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第四話
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「12月の初めくらいに、佳奈が部活を休んで帰ってきたの。どうしたのって聞いたら、急に黒板の文字が見えにくくなったって言ってきて、すぐに病院に連れて行ったわ。検査の結果がでて、病院の先生にこう言われたの。佳奈さんの右目は神経系の病気にかかっています。このままではあと1ヶ月ほどでほとんど見えなくなってしまうでしょう。しかし左目も同じようになることはほとんどないので、完全にものが見なくなることはないと思います。って。でも片目が見えなくなるってことは遠近感がわからなくなるらしくて、日常生活にそこまで支障はないって言われたんだけど。やっぱり部活のソフトテニスをするのはかなり難しくて。その段階でもうあの子は十分辛かったと思うわ。それから2週間くらい経った日に、左目も見えにくくなったって言い出して、その3日後には緊急入院することになって。そのまま両目とも見えなくなったの」
「大変でしたね…」
予想はしていたがあまりの話の重さに、何を言っていいのかわからなくなった。
「ごめんね、こんな話しちゃって…。でも佳奈今はけっこう元気だから安心してるの」
やっと笑ったお母さんの顔を見て、僕は少し気持ちが軽くなった。
そういえば当の本人はどこにいるのだろう、そう思った時だった。インターホンが鳴った。
「ちょっと待っててね」
お母さんはそう言うと、玄関に向かった。
「おかえりなさい、大丈夫だった?」
「ただいまー。全然大丈夫だったよ!」
「ランありがとうね~」
会話が聞こえてきた。廊下の方を見ていると、お母さんと女の子が歩いてきた。女の子の隣には犬がいる。
「佳奈、今日はお客さんが来てるのよ」
「いまいらっしゃるの?こんにちは」
そう言って彼女は、僕がいないところにお辞儀をした。僕はなんとか聞こえるくらいの小さな声で、挨拶を返した。
「佳奈のクラスメイトになった梶くん。プリントを届けに来てくれたの」
「か、梶くん!?!?」
急に大きな声を出した彼女に、僕はビクッと体を震わせた。
「知ってたんだね、それは良かった」
お母さんが笑顔でそう言うと、彼女は慌てた様子で
「し、知ってるっているか、紗希と一緒にいるのたまに見てたし、話も少し聞いてたから…」
そう言って彼女はソファーに座った。そして膝に乗った犬を撫でている。
「この子は盲導犬のラン。2ヶ月前くらいに家に来たの」
「へー、そうなんですか」
お母さんの言葉にうなずくと、僕は椅子から立った。
「すいません。そろそろお暇させていただきます」
「あら、今日はありがとうね。是非また来てね」
「ありがとうございます」
「あっそうだ!」
何かを思いついたようにお母さんはキッチンの方に向かった。ガサガサと音をたてた後、紙袋を持ってきた。
「これ、お土産ね。ただのお菓子だけど持ってって」
「ありがとうございます」
紙袋をもらった僕は、お母さんと山崎佳奈と一緒に玄関まで行った。
「おじゃましました」
「ありがとう、気をつけてね」
お母さんがそう言うと、
「じゃあね」
山崎佳奈が小さな声で言って、手を振ってくれた。今度はちゃんと僕の方に向かって。
その可愛らしい笑顔に、僕は少しドキッとした。
「大変でしたね…」
予想はしていたがあまりの話の重さに、何を言っていいのかわからなくなった。
「ごめんね、こんな話しちゃって…。でも佳奈今はけっこう元気だから安心してるの」
やっと笑ったお母さんの顔を見て、僕は少し気持ちが軽くなった。
そういえば当の本人はどこにいるのだろう、そう思った時だった。インターホンが鳴った。
「ちょっと待っててね」
お母さんはそう言うと、玄関に向かった。
「おかえりなさい、大丈夫だった?」
「ただいまー。全然大丈夫だったよ!」
「ランありがとうね~」
会話が聞こえてきた。廊下の方を見ていると、お母さんと女の子が歩いてきた。女の子の隣には犬がいる。
「佳奈、今日はお客さんが来てるのよ」
「いまいらっしゃるの?こんにちは」
そう言って彼女は、僕がいないところにお辞儀をした。僕はなんとか聞こえるくらいの小さな声で、挨拶を返した。
「佳奈のクラスメイトになった梶くん。プリントを届けに来てくれたの」
「か、梶くん!?!?」
急に大きな声を出した彼女に、僕はビクッと体を震わせた。
「知ってたんだね、それは良かった」
お母さんが笑顔でそう言うと、彼女は慌てた様子で
「し、知ってるっているか、紗希と一緒にいるのたまに見てたし、話も少し聞いてたから…」
そう言って彼女はソファーに座った。そして膝に乗った犬を撫でている。
「この子は盲導犬のラン。2ヶ月前くらいに家に来たの」
「へー、そうなんですか」
お母さんの言葉にうなずくと、僕は椅子から立った。
「すいません。そろそろお暇させていただきます」
「あら、今日はありがとうね。是非また来てね」
「ありがとうございます」
「あっそうだ!」
何かを思いついたようにお母さんはキッチンの方に向かった。ガサガサと音をたてた後、紙袋を持ってきた。
「これ、お土産ね。ただのお菓子だけど持ってって」
「ありがとうございます」
紙袋をもらった僕は、お母さんと山崎佳奈と一緒に玄関まで行った。
「おじゃましました」
「ありがとう、気をつけてね」
お母さんがそう言うと、
「じゃあね」
山崎佳奈が小さな声で言って、手を振ってくれた。今度はちゃんと僕の方に向かって。
その可愛らしい笑顔に、僕は少しドキッとした。
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