はない。精密機械で測れないような変な感覚も。
測り終え、また薬を飲む。明日香に詰められずに済んだあのそばかすの人は、安堵の表情を浮かべている。
「えぇ、では今から昼食としましょう。どうせなら、もう食べられなくなった給食を我々がふるまいます。健康に害しない程度に召し上がりください。」
そういうと、何か乗せたおぼんを持つ人が5人入ってきた。白衣なのか給食着なのか分からないが、頭に給食着特有の頭巾をかぶっていることから察するに、多分給食着なんだろうな。匂いからするに、スープ系がひとつあるな。
「昼ご飯は白米にけんちん汁、サバの味噌煮、牛乳です。地域で取れた野菜と米においしい豚を使っています。」
…なんか思っていた給食と違った。カレーとか出てくると思ったが、そんな贅沢は求めないさ。いただきます。
けんちん汁は野菜のうまみを引き出し、体に優しく取り込まれていく。人参やゴボウ、大根は噛めば噛むほどやさしい甘みが引き立つ。次に白米。けんちん汁と違う、炊き立ての米が嗅細胞を刺激し、あたたかさが涙腺を歪ませるほどに美味い。
こうして、僕らの治験が始まっていった。
偏見を育てている間に縫之介が話しかけてきた。
「三人でまず探索しないか、小学校の思い出にふけりながらよ。さっき明日香とも話して明日香は来るらしい。来ないか?」
もちろん返事はイェスだ。この施設で一人になりたくないし、六道と二人きりというのも怖い、何されるか分からないし。せめて全員いるときに彼とは接触したい。
この話している間に大海は寝てしまった。変ではあるが、そこまで厳格ではない運営陣に安心したのだろうか、とても心地よさそうに寝ている。僕の使っているベッドよりいいんじゃないかな、わからんけど。
かくして明日香、縫之介と僕はまず教室の並ぶ二階、三階の廊下をゆったりと歩いて行った。
「うわぁ、見て!!机もイスもちっちゃーい!」
はしゃぐ明日香、それにつられて縫之介も教室の中へ入り掃除棚やランドセルを置く棚を見たりなぞったりしている。黒板には真新しいチョークやルーラー、ルーラークリーナーもあり、少し埃をかぶっている。前の暗い緑色の部分には茶色い斑点があり、おそらく紙を押しピンでとめていたようなところだろう。
「ちょ!助けて!抜けなくなったわぁw」
「フッ、おバカさんだなぁ。」
明日香が座ったイスと机に挟まって抜けなくなって大笑いしている。どうやら机と机の間隔が小さくて、イスが座ったまま引けなくなったんだろう。やれやれという感じで縫之介が助けた。こんなところに罠(笑)があるなんてな。
少し見られている気分だ、ここでも監視カメラがあるのか…そりゃあ被験者が変なことしないためにそうするのは当たり前だが…。他のクラスにも行ってみるか…。
僕は二人のいる教室の隣の方へ行ってみた。ここは三階だし、さっきのところよりも窓がきれいで外の景色がより見える。ここから梅島と錦瀬湾、住宅街や山が見えて、朝日もあってか景色としてとても映えている。先ほどの教室同様、イスと机、チョークなどがある。
しばらく外の景色を楽しんでいると、後ろから縫之介の僕を呼ぶ声が聞こえてきた。そろそろ他のところの探索に行くらしい。彼の声に反応して振り返る。その際に一つの机が目に入った。何の変哲もない机、でもその角には黒っぽい跡があった。木目かと思ったが、それにしては模様もなくまっさらだ。でもわかる。僕にはそれが血液であることが。どういった経緯でそれが起こったかわかんない。でも僕の頭には痛みが走る。僕より大きな手が髪の毛を引っ張る感覚、血液が通うたびに痛みが走る頬、鉄の生臭さ。…こんなことを思い出す理由なんてないか。
僕は縫之介の声のする方へ向かった。
ある程度時間が経ち、アナウンスがなった。
「12時の15分前です、校内にいる被験者の方々は元の教室へお戻りください。」
相も変わらず甲高い声、逆居だな。まぁ、検診と投与があるし、従って向かおう。
教室に戻ったのは12:55。縫之介のトイレが思った以上に長引いたのが原因だが、あまり言わないでおいた。教室にはいまだに寝ている大海と、僕らの前に帰っていた明日香がいた。二分後に六道が帰ってきた。
そして12時きっかりにはまた研究者率いる逆居さんが入ってきた。また、彼らが戸を開けたと同時にいい匂いがほんのりと漂ってきた。
「えぇー、今からまた投与を行います。先ほどの投与から三時間が立ちましたが、体調の悪い方がいらっしゃったらお伝えください。」
僕らは特に何もない。六道も同じように顔を軽く横に振っている。そして、何やら血圧を測る機械をはめて10分何かを測った。なぜ『何か』なのか。それはその機械の繋がれた先を見ると見たこともない機械があるからだ。血圧以外にも測るものがあるんだろうか。体感、僕の体に異常はない。精密機械で測れないような変な感覚も。
測り終え、また薬を飲む。明日香に詰められずに済んだあのそばかすの人は、安堵の表情を浮かべている。
「えぇ、では今から昼食としましょう。どうせなら、もう食べられなくなった給食を我々がふるまいます。健康に害しない程度に召し上がりください。」
そういうと、何か乗せたおぼんを持つ人が5人入ってきた。白衣なのか給食着なのか分からないが、頭に給食着特有の頭巾をかぶっていることから察するに、多分給食着なんだろうな。匂いからするに、スープ系がひとつあるな。
「昼ご飯は白米にけんちん汁、サバの味噌煮、牛乳です。地域で取れた野菜と米においしい豚を使っています。」
…なんか思っていた給食と違った。カレーとか出てくると思ったが、そんな贅沢は求めないさ。いただきます。
けんちん汁は野菜のうまみを引き出し、体に優しく取り込まれていく。人参やゴボウ、大根は噛めば噛むほどやさしい甘みが引き立つ。次に白米。けんちん汁と違う、炊き立ての米が嗅細胞を刺激し、あたたかさが涙腺を歪ませるほどに美味い。
こうして、僕らの治験が始まっていった。
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