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第二章
28話 片思いの先
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「良かった、こちらにおいででしたか!」
走って来た青年の姿を見た瞬間、胸の奥が懐かしさでいっぱいになる。
二年前、ノルディアでアメリアの護衛を務めてくれたリンク・メルディ卿だった。
幼さの残っていた顔つきは引き締まり、すっかり一人前の騎士の表情になっている。
「メルディ卿! お久しぶりです! 一緒にいらしていたなんて、気づきませんでしたわ。」
「ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。見習いは返上し、今は正式にエインハルト隊長の第三部隊に所属しております。」
「まあ、そうでしたの。会えて嬉しいです。」
「私もです。……テティ殿も、お久しぶりです。」
「お、お久しぶりです。リンク様はお変わりなく……」
緊張したテティの声に、アメリアまで胸がドキリとする。
「アメリア様、侍女殿が探しておられました。お部屋に戻りましょう。」
「ああ、だから探してくれたのね。わかったわ。……テティ、ありがとう。」
どこか落ち着かない様子のテティを残し、アメリアはリンクとともに部屋へ戻る道すがら雑談を交わした。
「こうして会えて、本当に嬉しいです。あなたとテティが並んでいるのを見ると、ノルディアでの日々が思い出されますわ。」
「そうですね。あの頃は、あの鉱山がこんなことになるとは思いもよりませんでした。……アメリア様は今や、ノルディアでは“女神”と称されているんですよ。」
「えっ……め、女神……?」
「はい。女神様です。」
「……それより、テティと仲良くしていたでしょう? どう思っているの?」
(女神と呼ばれていることはあまり考えないでおこう…)
話を変えるついでに彼の本心を知りたいと思っていたことに切り込むと、リンクは驚いたように目を丸くした。
「テティ殿とですか? まあ、あの頃はほとんど一緒でしたが、それは任務ですし……」
「でも、ふたりで出かけたじゃない? 夏祭りの日に。」
「ああ、そういえば…せっかくノルディアにいらしているのだから、ずっと仕事ばかりでは勿体ないと思い、お誘いしました。」
「つまり……あくまで親切心だけ、だったのね……」
アメリアががっかりしていると気づいたのか、リンクは励ますように言葉を足した。
「テティ殿は素敵な方ですから、きっと王都には良い方がいるでしょう。」
「そ、そんなことないわ! テティは……あなたのこと、すごく褒めていたもの!」
あの頃、どれほど熱心にテティがリンクの魅力を語っていたか──言いたくなる気持ちを抑え、極力言い過ぎないように努めた。
リンクはそんなアメリアの気持ちなど知らない様子で、首を傾げる。
「ははは。僕だって一端の男ですから、好意があるかないかくらいわかりますよ。
テティ殿とは、アメリア様が考えるようなことは何ひとつありません。」
その答えは、アメリアの心に再びモヤモヤとした澱を落とした。
確かにテティは「遠くから眺めるだけで十分な叶わぬ片思い」だと最初に言っていた。
それでもノルディアにいた頃は毎日のようにリンクの話をしていた。
彼のどこが素敵だったか、どんな会話をしたのか……。
ただ、憧れの相手ができて楽しく話していただけ──本当に、それだけだったのだろうか。
思い出すのは、誘拐事件後に会ったテティの姿。
あの時、彼女は「リンクのことで相談がしたかった」と言ったはずだ。
──あれは、やっぱり嘘だったのだろうか。
もし、嘘だったとしたら…どこからどこまでが嘘なのだろう。
そして、どうしてテティはアメリアをあの場所に呼び出したのだろう。
先ほどのテティがマリアのことを話す様子は明らかに心配と不安が入り混じっていた。
彼女の主人に対する想いは本物なはずだ。
なら、テティがアメリアを呼び出したのもマリアが関係するのだろうか。
アメリアが思い悩み出した様子を見てリンクは心配そうに声をかける。
「明日から作戦がはじまるので、アメリア様の護衛は団長が務めるそうですよ。」
「へ?」
「狼の討伐は、本来なら領地の騎士団か警備兵の仕事です。我々の出る幕ではありません。
ただ、今回は国王を通じて依頼を受けたそうでして、仕方なく参ったのです。
団長が任務にあたることはないので、アメリア様とお過ごしになると聞いています。」
「そ、そうなの」
上擦った声に、リンクが微笑ましく笑う。
嬉しく思ってしまったのがわかってしまったのだろう。
アメリアは気付かれないように顔を背けた。
「誰も何も言わないから知らなかったわ」
