拝啓、今日からモブ、始めます!

水月

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第二章

16: 王宮からの招待状

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その日、王宮から突然届いた招待状。

差出人は" 王妃 "


「夜会ねぇ......」


今まで散々僕が行事に参加することを拒んでいた王妃が何故僕が離宮に移った途端、夜会への招待状を送ってきたのか?


「何か理由があるんでしょうか?」

マリーが不思議そうに僕が手にしている招待状に視線を向けている。

「理由.....理由ねぇ。きっと離宮へと追い出された僕を皆で笑い者にする為に態々呼びつけようとしているんじゃないかな?あいつらならやりそうだな」

そんな事をして何が楽しいのかいつも不思議でならない。仮にも一国の王妃や王太子、王子に王女にも関わらず。まぁ、王妃以外はどちらかと言えば無関心と言った方が正しいか。けれど王妃に対して苦言を呈さないのなら同罪だろう。上に立つ人間がする行動ではない。

「.....有りえそうで何か納得します」
「だろう?所詮、王妃達はその程度の器しかないんだよ.....まぁ、国王がアレだから仕方無いんだろうけどね」


思わず苦笑を浮かべてしまう。本当にこの国の王族はダメダメ過ぎて、血が繋がっている事が嫌になる事がある。まぁもう身内だとは一切思っていないんだけど、血の繋がりは事実としてあるから仕方無いんだけど。


「それでアルファルド様はどうなさるんです?参加されるんですか?それはそれで何だか王妃陛下の命令に従うようで何だか腹が立ちますけど」
「はははっ、マリーは正直だな」

あからさまな王妃に対する嫌悪感を見せるマリーに思わず笑ってしまう。

「それが取り柄ですから」
「そうだね、マリーは素直だから。でも僕以外の前では言わない方が良いと思うよ?誰が聞いているかわからないからね」
「勿論です。流石に私もそこまで命知らずではありませんから」


でもいつか目の前で言いたいです、とハッキリ言うマリーに僕は笑いが止まらない。本当にこう言う所がマリーの長所でもあり、短所でもあるんだろうな。


「それで、本当にどうされるんですか?」
「勿論参加するよ。ただ僕が見世物になるって言うよりは敵情視察的な意味合いが僕からしたら大きいけどね」

王族が主催とする夜会ならばこの国の貴族の殆どが参加をしているだろう。普段夜会に参加していないような貴族家でさえも。ある程度王妃と懇意にしている貴族家の名は押さえてあるが、中には僕が調べきれていない家もあるかもしれない。

王族主催となっているが殆どが王妃が夜会を取りまとめているから、実質は王妃主催の夜会だ。となれば必ず懇意にしている貴族達は参加して挨拶に向かうだろう。いちから調べる手間が省けるのは此方としても随分と助かる。

「その過程で多少僕が見世物にされても問題ないかな。情報料だと思えば良い」
「.....またそんな.....きっと夜会ではだれよりも輝く筈のアルファルド様なのに残念過ぎますよ!」
「元々容姿で注目を浴びるのは苦手だから僕的には何ら問題ないよ」

まぁ、この容姿だから侮って貰えてある意味助かってるんだけどね。

「.....いつか絶対にアルファルド様を完璧に着飾らせて下さいね!約束ですよ!!」
「そうだね、いつかね」


そこまでして僕を着飾らせたいマリーの気持ちは僕には理解できないが、それぐらいでマリーの気が済むのなら安いものだと思う。


ただ。


いつか僕が着飾って夜会に参加する機会があるかどうかがわからないけれど。



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