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5月17日 螺旋怪談
第23話 学校の七不思議
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【ミツル】
翌朝、ミツルが教室に入るとクラスメイトが話しかけてきた。大丈夫だったのか、原因はなんだったのか、など、心配と好奇の目線を浴びせられる。ミツルは大丈夫だと一人一人に答えて自分の席に座った。黒板を確認し、一限目の国語の教科書を通学バッグから探す。
「よお、もう平気なのか?」
顔を上げると、俊介が前の席の椅子を引いて座るところだった。そのまま背もたれに両腕を乗せる。
「平気平気。病院の先生からは貧血だろうってさ」
ミツルは国語の教科書をカルテに見立てて病状を読み上げるふりをする。
「君は痩せ形だからもっと肉を食べないといけないってよ。腹がまん丸な先生に言われても説得力ねぇよな」
「さすがにビビったわ。お前がいきなり倒れちまうからよ。相当心配したんだからな」
「いやあ、そこまで心配されるんだったら、いっそ入院でもできりゃよかったんだけどな。損した気分」
「おまけにあんなことになるしよ~。なんか呪われてるんじゃねえの? このクラス」
俊介が顎をミツルの机に乗せてくる。彼の言葉にミツルは引っ掛かりを感じた。
「あんなことって? なんかあった? 俺が倒れた以外に」
俊介が体をガバリと起こす。
「なんだよ、昨日の理科室の騒動聞いてねえのか?」
ミツルが頷くと、俊介はわざとらしく辺りを見渡し、指をちょいちょいと曲げた。ミツルが耳を寄せると、俊介は右手で音を集めつつこっそりと話し始めた。
「昨日お前がぶっ倒れた後によ、授業が再開されたんだよ。金属反応がどうとかって実験。それをいざやろうって時に突然割れたんだよ。ビーカーとかがなにかに操られたみたいに動き出して、地面にたたき落とされたんだ」
ミツルの驚いた反応に満足したのか、俊介は身振り手振りを加え始める。
「大変だったんだぜ? 後ろの棚にあったビーカーの中には劇薬が入ってただろ? それが体にかかった~っつって、もう全員大パニックよ――あ、俺は冷静だったけどな――栗田なんて顔にかかって泣いちまってよ。周りの奴も傷になったらどうしようって。実際は劇薬は運良く皮膚にかからなかったみたいだけどな」
「……それマジの話?」
「本当だって。永井まで『痕が残ったら嫌~』なんて言ったたんだぜ? おめーみたいな性悪は――」
「そっちじゃねぇよ。勝手にビーカーが動いたってなんだよ? 原因はなに?」
「……さあ」
「さあ?」
俊介は右手を顎に添えて首を捻る。
「今考えてもわかんねえんだよな。加賀は机が濡れていたせいで滑っただの最初のビーカーの落下でパニックになってみんなが落としただけだの言ってたけどよ。どうにも納得できねえんだよな」
ミツルが目をパチクリとさせていると、俊介が再び顔を寄せてきた。
「こりゃあ本当にあるかも知れねえぜ? 七不思議がよ」
「……七不思議?」
「ああ。前に言ったろ、この学校にも七不思議があるって。覚えてるか?」
ミツルは頷く。細かい内容までは覚えていなかったが、そういう存在の話があったことは記憶に新しい。
「そういえばあったな」
「その中にあったろ? 『騒ぐ理科室』ってのがよ。今回のはそれさ」
若干寒気を覚えながらも、平静を装い、姉の有希の時代にはなかったらしいということを伝えた。その程度の歴史のないうわさ話にすぎないと。しかし俊介は訳知り顔で口元を緩める。
「今まで誰にも知られていなかったんだよ。それが最近噂になったから、現実になっちまったんだ。ほら、神様は信じる者の前に現れるって言うだろ? 怪談話だって信じる者に会いに来たんだ」
ミツルは唾を飲み込む。
「ほかにはどんなのがあったんだっけ?」
「お、興味を持ち始めたか。いいぞ、これでお前も怪談に巻き込まれるな」
「やっぱいいや。しょうもねぇ」
「おい、怖気づくなよ」
そこで俊介の席の本来の持ち主の井上康太がやってきたので話は中断となった。俊介は康太に蹴りをかましつつ、また後でなと自分の席に帰って行った。
ミツルは康太が話かけてきても気のない相槌しか打てなかった。
一年前の、夕暮れの教室を思い出す。机の上に置かれた一枚の紙。紙に描かれた五十音と「はい」と「いいえ」、そして、鳥居のシンボルの上に置かれた十円玉。
かき消すように首を横に振る。この話は出来るかぎり早く終息してほしい。そのためにも自分は気のないふりをしていよう。
しかし教室に駆け込んできたクラスメイトの発言で、ミツルの願いは儚く砕け散った。