「ああ、そうでしたか。
アメリア様を驚かせたかったのかもしれないですね。
では、このことは内密に…」
「ふふっわかったわ」
微笑み合うと、アメリアは明日は何をしようか考えた。
ヴァルクと過ごす何でもない時間はこのどうしようもない解決できない問題から暫しの憩いの時間になるだろう。
そう考えると楽しみで仕方なかった。
走って来た青年の姿を見た瞬間、胸の奥が懐かしさでいっぱいになる。
二年前、ノルディアでアメリアの護衛を務めてくれたリンク・メルディ卿だった。
幼さの残っていた顔つきは引き締まり、すっかり一人前の騎士の表情になっている。
「メルディ卿! お久しぶりです! 一緒にいらしていたなんて、気づきませんでしたわ。」
「ご挨拶が遅れ、申し訳ありません。見習いは返上し、今は正式にエインハルト隊長の第三部隊に所属しております。」
「まあ、そうでしたの。会えて嬉しいです。」
「私もです。……テティ殿も、お久しぶりです。」
「お、お久しぶりです。リンク様はお変わりなく……」
緊張したテティの声に、アメリアまで胸がドキリとする。
「アメリア様、侍女殿が探しておられました。お部屋に戻りましょう。」
「ああ、だから探してくれたのね。わかったわ。……テティ、ありがとう。」
どこか落ち着かない様子のテティを残し、アメリアはリンクとともに部屋へ戻る道すがら雑談を交わした。
「こうして会えて、本当に嬉しいです。あなたとテティが並んでいるのを見ると、ノルディアでの日々が思い出されますわ。」
「そうですね。あの頃は、あの鉱山がこんなことになるとは思いもよりませんでした。……アメリア様は今や、ノルディアでは“女神”と称されているんですよ。」
「えっ……め、女神……?」
「はい。女神様です。」
「……それより、テティと仲良くしていたでしょう? どう思っているの?」
(女神と呼ばれていることはあまり考えないでおこう…)
話を変えるついでに彼の本心を知りたいと思っていたことに切り込むと、リンクは驚いたように目を丸くした。
「テティ殿とですか? まあ、あの頃はほとんど一緒でしたが、それは任務ですし……」
「でも、ふたりで出かけたじゃない? 夏祭りの日に。」
「ああ、そういえば…せっかくノルディアにいらしているのだから、ずっと仕事ばかりでは勿体ないと思い、お誘いしました。」
「つまり……あくまで親切心だけ、だったのね……」
アメリアががっかりしていると気づいたのか、リンクは励ますように言葉を足した。
「テティ殿は素敵な方ですから、きっと王都には良い方がいるでしょう。」
「そ、そんなことないわ! テティは……あなたのこと、すごく褒めていたもの!」
あの頃、どれほど熱心にテティがリンクの魅力を語っていたか──言いたくなる気持ちを抑え、極力言い過ぎないように努めた。
リンクはそんなアメリアの気持ちなど知らない様子で、首を傾げる。
「ははは。僕だって一端の男ですから、好意があるかないかくらいわかりますよ。
テティ殿とは、アメリア様が考えるようなことは何ひとつありません。」
その答えは、アメリアの心に再びモヤモヤとした澱を落とした。
確かにテティは「遠くから眺めるだけで十分な叶わぬ片思い」だと最初に言っていた。
それでもノルディアにいた頃は毎日のようにリンクの話をしていた。
彼のどこが素敵だったか、どんな会話をしたのか……。
ただ、憧れの相手ができて楽しく話していただけ──本当に、それだけだったのだろうか。
思い出すのは、誘拐事件後に会ったテティの姿。
あの時、彼女は「リンクのことで相談がしたかった」と言ったはずだ。
──あれは、やっぱり嘘だったのだろうか。
もし、嘘だったとしたら…どこからどこまでが嘘なのだろう。
そして、どうしてテティはアメリアをあの場所に呼び出したのだろう。
先ほどのテティがマリアのことを話す様子は明らかに心配と不安が入り混じっていた。
彼女の主人に対する想いは本物なはずだ。
なら、テティがアメリアを呼び出したのもマリアが関係するのだろうか。
アメリアが思い悩み出した様子を見てリンクは心配そうに声をかける。
「明日から作戦がはじまるので、アメリア様の護衛は団長が務めるそうですよ。」
「へ?」
「狼の討伐は、本来なら領地の騎士団か警備兵の仕事です。我々の出る幕ではありません。
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「そ、そうなの」
上擦った声に、リンクが微笑ましく笑う。
嬉しく思ってしまったのがわかってしまったのだろう。
アメリアは気付かれないように顔を背けた。
「誰も何も言わないから知らなかったわ」
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