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188:終業時間
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随分と集中していたのか師匠から声を掛けられるまで翻訳作業に没頭していたようで、いつの間にか終業時刻になっていたようだった。見れば私に渡された本は一冊目の半分ぐらいは終わっていた。
「うわ!リン、翻訳早いな!?」
ファイさんが私の手元を見て驚いた。
「え?これぐらいなら普通じゃないですか?」
私は自分の手元を見つつ、チラリとファイさんのデスクに視線を向ければ私がやり始めた時から余り進んでいないように感じた。
.....ええ....?もしかして殆ど進んでないのでは?
疑問に思いつつウェズンさんに視線を向ければ、その顔には苦笑としか言い様のない笑みを浮かべている。
「ファイは翻訳能力は確かなんだけどひとつの作業を長時間続けるのが苦手でね....つまり気が散って作業が長続きしないんだ」
「だから当然翻訳作業も進まないんだ」
アスケラさんもウンウンと言いながらそうウェズンさんの言葉にそう続けた。
「....典型的に文官に向いてないじゃないですか」
何でそんな人に文官やらせるのか。いくら人材不足とは言え流石に適材適所な場所に配置しようよ.....
「....まぁそれでもファイの翻訳能力は抜群でね、そもそも翻訳作業は急を要している物ではないからファイでも問題ないと言うか、ね」
あ~……時間が掛かっても良いから間違いなく翻訳出来る方が良いって事ね。まぁ、それなら問題ないのかな....?
「だからリンもそんなに急いで仕事しなくても良いんだぞ?」
「.....これが私のペースなんで大丈夫です」
ファイさんがニッコリと笑みを浮かべてそう言うのをバッサリと切る。うん、ファイさんは戦力と言うよりもこの部署のムードメーカー的な存在なんだろう。黙々と話しもせずに翻訳作業だけしてたら空気が悪くなりそうだしね。
でも私のペースは変えないけど.....。
「ま、まぁそう言う訳だから明日からも宜しくね。リン」
何とかその場を無理やり纏めたウェズンさんに素直に頷いて私達は職場を後にした。因みにウェズンさん達の終業時間は基本的には夜の6時だそうだ。
あと1時間、頑張ってね。
師匠と連れだって王宮図書館から師匠の屋敷へと馬車に乗って帰る。明日からは師匠は同行しないけど往復の送迎はしてくれるそうで、しっかりと馬車の停車位置を確認しておいた。王宮内は広いから正直迷子になりそうなので地図にマッピングしておいた。これで図書館と馬車乗り場は迷わずに行けるので一人でも問題ないだろう。
「.....翻訳はどうだった?やれそうか」
街にあった乗合い馬車よりもはるかに揺れの少ない馬車に感心しながら扉の窓から見える景色を堪能していると師匠が話し掛けてきた。
「うーん.....そうですね。翻訳自体は問題なさそうですけど、あの古代エルフ語で書かれた本の内容が結構貴重なレシピとかだったりするんですけど、私が読んで問題ないんですかね?」
「ああ....それなら問題ない。俺の弟子になれた時点でリンに対する警戒度は無いみたいなものだからな。それにむやみやたらに他人に吹聴するようなお前じゃない事も今までの行動を見てたらわかるしな」
「.....そんなものですか?」
「そうだな。まぁ直感みたいな物もあるかな」
師匠はともかく、師匠の家族とはまだ出会って間もないのにそれだけ信用されてるって事か....。でもきっと師匠を信用しているからこその信頼なんだろうけど。
「ウェズンが言うように翻訳は急いでやる仕事でもないから適度に休憩しながらのんびりやれば良い....何かお前は集中すると周りの声が聞こえなくなるみたいだしな」
「あー……わかりました」
それ、私の癖なんだよね。集中力が強いと言うかなんと言うかまぁ.....