「二つ目だ! 裏門に大量の御札が貼られてたらしいぜ!」
翌朝、ミツルが教室に入るとクラスメイトが話しかけてきた。大丈夫だったのか、原因はなんだったのか、など、心配と好奇の目線を浴びせられる。ミツルは大丈夫だと一人一人に答えて自分の席に座った。黒板を確認し、一限目の国語の教科書を通学バッグから探す。
「よお、もう平気なのか?」
顔を上げると、俊介が前の席の椅子を引いて座るところだった。そのまま背もたれに両腕を乗せる。
「平気平気。病院の先生からは貧血だろうってさ」
ミツルは国語の教科書をカルテに見立てて病状を読み上げるふりをする。
「君は痩せ形だからもっと肉を食べないといけないってよ。腹がまん丸な先生に言われても説得力ねぇよな」
「さすがにビビったわ。お前がいきなり倒れちまうからよ。相当心配したんだからな」
「いやあ、そこまで心配されるんだったら、いっそ入院でもできりゃよかったんだけどな。損した気分」
「おまけにあんなことになるしよ~。なんか呪われてるんじゃねえの? このクラス」
俊介が顎をミツルの机に乗せてくる。彼の言葉にミツルは引っ掛かりを感じた。
「あんなことって? なんかあった? 俺が倒れた以外に」
俊介が体をガバリと起こす。
「なんだよ、昨日の理科室の騒動聞いてねえのか?」
ミツルが頷くと、俊介はわざとらしく辺りを見渡し、指をちょいちょいと曲げた。ミツルが耳を寄せると、俊介は右手で音を集めつつこっそりと話し始めた。
「昨日お前がぶっ倒れた後によ、授業が再開されたんだよ。金属反応がどうとかって実験。それをいざやろうって時に突然割れたんだよ。ビーカーとかがなにかに操られたみたいに動き出して、地面にたたき落とされたんだ」
ミツルの驚いた反応に満足したのか、俊介は身振り手振りを加え始める。
「大変だったんだぜ? 後ろの棚にあったビーカーの中には劇薬が入ってただろ? それが体にかかった~っつって、もう全員大パニックよ――あ、俺は冷静だったけどな――栗田なんて顔にかかって泣いちまってよ。周りの奴も傷になったらどうしようって。実際は劇薬は運良く皮膚にかからなかったみたいだけどな」
「……それマジの話?」
「本当だって。永井まで『痕が残ったら嫌~』なんて言ったたんだぜ? おめーみたいな性悪は――」
「そっちじゃねぇよ。勝手にビーカーが動いたってなんだよ? 原因はなに?」
「……さあ」
「さあ?」
俊介は右手を顎に添えて首を捻る。
「今考えてもわかんねえんだよな。加賀は机が濡れていたせいで滑っただの最初のビーカーの落下でパニックになってみんなが落としただけだの言ってたけどよ。どうにも納得できねえんだよな」
ミツルが目をパチクリとさせていると、俊介が再び顔を寄せてきた。
「こりゃあ本当にあるかも知れねえぜ? 七不思議がよ」
「……七不思議?」
「ああ。前に言ったろ、この学校にも七不思議があるって。覚えてるか?」
ミツルは頷く。細かい内容までは覚えていなかったが、そういう存在の話があったことは記憶に新しい。
「そういえばあったな」
「その中にあったろ? 『騒ぐ理科室』ってのがよ。今回のはそれさ」
若干寒気を覚えながらも、平静を装い、姉の有希の時代にはなかったらしいということを伝えた。その程度の歴史のないうわさ話にすぎないと。しかし俊介は訳知り顔で口元を緩める。
「今まで誰にも知られていなかったんだよ。それが最近噂になったから、現実になっちまったんだ。ほら、神様は信じる者の前に現れるって言うだろ? 怪談話だって信じる者に会いに来たんだ」
ミツルは唾を飲み込む。
「ほかにはどんなのがあったんだっけ?」
「お、興味を持ち始めたか。いいぞ、これでお前も怪談に巻き込まれるな」
「やっぱいいや。しょうもねぇ」
「おい、怖気づくなよ」
そこで俊介の席の本来の持ち主の井上康太がやってきたので話は中断となった。俊介は康太に蹴りをかましつつ、また後でなと自分の席に帰って行った。
ミツルは康太が話かけてきても気のない相槌しか打てなかった。
一年前の、夕暮れの教室を思い出す。机の上に置かれた一枚の紙。紙に描かれた五十音と「はい」と「いいえ」、そして、鳥居のシンボルの上に置かれた十円玉。
かき消すように首を横に振る。この話は出来るかぎり早く終息してほしい。そのためにも自分は気のないふりをしていよう。
しかし教室に駆け込んできたクラスメイトの発言で、ミツルの願いは儚く砕け散った。
「二つ目だ! 裏門に大量の御札が貼られてたらしいぜ!」
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