「1日目から疲れただろ?夕食まで少し時間があるから屋敷に着いたら部屋でゆっくり休んだら良い」
「はい。久し振りに頭を使った仕事でした!」
馬車はゆっくりと王宮を出て師匠の実家の屋敷へと走る。師匠と話をしつつ、忙しくも充実した1日を振り返るには十分な時間だった。
「うわ!リン、翻訳早いな!?」
ファイさんが私の手元を見て驚いた。
「え?これぐらいなら普通じゃないですか?」
私は自分の手元を見つつ、チラリとファイさんのデスクに視線を向ければ私がやり始めた時から余り進んでいないように感じた。
.....ええ....?もしかして殆ど進んでないのでは?
疑問に思いつつウェズンさんに視線を向ければ、その顔には苦笑としか言い様のない笑みを浮かべている。
「ファイは翻訳能力は確かなんだけどひとつの作業を長時間続けるのが苦手でね....つまり気が散って作業が長続きしないんだ」
「だから当然翻訳作業も進まないんだ」
アスケラさんもウンウンと言いながらそうウェズンさんの言葉にそう続けた。
「....典型的に文官に向いてないじゃないですか」
何でそんな人に文官やらせるのか。いくら人材不足とは言え流石に適材適所な場所に配置しようよ.....
「....まぁそれでもファイの翻訳能力は抜群でね、そもそも翻訳作業は急を要している物ではないからファイでも問題ないと言うか、ね」
あ~……時間が掛かっても良いから間違いなく翻訳出来る方が良いって事ね。まぁ、それなら問題ないのかな....?
「だからリンもそんなに急いで仕事しなくても良いんだぞ?」
「.....これが私のペースなんで大丈夫です」
ファイさんがニッコリと笑みを浮かべてそう言うのをバッサリと切る。うん、ファイさんは戦力と言うよりもこの部署のムードメーカー的な存在なんだろう。黙々と話しもせずに翻訳作業だけしてたら空気が悪くなりそうだしね。
でも私のペースは変えないけど.....。
「ま、まぁそう言う訳だから明日からも宜しくね。リン」
何とかその場を無理やり纏めたウェズンさんに素直に頷いて私達は職場を後にした。因みにウェズンさん達の終業時間は基本的には夜の6時だそうだ。
あと1時間、頑張ってね。
師匠と連れだって王宮図書館から師匠の屋敷へと馬車に乗って帰る。明日からは師匠は同行しないけど往復の送迎はしてくれるそうで、しっかりと馬車の停車位置を確認しておいた。王宮内は広いから正直迷子になりそうなので地図にマッピングしておいた。これで図書館と馬車乗り場は迷わずに行けるので一人でも問題ないだろう。
「.....翻訳はどうだった?やれそうか」
街にあった乗合い馬車よりもはるかに揺れの少ない馬車に感心しながら扉の窓から見える景色を堪能していると師匠が話し掛けてきた。
「うーん.....そうですね。翻訳自体は問題なさそうですけど、あの古代エルフ語で書かれた本の内容が結構貴重なレシピとかだったりするんですけど、私が読んで問題ないんですかね?」
「ああ....それなら問題ない。俺の弟子になれた時点でリンに対する警戒度は無いみたいなものだからな。それにむやみやたらに他人に吹聴するようなお前じゃない事も今までの行動を見てたらわかるしな」
「.....そんなものですか?」
「そうだな。まぁ直感みたいな物もあるかな」
師匠はともかく、師匠の家族とはまだ出会って間もないのにそれだけ信用されてるって事か....。でもきっと師匠を信用しているからこその信頼なんだろうけど。
「ウェズンが言うように翻訳は急いでやる仕事でもないから適度に休憩しながらのんびりやれば良い....何かお前は集中すると周りの声が聞こえなくなるみたいだしな」
「あー……わかりました」
それ、私の癖なんだよね。集中力が強いと言うかなんと言うかまぁ.....
「1日目から疲れただろ?夕食まで少し時間があるから屋敷に着いたら部屋でゆっくり休んだら良い」
「はい。久し振りに頭を使った仕事でした!」
馬車はゆっくりと王宮を出て師匠の実家の屋敷へと走る。師匠と話をしつつ、忙しくも充実した1日を振り返るには十分な時間だった。
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